ACT.89 消された日々 (2000.10.15)

 最初に仰々しいタイトルをつけているが、内容は大した話ではないので気にしないでくれたまえ。
 さて、たまに私はこのページで記念日に関することを書いていたりする。
 今日はちょうどいい日なので、ちょっと真面目に記念日にも密接に関係する暦のことを書いてみよう。

 今、地球上で使われている暦をグレゴリオ暦という。
 なぜ、グレゴリオとかいう読みづらい名前なのかというと、この暦を制定したのがグレゴリオ13世だからである。ひねりもなにもありゃしない。サンドウィッチみたいなものである。
 それが使われ始めたのが1582年の今日、つまり10月15日なのである。
 ちなみに、それができるまではユリウス暦というのが使われていた。
 なぜ、ユリウスかというと、それはユリウス・カエザルという人が制定したからである。本当にひねりも何にもありゃしないホッチキスみたいなものである。
 で、なぜ暦が変えられたのかというと、それまで使われていたユリウス暦は4年に1度「うるう年」を設けるだけであった。これだけだと誤差は解消されないのである。ということはどういうことかというと、ほっとくとどんどんどんどん実際の暦とカレンダー上の暦がずれてくるわけだ。つまり、下手すれば暦上は冬なのに、真夏日になっちゃったりするのだ。暦は夏なのにスキーが楽しめるのだ。暦では春なのに、栗だ、秋刀魚だ、柿だ、茄子だ、などと食欲の秋なのだ。自分で書いていても訳がわからない。
 しかし、昔の人も馬鹿ではなかった。暦と実際の季節が10日過ぎた時点でこりゃやばいと気づいたのだ。そこで、強引に10月5日だった暦を10月15日まで進め、誤差を無くすため、100で割り切れて400で割り切れない年をうるう年にしないという新たな「うるう年」の制定を決めたのである。
 にしても4年で1日ずれるってのを計算するだけでも大変なのに、100で割り切れ、更に400で割り切れない年は「うるう年」にしないなんて、よく考えついたもんですな。おかげで今年は「うるう年」なのかそうではないのか混乱したんじゃねぇかよ。もう少し分かりやすい方法はなかったのか。いやいや、けなしてたんじゃなかった。ちなみに地球の好転時間というのは365日5時間48分45秒である。誰がこんな細かいところまで調べたのであろうか。よっぽど暇だったのであろうな。いやだから、けなしてたんじゃないって。
 にしても、4年に1度、1日だけ増えるだけというのであれば(上記の例外は書くのが面倒なので省略)さほど混乱にはならない。そういう意味ではこのグレゴリオ暦というのはすばらしい暦といえるだろう。
 何せ、もっと前のいわゆる太陽太陰暦、日本でいうところの旧暦ですな、なんかはものすごい強引なやり方をとっていた。
 というのも、太陽太陰暦での1年は354日しかないのだ。つまり、1年で11日もずれてしまうのだ。そのままほっとけば、夏に花見をすることになったり、冬に梅雨入りしてしまったり、秋に紅葉狩りをするようなことになってしまうのだ。最後のは普通ではないかなどと思うなよ。最後のは丸々1年ずれてしまっているという意味なのだ。とまあ、簡単に訳分からないことになりえてしまう。
 では、その誤差をどうやって埋めるか。実は適当なのである。1年にだいたい11日ずれるので、19年に7回だとか、8年に3回だとかの適当な割合で「うるう月」を設け、1年を13ヶ月としていたのである。で、どの年が「うるう月」になるかも適当なのだ。なんてアバウトな。しかし、昔の方々はそれだけ時間に縛られないゆったりとした生活を送っていたのかもしれない、などと考えると多少はうらやましい気にもなってくるから不思議だ。
 さて、少し話は戻るが、グレゴリア暦が制定されたローマなどにおいて、1582年には10月5日から14日までは存在しない。この辺のことはUNIXなんかを使っている方はよく知っていることだろう。ここの意味がよく分からない人は気にしなくてもいい。何の特にもならない話であるから。
 で、このように存在しない日があるというのは、何か不思議な印象を受けるのだが、実は日本にも存在しない日があるのだ。
 日本で初めて太陽暦が導入されたのは明治6年(1872年)のことである。この時点でグレゴリオ暦とはほぼ1ヶ月の誤差があった。そこで政府はその年の12月3日を、翌年の元旦、つまり1月1日にすると発表した。
 そう、明治6年には12月4日から31日まで存在しないのある。無理やり世界に合わせるためとはいえ、ほぼ1ヶ月ないというのもすごい話だ。その間に誕生日のあった人は、かなり大混乱したことだろう。例え、その間に誕生日がなくても、1月ずれるということは、1月生まれの人が2月生まれになってしまうということだ。おうし座が牡羊座になってしまうのである。運勢まで変わってしまうのである。おまけに12月がほとんどないということは、冬休みが少ないのである。クリスマスがないのである。プレゼントがもらえないのである。大晦日がないのである。年越しそばが食べられないのである。紅白歌合戦で小林幸子の派手な衣装が見られないのである。あ、美川憲一も。考えるだけでもう暴動ものだ。
 などと冗談を言っている場合ではないが、実際冗談ではない影響が残っているのも事実だ。例えば、桃の節句。七夕が梅雨真っ盛りにあるのもおかしい。これは暦が1月ずれたのに、旧暦の日付のまま行事を残したせいなのである。おまけに日本ではないが、本当に暴動の起こったところまであるのだ。
 つまり、所詮は単なる暦だとなめていても、実際はかなり重要なものなのである。
 さて、ここまで暦について色々と書いてきたわけであるが、今日(10月15日)が今の暦というものに非常に重要な日であるということはわかってもらえたと思う。
 しかし、ここまで書いてきて私は大きなミスに気づいてしまった。
 日本において「暦の日」を意味する「カレンダーの日」は日本の暦の変わった12月3日なのである。ちょうどいい日でもなんでもないじゃんか。

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