m@stervision pinkmovies 2002


1.美女濡れ酒場(樫原辰郎)オーピー/大蔵映画

2.ロスト・ヴァージン やみつき援助交際(サトウトシキ)国映=新東宝

3.小林ひとみ 抱きたい女、抱かれたい女(下元哲)エクセス

4.デリヘル嬢 絹肌のうるおい(池島ゆたか)オーピー/大蔵映画

5.OL性告白 燃えつきた情事(池島ゆたか)新東宝

6.猥褻ストーカー 暗闇で抱いて!(池島ゆたか)新東宝

7.痴漢バス2 三十路の火照り(荒木太郎)オーピー/大蔵映画

8.愛人秘書 美尻蜜まみれ(山崎邦紀)オーピー/大蔵映画

9.スチュワーデス 腰振り逆噴射(加藤義一)オーピー/大蔵映画

10.熟女レズ 急所舐め(下元哲)エクセス

11.ハレンチ・ファミリー 寝ワザで一発(女池充)国映=新東宝

12.作家と妻とその愛人(深町章)新東宝

13.不倫する人妻 眩暈(田尻裕司)国映=新東宝

14.三十五才喪服妻 通夜の暴行(勝利一)エクセス

15.プレイガール7 最も淫らな遊戯(中野貴雄)トライハート=新東宝

16.探偵物語 甘く淫らな罠(橋口卓明)新東宝

17.義母尻 息子がしたい夜(松岡邦彦)エクセス

18.不純な和服妻 覗かれた情事(坂本太)エクセス

19.貪る年増たち サセ頃・シ盛り・ゴザ掻き(佐倉萌)エクセス

20.年上の女 博多美人の恥じらい(荒木太郎)オーピー/大蔵映画


※2002年公開のピンク映画 全85本中、75本を観賞。 個々の作品のレビュウはこちら



a w a r d s .

主演女優賞

林由美香「スチュワーデス 腰振り逆噴射」「女スパイ 太股エロ仕掛け」ほか
山咲小春「美女濡れ酒場」「痴漢電車 秘芯まさぐる」「痴漢バス2 三十路の火照り」ほか
沢木まゆみ「人妻ブティック 不倫生下着」「スチュワーデス 腰振り逆噴射」ほか

助演女優賞

風間今日子「小悪魔デヴィ とろけ湯穴覗き」「にっぽん淫欲伝 姫狩り」ほか
ゆき「女スパイ 太股エロ仕掛け」「探偵物語 甘く淫らな罠」ほか
工藤翔子「探偵物語 甘く淫らな罠」「和服妻凌辱 奥の淫」

新人女優賞

橘瑠璃「三十路女の濡れ床屋」「人妻陰悶責め」
佐々木日記「ロスト・ヴァージン やみつき援助交際」
佐倉麻美「ロスト・ヴァージン やみつき援助交際」「不倫する人妻 眩暈」

男優賞

竹本泰志「美女濡れ酒場」「不純な和服妻 覗かれた情事」ほか
佐野和宏「ハレンチ・ファミリー 寝ワザで一発」「不倫する人妻 眩暈」ほか
螢雪次朗「痴漢バス2 三十路の火照り」「女痴漢捜査官4 とろける下半身」ほか

監督賞

池島ゆたか「デリヘル嬢 絹肌のうるおい」「OL性告白 燃えつきた情事」ほか

脚本賞

今岡信治「ロスト・ヴァージン やみつき援助交際」ほか
樫原辰郎「美女濡れ酒場」「ノーパン若妻 おもちゃで失神」ほか

撮影賞

長谷川卓也 × ガッツ(照明)「美女濡れ酒場」「貪る年増たち サセ頃・シ盛り・ゴザ掻き」

新人監督賞

加藤義一「牝監房 汚された人妻」「京女、今宵も濡らして」「スチュワーデス 腰振り逆噴射」「いんらん夫人 覗かれた情事」

特別賞

小林悟 の逝去に対して


o v e r v i e w .


2002年のピンク映画界は「オーピーの世代交代と国映の不在」という一言によって表わされよう。


ピンク映画 第1号といわれる「肉体市場」(1962)の監督であり、おそらく世界でいちばん沢山の映画を監督している超・大ベテラン 小林悟が2001年の11月、「川奈まり子 桜貝の甘い水」の撮影中に亡くなったことにより、大蔵映画(オーピー)のラインアップに空き枠が生じ、その結果、加藤義一、森山茂雄、寺嶋亮、樫原辰郎と4人もの新人監督が誕生した。なかでもデビューの年に一挙に4本の作品を撮りあげてしまった加藤義一は、2003年に入っても5月の時点で3本がすでに公開されており、大蔵映画の若き1番バッターとして完全に定着した。大蔵には現在もっとも油の乗った池島ゆたか、荒木太郎、国沢実という強力なクリーンアップ・トリオがおり、人のいない場所に打つのが得意な曲者2番打者の山崎邦紀と、メルヘンチック・コメディに安定した打率を誇る6番打者の渡邊元嗣がいて、さらには「淫乱堕天使 桜井風花」「小川みゆき おしゃぶり上手」の森山茂雄や「変態催眠 恥唇いじめ」の寺嶋亮といった有望新人が、下位打線に控える小川欽也・関根和美・杉浦昭嘉のロートル&B級選手の座をおびやかし、このほかにも脚本家リーグからのFA選手である樫原辰郎や、メジャーリーグに転出した後も代打として打席に立つ吉行由実がベンチに控えるというピンク映画界 最強チームとなった。そして、この興隆の原動力となったのが、まさに小林悟の不在なのである。よって小林悟を、逝去した2001年ではなく2002年度の特別賞とする(小川欽也も いつでも引退してもらって結構) ● 対照的に不振をきわめたのが国映で、サトウトシキが「ロスト・ヴァージン やみつき援助交際」で独りで気を吐いたが、四天王に続く世代が軒並み伸び悩み、WOWOWやDVDへの旧作販売でかろうじて命脈を保っているありさま。上野俊哉・坂本礼には新作がなく、今岡信治は撮影したものの不出来ゆえ半年の公開延期というていたらく。田尻裕司「不倫する人妻 眩暈」と(新東宝・製作だが)榎本敏郎「人妻出会い系サイト 夫の知らない妻の性癖」は いちおう評価に値しようが、四天王世代の作品と較べるといずれも小市民的な「小さな映画」であり、ピンク映画としては合格点だが、国映はそれでいいんか? そういう意味では、百貫でぶをヒロインにした「ハレンチ・ファミリー 寝ワザで一発」、フィルムを引掻いて文字を書いたりした「スワッピング・ナイト 危険な戯れ」と外道ピンク路線を突っ走る女池充がもっとも国映らしい作家ということになろうが「ピンク映画館で上映される商業映画」であるという側面を平然と無視するこの男を当サイトはまったく評価しない。本当に心の底から思うんだが、女池充は商業映画が撮りたくないならピンク映画の世界から出て行ってほしい。 ● 結局、国映作品がまったく振るわなかった新東宝チェーンを支えたのは、1人で4本を送り出した深町章であり、2本ずつ手掛けた橋口卓明や池島ゆたか といった娯楽映画の職人たちであった。新東宝プロパーによる意欲的な試みとしては2001年の「喪服の女 崩れる」に続いて、後藤大輔が「大地震もの」という珍しいジャンルの「OL発情 奪う!」を撮り、ビデオ撮りの劣悪画質ではあったが中野貴雄10年ぶりの劇場作品「プレイガール7 最も淫らな遊戯」があり、また新人・佐藤吏が「人妻ブティック 不倫生下着」でデビューした。 ● この2社に較べると、田吾作コンビ(新田栄+岡輝男)とフィルムハウス作品(佐々木乃武良+坂本太+勝利一ほか)を中心にまわすエクセスは無風状態で、そんな中で下元哲が3月の「熟女レズ 急所舐め」、5月の「小林ひとみ 抱きたい女、抱かれたい女」と異能を発揮したが、その勢いは下半期までは続かなかった。鬼畜Vシネマ監督・山内大輔の初ピンク作品や、大ベテラン・渡辺護の新作も公開したが結果には結びつかなかった。唯一、女優から監督に進出して(デビュー短篇を含めると)3本目の佐倉萌が、年末ギリギリ公開「貪る年増たち サセ頃・シ盛り・ゴザ掻き」で初日を出した。エクセス2002年最大のニュースは、下半期から製作費を50万円カット。予告篇製作費込みで300万円という3社中もっとも厳しい製作費となったことであろう(同じ300万円でも大蔵・新東宝には予告篇が必要ない) その直接的な影響を受けて、フィルム代を捻出できずビデオ撮りの作品が目立って増えてきたのは悲しい兆候である。 ● 薔薇族映画(ゲイ映画)は1本も観なかった。


監督賞はベストテンに3本を送り込んだ池島ゆたか で文句なし。下元哲は下半期にあと1本、力作があれば有力な対抗馬だった。池島・下元とも当たり外れの波はあるのだが、大蔵で3本を撮った荒木太郎は今や「撮るものにハズレなし」の状態。日本映画界全体を見回しても、最も新作が楽しみな監督の1人である。 サトウトシキは「ロスト・ヴァージン やみつき援助交際」で圧倒的な巧さを見せつけた。ひとりだけリーグが違う感すらある。 ● 脚本賞は「ロスト・ヴァージン やみつき援助交際」で独特の不定形なストーリー進行に「構成力」が加わり、さらにひと皮むけた感のある今岡信治に。こないだ「シナリオ」誌の座談会でいいこと言ってたので引用する。[ドクター中松という発明家の方がいますけど、シナリオも同じというか、なんか一つ発明したいと思うんですよ、今まで見たことないものを。すごい小っちゃいことでもいいと思うんです、洗濯機の廻るゴミを取る器具みたいな、ああいうものでもいいんですけど、何か自分で作り出したというか、発明したものみたいなのがあれば、書いてても面白いし、読んでても面白いと思うんですよ。] 国沢実への手を変え品を変えての提供脚本に加え、監督デビュー作「美女濡れ酒場」にも見事な脚本を用意した樫原辰郎が同率1位。 ピンク映画界1の田吾作 多作なのが岡輝男。2002年におれが観ただけでも14本。認めよう──なかにはマトモな脚本もあったと。 他の誰にも書けない脚本を書く…という点では「愛人秘書 美尻蜜まみれ」「お灸快楽 若草いぶり」の山崎邦紀と、「熟女レズ 急所舐め」の石川欣が双璧。得がたい才能である。 ● 撮影賞は「美女濡れ酒場」「貪る年増たち サセ頃・シ盛り・ゴザ掻き」と1作ごとに瞠目させられた長谷川卓也(カメラ)+ガッツ(照明)のコンビに。微妙な色味の使い分けがみごと。 「小林ひとみ 抱きたい女、抱かれたい女」での下元哲&小山田勝治のクラシカルな、いっそアナクロと言ってもいい画作りにも惹かれた(2003年5月 記)