Contra Force(コントラフォース)
機種 NES(海外ファミコン) ステージ数 5面
発売元 コナミ ライフ制 なし
開発元 コナミ 残機制 あり
発売日 1992年9月30日 コンティニュー 無限
定価 日本未発売 パスワード なし
プレイ人数 2人同時プレイ可能 難易度選択 なし
ストーリー
ステージ紹介
エンディング
アークハウンド



 『Contra Force(コントラフォース)』は、1992年9月にNES(海外版ファミリーコンピュータ)で発売された魂斗羅作品である。この作品は北米でのみ発売され、日本、ヨーロッパでは発売されていない。発売時期としてはすでにファミコンの最後期で、スーパーファミコン版『魂斗羅スピリッツ』と同じ年に当たる。海外でしか発売されていない作品だが、開発を担当したのは日本のコナミスタッフだ。ただし、ファミコン版『魂斗羅』および『スーパー魂斗羅』の移植を担当した梅崎重治のチームではない。
 実はこの作品は、『アークハウンド』というタイトルで、日本のファミコンでも発売される予定だった。1991年の雑誌やチラシでは、同年の10〜11月発売予定として発表されていたが、結局発売中止となっている。そこでは、「独立治安部隊アンタッチャブルのメンバーがテロリストたちと戦うアクションゲーム」と、魂斗羅シリーズとはまったく関係ない作品として紹介されていた。そして実際、その翌年に海外で発売された『Contra Force』は、ストーリー的にも、内容的にも、他の魂斗羅シリーズとはかけ離れた作品であった。

日本未発売の異色魂斗羅

 魂斗羅シリーズといえば、上半身裸のスーパー・コマンドーが、地球侵略をたくらむエイリアン軍団を派手に出迎える、というのが相場だが、『Contra Force』のストーリーにはそのような壮大さはない。本作では1992年の現代を舞台に、4人の特殊部隊員、バーンズ、スミス、アイアン、ビーンズが、「D.N.M.E.」と呼ばれるテロリスト・グループと戦う。これまでレギュラー主人公だったビルとランスも登場しなければ、エイリアンやロボットといったSF要素も一切ない。一応、舞台となる街「ネオシティ」の名前は、海外版『魂斗羅スピリッツ』や『魂斗羅 Dual Spirits』にも出てくるが、ストーリー的なつながりはなく、『魂斗羅 Dual Spirits』のボーナスコンテンツ「魂斗羅ミュージアム」でも、「公式の時間軸には組み込まれていない、外伝的な作品」とされている。
 『Contra Force』は、メガドライブの『魂斗羅 ザ・ハードコア』に先がけて、プレイヤーキャラクターを4人から選択することができる。それぞれ武器や移動速度、ジャンプ力といった性能が異なり、バランス型の主人公バーンズ、射撃の名手スミス、鈍重だが火力は最強のアイアン、身軽で奇襲戦法を得意とするビーンズ、といった具合に性格づけがされている。操作するキャラクターはゲーム中いつでも変更できるので、アスレチックはジャンプ力の高いバーンズで攻略し、ボスは攻撃力の高いアイアンで攻略するなど、状況に合わせてキャラクターを切り替えながら進めることも可能だ。
 ここまで聞くと、一見すごく面白そうなゲームに思えるかもしれない。だが残念ながら、『Contra Force』のゲームとしての出来はかなり悪い。魂斗羅シリーズの基準には到底達していないし、アクションゲームとしてあまりに完成度が低い作品だった。コナミがこのゲームを日本で発売しなかったのは正しい判断だったと言わざるを得ない。
 このゲームの問題点は数多いが、最も致命的なものはその耐えがたい「処理落ち」だ。当時のゲームでよく見られたような、敵が多い場面や巨大なボスなどで一時的に動きが遅くなる、といったレベルではない。ゲーム中はほぼ“常に”スローモーションのような状態で、製品レベルとは思えないほど不安定なのだ。何より魂斗羅シリーズの魅力といえば、キビキビとした操作性とノンストップのアクションなのに、本作の終始ノロノロとしたゲームプレイは、その魅力を完全に殺してしまっている。確かにグラフィックや音楽は水準以上だが、アクションゲームで最も重要な部分が犠牲になってしまっては、元も子もない。

ユニークなシステムと最悪な処理落ち

 ひとまずゲームシステムの話に戻ろう。『Contra Force』のステージは『スーパー魂斗羅』やゲームボーイ版『コントラ』のように、サイドビューとトップビューが交互に来る構成になっている。いつもの魂斗羅シリーズと同様、8方向に射撃することができ、お約束の回転ジャンプもある。2人同時プレイも可能だ。
 さらに特筆すべきことに、1人プレイ中でも、CPU操作のキャラクターを呼び出して、一緒に戦ってもらうことができる。他の魂斗羅シリーズにもない、“擬似”2人同時プレイだ。しかも攻撃や援護など、CPUに作戦を指示することもできる。一見すごいシステムのようだが、残念ながらCPUのAIはお世辞にも優秀とはいえず、しかも呼び出してからわずか5秒で消えてしまうので、正直いって使えない。
 パワーアップシステムも他の魂斗羅シリーズとは大きく異なり、何と『グラディウス』と同じパワーメーター制を採用している。アイテムを取るごとにメーターが1つずつ進んでいき、任意の場所でボタンを押せば、そのパワーアップが得られる仕組みだ。パワーメーターはキャラクターごとに異なり、マシンガン、ホーミングミサイル、火炎放射器、バズーカなど、さまざまな武器が用意されている。また、プレイヤー自身をパワーアップさせるものもあり、特にジャンプ中無敵になる「ローリングアタック」は、インチキなくらい強力だ。ただ、手榴弾や時限爆弾のように、明らかにサポート専用のピーキーな武器もあり、1人プレイ時にこれらの武器を取ってしまうと、まともに攻撃すらできなくなってしまう。
 パワーアップの種類は多いのだが、シリーズ伝統のスプレッドはないし、どの武器も総じて地味だ。魂斗羅の魅力である、ドドドドドと途切れなく撃ち出されるマシンガンの連射はなく、1画面に2〜3発しか発射できない。しかも、ただ弾を撃っているだけで処理落ちはひどくなる。そのせいもあってか、出てくる敵の数も少ないので、群がる敵をバリバリとなぎ倒すのではなく、プチプチと1人ずつ倒していく感じだ。
 敵の数が少ない代わりに、敵が撃ってくる弾はどれも異様に速いので、基本的に撃たれてから避けようとしても間に合わない。ここも普通の魂斗羅とはプレイ感覚が違うところだ。敵が出現後、弾を撃つまでは間があること、8方向以外の角度には撃たないことを念頭に入れて、敵の死角から先手を打っていくのがセオリーとなる。最初は不意打ち同然で殺されるが、敵の配置を覚えてしまうと途端に簡単になるので、「覚えゲー」の要素が強い。敵にランダム性が少ないため、他の魂斗羅シリーズのような、アドリブの面白さは希薄だ。
 もうひとつ、『Contra Force』の特徴として、箱や扉といった障害物、さらに壁や天井といった地形など、マップ内のさまざまなオブジェクトを破壊できるという点がある。アイテムは敵ではなくこれらのオブジェクトから出てくるので、とにかく手当たり次第に壊しまくることになる。また、オブジェクトは自分の攻撃でも敵の攻撃でも壊れるようになっており、それによって地形がリアルタイムに変化したり、あるいは壊れた場所から落ちると下のマップに行ったり、といった要素もある。とにかく目に見える物は何でも壊せる、というアイデア自体は面白いのだが、問題はこれがまた処理落ちを増長し、破壊の爽快感などどこかに行ってしまっているということだ。

意欲は感じられるが魂斗羅ではない

 『Contra Force』の音楽に関しては、いかにも当時のコナミらしく、文句なく素晴らしい。『スーパー魂斗羅』のように、ファミコンにもかかわらずオーケストラヒットを鳴らしていたり、技術的にもハイレベルだ。本作のサウンドを担当した松原健一は、『ドラキュラII 呪いの封印』やアーケード版『悪魔城ドラキュラ』の伝説的な名曲「BLOODY TEARS(血の涙)」を作曲したことで知られている。また本作と同時期に、『トライゴン』全曲、『クライシスフォース』といったシューティングゲームも手がけている。
 『Contra Force』のBGMは全曲オリジナルだが、ゲームが発売されなかったため、それらが日本のユーザーに聴かれることはなかった。しかし面白いことに、17年後の『魂斗羅 ReBirth』で、本作のキャラクターセレクトBGMがFM音源+PCM音源でアーケード風にアレンジされている。このマニアックな選曲は、『魂斗羅 ReBirth』のサウンドを担当した並木学自身によるものだ。また同作のサウンドトラックCDでは、ボーナストラックとして『Contra Force』ステージ1BGMのアレンジも収録されている。
 いろいろ書いたが、『Contra Force』のすべてが駄目かというと、そうは言い切れない面もある。むしろ、非常に惜しいゲームなのだ。本作には今日でも通用するような、野心的なアイデアがたくさんある。リアルタイムに切り替えられる個性的なキャラクター。NPCへの作戦指示。さまざまな破壊可能オブジェクト。ストーリー性のあるゲーム展開。まるで、最新のFPSやTPSのようではないか。問題は、それらをうまくゲームに生かし切れなかったことだ。
 レベルデザインも悪くなかった。エイリアンのような現実を超えた面白さは足りないが、それでも飛行中の戦闘機を乗り移っていくステージや、逃げるボスを追いかけながら進んでいくステージなどは、いかにも魂斗羅らしい熱いシチュエーションだ。
 アクションゲームに戦略性を持ち込もうとした企画自体は意欲的だし、グラフィックやサウンドもいい。だが、ひどすぎる処理落ちをはじめ、画面のチラつき、操作レスポンスの悪さ、不可解な当たり判定など、基本的な技術面の粗さが、すべてを台なしにしてしまっている。加えて、単調なボスのパターン、すぐに復活するザコやアイテム、飛ばせないデモ、バグの多さなど、アクションゲームとしての調整も甘すぎた。このゲームを遊んでいると、爽快感や驚きよりも先に、フラストレーションや理不尽さばかりを感じてしまうのだ。
 『Contra Force』のコンセプトや目指したものは、決して悪くはなかった。だが残念ながら、それをうまく形にすることができなかったのだ。もしこのゲームが魂斗羅とは関係のない、それこそ『アークハウンド』のタイトルで発売されていたら、また評価は違ったかもしれない。だが魂斗羅はコナミの看板シリーズであり、アクション・シューティング・ゲームの王者だ。そして、何千ものクソエイリアンどもに何万発もの鉛弾をブチ込み、地球を救うゲームだ。その魂斗羅の名を冠するには、『Contra Force』はあまりに力不足で、未完成すぎた。



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