好男の災難


 8 バッククラッシュ(後編)




 尻を高く上げて腹ばいになったいる好男の腰を、後ろににじり寄った高木は太い
腕で捕らえた。骨盤をがっちり捕まえられて、好男は身動きもできない。

「勘弁してください。許してください。僕はのぞきじゃありません」
 好男は必死の思いで逃れようとするが、ほかの大勢の女たちにも押さえられては、
どうにもならなかった。
「もうゆるゆるになってるじゃない。そんなに痛くはないと思うよ」
 さっき逆レイプ体験談を語っていた香山という若い女が、横から天狗の鼻をつか
んで、好男の濡れた肛門にあわせた。
「じゃあ行くよ。お尻の力抜いておいたほうがいいわよ、下手に力入ってると、括
約筋が切れて、一生肛門が閉じなくなることもあるそうだから」
 言い終わると、高木の腰がぐいっと突き入れられてきた。
 
 うげえ!好男の腹の底から悲鳴が沸きあがる。
 無意識のうちに上がる悲鳴だった。
 直径4センチはある天狗の鼻が、好男の肛門を押し広げ、ぬるぬる挿入される。

「痛い、いたたたた ・・・。やっぱり無理だ、抜いてくれ」
 だめだ。裂けてしまう。きつ過ぎる。めちゃくちゃだよ。

「あーあ、白目むいてる。涎までたらして、おっかしいの」
「変態にはちょうどいい罰だよね」
「血まみれになるところが見たいな、高木先輩、思いっきり突っ込んでみてくださ
いよ」
 周囲であがる興味本位の声は好男の耳には届かなかった。
 肛門痛と戦うことだけでせいっぱいなのだ。
 20センチはある鼻が半分入っていた。
 きりきり裂けるような痛みにくわえて、腹部を圧迫する感覚が、深く犯されつつ
あることを好男に教える。
 しかし、ある時点で、好男の肛門痛は嘘のようにあっけなく消えていった。
 何故かわからない。体が慣れてきたのだろうか。

「痛みが消えてきたみたいね。今度は気持ちよくなる番だよ」
 高木は半分入った物を、さらにひねりを加えてねじ込んだ。
 ほとんど抵抗感なくそれは根元まで突き刺さった。
「高木先輩、男を犯すの慣れてるみたいですね。以前にもやったことあるんですか」
 香山が高木を見上げて訊いた。
 高木はいったん奥まで入れたものを、ゆっくり出し入れしながら答えた。
「あることはあるけど、男子部の男たちにいろいろ聞いたんだよ。彼らは男を犯す
のなんてしょっちゅうだからいろいろ面白いこと教えてくれるんだよね」
「ええ、男子部の人たちってホモが多いんですか。あたしの彼、そこにいるんです
けど」
 心配そうな香山の声に数人が笑った。
「あいつらほとんど経験者だよ。同性愛のね。でも、だからって女が嫌いなわけじ
ゃないから大丈夫なんじゃない」
 山田が香山に言う。
「どういうことですか」
 肛門の感触が、しだいに快感に変わりつつある好男のそばで、二人は好男そっち
のけで、その話題に入っていった。
「つまり、男同士で遊ぶのと、女とのセックスは両立するって事よ。女とセックス
できないホモの男って、ホモ経験者の中でもほんの一部らしいよ」
「でも、自分の彼氏が別の男のお尻抱いていたなんて考えるのは、あまり気持ちの
いいもんじゃないですよ。ちょっとショックだなあ」
「逆かもしれないよ。あんたの彼氏が受身専門かもしれないし。男に対しては女で、
女に対しては男って奴、案外多いらしいよ」
「うえーそれもっといやだなあ。あたしの知らない女の一面を隠し持ってるなんて、
許せないですよ。どうかして確かめられればいいんですけど」

「そんなの簡単よ」
 それまで好男の肛門を丹念に犯していた高木が、横から口をはさんだ。
 いったん腰の動きが止まるから、好男にとってはほっと一息つける瞬間だった。
「どうするんですか」
 香山が訊く。
「これよこれ。こんな風に張りがたつけて、一回だけ私にも犯させてって言ってみ
るのよ。その気のない男は簡単にやらせないけど、そっち方面の男は喜んでパンツ
脱ぐよ」
「あ、それ。あたしもやってみようかな。面白そうだ」
 中年女の山田がふっと、こぼれるように言う。
 香山は納得したのか、ふーんと考え込んでいた。自分が男役になって、自分の彼
氏のお尻を、ごつい張り型で犯すことを想像したのだろうか、口に笑みが浮かび、
頬が赤くなった。
 逆レイプの経験者である香山も、自分の彼氏を犯すことまでは、今まで想像し
ていなかったらしい。

 いったん止まっていた高木の腰が再び抽送をはじめた。
 好男の直腸の中をいきり立った巨根が根元まで入り込み、内臓を引きずり出しそ
うな勢いで出て行く。それの繰り返しが、20分続いた。
 好男の頭はぼんやり霧がかかったようになっていた。
 快感なのか苦痛なのかすら意識できなかった。少なくとも死ぬほどの苦痛ではな
い、射精しそうな快感でもない。
 ぼんやりとした凪いだぬるい海をたゆたっているような感じだった。
 ふわふわとして、手元、足元もおぼつかない。
 半失神状態だったのだ。

 半失神状態から目覚めると周囲の様子が一変する、そんな体験は今日二回めだっ
た。
 縛られているのは変わらないが、周囲の話し声が変わっていた。
 男の声がしている。ボソボソと低い声、そしてクスクスと笑い声。
 凝った首を回して、好男は目を開けた。
 ごつい婦警達もいたが、それまでいなかった人間が5人増えていた。
 婦警達以上に体つきは巨大で、すでに全裸になった者はさっきの天狗の鼻並みの
物をその股間に屹立させている。警察官に間違いないその連中は、今から婦警達の
見ている前で、串刺しショーを始めようとしているのだった。




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