ACT.99.5 博士と助手の乱入 (2001.03.22)

「ついに100話目のようですよ、博士」
「そうか、ようやくここまでたどり着いたか」
「思えば、ここに出られなくなってから長かったですねぇ」
「うむ、作者の我儘でいつの間にか出させてもらえんようになったのが去年の2月のことじゃったから、かれこれ1年以上ぶりの登場ということになるな」
「ようやく作者からのOKが出たんですね」
「そんなことは知ったことではない。ここのサイトの評価を上げている張本人であるわしらを蔑ろにする作者に了解など取る必要があるわけがない。本来なら出てくださいと作者に土下座でもしてもらうのが筋じゃろうに」
「確かに、私たちが出ている作品はどれも高評価ですよね」
「ともかく、最近作者の奴はサボリ癖が出ておるから、その隙に記念すべき100回目の雑文コーナーをのっとってしまおうと考えたわけじゃ」
「これがアップされた後の作者の慌てる顔が浮かびますね」
「そうじゃな。せっかくじゃから作者の秘密なんかも暴露してやって、二重に慌てる顔を楽しませてもらうことにしようかの」
「にしても何で突然こんなにも更新ペースが落ちたんですかね」
「一説にはネタが完全になくなってしまっただとか、死んだ爺さんの遺言で作品を書けなくなっただとか、悪い宗教にのめりこんだだとか、持病の癪が出ただとか言われておるが、実際のところはただ単にサボっているだけのようじゃ」
「でも、仕事が忙しいとよく言っているじゃないですか」
「確かに一時期はかなり忙しくてしんどかったようじゃ。帰宅が11時を回るのもざらじゃったし、それはテレビを見る時間やネットに接続する時間の減少からも判断できる。しかし、少なくとも今は違う。最近の帰宅時間は遅くても10時、早いときは9時前に帰っておる。しかもそれは寄り道をした上での話じゃ」
「ということは、更新をする時間はたっぷりあるわけですね」
「その通り!しかし更新をしていない。つまりそれはそのまんま、サボっていることの証拠となるわけじゃ」
「お見事です、博士。しかし、ネタがないっていうのはあるのかもしれないですね」
「馬鹿者。ネタがないで済まされるのも最初だけじゃ。いつまでもネタが浮かばないような作者は辞めてしまえばいいんじゃ。しかし実のところサボリ作者がネタ切れで困ったことはほとんどない。テーマが固定された投稿などのときは苦しむこともあるようじゃが、自分で好きに書いているここのサイト上では苦しんだことはないのじゃ」
「え!それ本当なのですか」
「本当じゃ。現に今も書きかけの作品は5作もある。中にはいつになったら続きがアップされるのか分からない『体珠』も含まれておるがの」
「なぜ、そんなにも書きかけのまま置いてあるんですか」
「うむ、それにはサボリ作者の小説の書き方が起因しているといえるじゃろう」
「小説の書き方ですか」
「そうじゃ。サボリ作者の小説の執筆はまず頭の中で始まる」
「構想ですね」
「そうともいえるが、サボリ作者の場合はそのまま執筆のスタートと言い換えられる。これで作品の全体像が出来上がるわけじゃ」
「で、執筆に入るわけですね」
「ところがどっこい、この時点ではまだ執筆されることはない」
「じゃあ、いつ執筆されるんですか」
「数日から数ヶ月の後じゃな」
「なんで、そんなにも幅があるんですか。それにすぐ書き始めてもいいような」
「サボリ作者の頭の中には常にいくつもの小説のネタが寝かされておる。それはそこそこの大作からくだらない代物まで結構な数じゃ。しかし、頭の容量には限界がある。おのずと頭から消えていくネタもあるわけじゃ」
「その消えそうなネタを書くわけですね」
「逆じゃ。消えてしまったネタは書かないんじゃ」
「どうしてです? もったいない」
「簡単に消えてしまうようじゃそこまでのネタだったという考えらしい」
「その割にはものすごくくだらない作品を書いてアップしてたりしますよね」
「そういう代物はほとんど構想してから数日の間しか置かずに書かれたものじゃ」
「寝かしが足りなりないということですか」
「うむ、本来なら頭から消えてしまうようなネタを消える前に書いてしまったものじゃな。逆に高評価を頂戴しておる『カウントダウン』『善と悪』『神との戦い』などは構想から最低でも1ヶ月以上は寝かされておった作品じゃ」
「頭の中で寝かせばいい作品になるならいくらでも寝かしておけばいいじゃないですか」
「頭の中でただ寝かせておるわけじゃないようじゃ。頭の中でそのネタを思い出すたびに細部が変わっていくようじゃ。つまり思い出すたびに作品の内容が少しずつ変化していく。この繰り返しが推敲となり、校正の修正となっていくのじゃろう」
「頭の中で何回も同じ小説を書いているようなものでしょうか」
「そうとも言い換えられるじゃろう。そしてそれは実際の執筆の上でも行われておる」
「と言いますと?」
「いざ執筆を始めるが、その時点ではオチが明確になっていない場合がほとんどなのじゃ」
「そうなんですか!?」
「うむ、漠然としたオチが用意されているとはいえ、所詮は頭の中での構想。幾つか不透明な部分も残されておることが多い。それを明確に形付けていくのが執筆という作業になるようじゃ。そこで、徐々に作品全体の姿が見えてきて始めてオチが出来上がることも多くないわけじゃな。わしらも出てる『博士と助手の何気ない日常』や『カメラに映らない男』、前出の『神との戦い』もその部類に入る作品じゃ」
「結構行き当たりばったりなことしてるんですね」
「しかし、実際に第一線で活躍しておる作者の中にもそんな書き方をしておるものは結構おるようじゃから、サボリ作者だけが異端とは言い切れない話じゃ」
「ともかく、書き方は分かりました。でもそれが今回の遅延の原因になっているのでしょうか」
「本来の姿は書いているうちにどんどん構想が膨らんでいってそれを多少抑えながら筆を進めると言うものじゃ。しかし今のサボり作者は書いていても全く構想が膨らんでいかないようなのじゃ」
「ただ単に構想で生み出した内容をトレースしているだけなのですね」
「その通り。これにかなりの違和感を感じているようじゃな。これで一気に執筆ペースが落ちてしまった」
「単なる言い訳のような気もしますが」
「その通り。単なる言い訳じゃ。大体わしがこんなことを代弁している時点で間違いじゃということにきづいてないんじゃろうか」
「ちなみに執筆中の作品は全部ショートショートなんですよね」
「実はそうではないのじゃ。まだ『体珠』を完結しておらんくせに、また中編を書き始めたようなのじゃ」
「なんですか、それは」
「うむ、助手が怒るのも無理はないのぉ。連載を始めて既に9ヶ月。一向に終わりを見せない作品に苛立ちを覚えておるものも多いことじゃろう。サボリ作者に言わせれば完璧にオチまでの流れは出来上がっておるようじゃ。しかし、もう一山が欲しいらしくてその構想が降りてくるのを待っているとも言っておった」
「そんなのはどうでもいいから、とっとと完結して欲しいものですね」
「まさしくその通りじゃ。で、その降りてくるのを待っている間に書き始めたもう1つの中編はミステリー仕立てだと言っておったなぁ」
「ミステリーですか?」
「そう、作者がまだ手をつけていないジャンルの1つじゃな。といっても、ミステリーのネタ自体は大したものじゃないらしい。肩の力を抜いた作品に仕上がりそうじゃ」
「その執筆は順調なんですか」
「ぼちぼちと言ったとこじゃろう。サボリ作者の順調なんて言葉は信じられんからの」
「まったくです」
「あとはショートショートがじゃな。ただ投稿用の作品は詩みたいじゃがな」
「それぞれいつ書きあがるんでしょうね」
「さぁ? わしの知ったことじゃないがの」
「それはそうですけど、いつまでも更新されないで、このサイトが消滅したら我々の出番も無くなるという事ではないでしょうか」
「むむ、その危惧は十分考えられるの」
「何か作者のサボリ癖を除くような発明はないんですか」
「あれは天性のものじゃから無理じゃな。バカにつける薬がないのと一緒じゃ」
「じゃあ、施しようがないと……」
「まあ、わしがこれだけ作者の弁護をしてやったんじゃ。少しはやる気も戻ることじゃろう」
「のっとるとか言っておきながら、さすがは博士です」
「そう、本当のことを言うでない。照れるじゃろうが」
「博士!眠らせておいた作者が目を覚ましそうです!」
「何!ちょっと殴り加減が足りなかったかもしれんな。助手よ、とっととこの原稿をアップしてしまうんじゃ」
「分かりました」
「では、また機会をうかがって顔を出させてもらうことにするかの。あと、わしらへのファンレターは随時受け付けておるからそちらもよろしくたのむぞ」
「博士、アップ完了です」
「よし、退散するぞ」
「あ、博士!せっかくアップした私たちの文章の項番が99.5とかいう中途半端なものになってしまっています」
「むむ、サボリ作者め、なめた真似を……。覚えておくんじゃぞ!」
 捨て台詞と共に2名退散。
 正規の項番100の雑文は近日アップ予定!

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