ヨーロッパ編

序章 日本編

1998年9月23日 旅行初日 日本・香川県高松市

 ジリリリリリ……
 目覚ましが部屋に鳴り響く。
 眠い……目がなかなか開かない。
 それもそのはず、時計の針は3時を指している。
 今日から12日間という長い旅行がスタートするのだが、スタート地点は今僕がいる高松ではない。
 関西空港が集合場所なのだ。
 その集合場所に午前9時集合。
 その時間に間に合うためにはこんな時間に起きなければならない。
 しかし、眠い……
 眠い目を擦り、顔を洗い、軽めの朝食を取る。
 といっても、気分的には全然朝食じゃない。夜食だ。
 もぞもぞと着替えをし、旅行の荷物を手に外へと出る。
 外は闇に包まれ、遠くでたまに聞こえる車のエンジン音が響くだけ。
 無理矢理突き合わせて叩き起こした母親が運転する車で駅へと向かう。
 それほど時間もかからず駅に着く。
 駅ではこんな早朝にも関わらず、十数人の人間が入り口が開くのを待っていた。
 高松駅は今、仮駅舎で業務を行っている。
 そのせいもあってか駅の入り口は午前4時半までは施錠されているのだ。
 車のトランクからスーツケースを取出し、眠そうな母親に礼を言って別れた。
 鍵が開くまでまだ時間がある。
 僕は大きく伸びをした。
 やがて、少し早めに駅員が鍵を外しに現れ、僕はゴロゴロとスーツケースを転がしながら、改札へと滑り込む。

 ホームに着くと既に電車の姿があった。
 岡山行きのマリンライナーの始発電車だ。
 さすがに社内の人影はまだない。

 ドアの近くの座席に腰掛け、今度は小さく息を吐く。
 まもなく睡魔が僕の意識を連れ去った。
 「まもなく終点岡山に着きます。お降りの際はお忘れ物などないよう……」

 我ながら実にタイミングのいい目覚めだ。
 目をこすりながら、回りを見渡すと人影が増えていた。
 時計を見ると午前5時半。
 徐々に夜明けが訪れつつあった。
 次は新大阪に向けて新幹線へと乗り換える。
 のぞみ2号のゆったりとした座席はまたもあっさりと僕の意識を闇へと誘った。
 次に目が覚めたときは新神戸を過ぎた辺りだった。
 「もうすぐ大阪か……」
 ぼんやりと窓を見ながら呟く僕の耳に新大阪への到着を告げる社内アナウンスの声が入る。
 外はすっかり気持ちのいい朝だ。

 新大阪駅のホームで大きなあくびを僕はした。
 いよいよ次の乗り換えで目的地の関西空港へとたどり着く。
 のりかえ先のホームに特急はるかがすべりこむ。

 重いスーツケースを車内に運び、座席に座ると僕はまたゆっくりと眠りについた。今の僕には眠る以外にすることがなかったんだ。
 関西空港に来るのは今回が3回目だ。
 時計の針は8時20分を指していた。集合時間にはまだ余裕がある。
 空港内は活気があふれていた。
 僕はゆっくりと集合場所へと歩き出す。
 団体客専用の集合カウンターにはもう既にたくさんの人であふれ返っていた。
 僕が今回参加するツアーのカウンターを探し歩く。
 程なく見つけたカウンターの付近を見て僕はあることを感じた。
 『なんか、じっちゃん、ばっちゃんばっかおるなぁ……』
 このあと僕は衝撃の事実を知ることとなる……
 あぁ〜!!!!!
 固い文章書くと肩が凝るわい!!!だいたい固い文章は小説だけで十分なのよ。
 つーことで、ここからはかなり砕けた文章で旅行の思い出話を綴ります。
 さて、やたらじっちゃんばっちゃんの多いカウンターでツアーの受け付けがスタート。
 ここで、今回の添乗員さんとご対面。
 そのときにちらっと今回のツアーの名簿が見えたので、ちょいと盗み見。
 すると、今回のツアー参加者で僕が最年少であるという事実が発覚!
 おまけに20代が3人いるだけで、それ以外は40歳以上!
 最年長にいたっては74歳!!!
 添乗員さんに話を聞けば、こういう長期間にわたってヨーロッパをまわるツアーはたいがい、仕事をリタイアした年配の夫婦が多いとのこと。
 そういえば、他社のパンフレットではたいがいフルムーンにおすすめと書いてたなぁ、似たようなツアーが。まあ、こうなったらしゃーない。僕は僕で回りを無視して楽しめばいいだけのことよ。
 物分かりのいい子なの、僕。
 あとは簡単。
 荷物を預けて、現金を最初に行く国イギリスの通貨ポンド(£)に両替して、出国審査、手荷物審査と抜けて、シャトルに乗って飛行機乗場へ。
 乗場の窓から見えるは僕らが乗る、ブリティッシュエアウエイズの飛行機が。

 実は外国の飛行機会社で外国へと出発するのは今回のが初めて。
 となると気になるのが、座席の広さ。
 なんせ12時間もの長旅。ただでさえ体のでかい僕にはこれって以外と死活問題。
 祈る気持ちで飛行機へと搭乗する僕の目に映った座席は…………狭い!!

 この狭さで12時間!?
 早くもブルーになる僕。
 今回の過酷な旅のスタートはこうして始まったのでした

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