2 ストリップ

 GO!
 主任の合図で、好男とユカはガシッと肩に力を入れた。
しかし、最初から満身の力を入れることはない。好男は余裕でユカの力を受け止
める。
 確かに女の子にしては強い。力自慢もあながちうぬぼれとばかり言えない。
 好男はちょっと意外に思ったが、懸命に好男の腕を押し倒そうとしているユカに
いじらしさを感じ出した。このまま負けてやろうかな。僕が負けたらユカは僕のパ
ンツをやさしく脱がせてくれるんだろうか。
 酔いもあるだろうが、好男は甘い妄想にうっとりしてしまった。
 でも、まだまだ。やっぱりユカのパンツをいただくのが先だ。
 
「近藤ユカ、満身の力をこめています。なかなか強い。でも好男君はびくともしま
せん。さすがに男の子は力が強い。見たところ、なよなよ系の好男君ですが、力自
慢の近藤ユカをまったく寄せ付けません。このままだとユカのパンツは風前の灯、
買い手のついたマネキンのパンツです」
 馬鹿な実況中継をしている山本智子の言葉に、思わず笑い出した好男の腕から力
が抜けた。チャンスとばかりにユカが懸命に体重をかけてくる。
 好男の手の甲が、もう少しでテーブルにつくところまで倒れる。

「おおっと。好男君笑ってる場合じゃありません。もう少しで負けてしまいます。
ユカ選手の勝利か―」
 好男は顔を真っ赤にして耐えた。
 そして一段落してユカの力が少し衰えた時に反撃に出た。
 好男のマジな反撃にはユカもたまらない。
 あっさり逆転されて悔しそうにしていた。

「ちぇ。好男君のパンツの匂い嗅ぎたかったのにー」
 ユカの言葉はただの冗談とも思えない。ひょっとしてユカは自分に気があるのか
もしれない。やっぱりこの部屋について来て正解だったと、好男は思い直していた。
 こんなに素敵な展開が待ってるなんて思ってもいなかった。なんて幸運な夜だろ
う。

「それでは近藤選手のストリップいきましょう。好男君によく見せてやんなさいねー」
 岡田主任が団扇でパタパタ拍手しだした。
 周囲の女達も誰も止めようとしない。酒の上でのこととはいえ、ちょっと現実離
れしてるような気が、好男はしていた。

「好男君、あんまり見つめないでね。やっぱり少し恥ずかしいな」
 少しどころの騒ぎじゃないはずだが、ユカは立ち上がり後ろを向いた。
 後ろ向きで、前を開いてパンティを下ろしているから、好男の方からは、色っぽ
く動くヒップが浴衣越しに見えるだけだ。少し期待はずれだった。

 うふふふ。山本智子が笑うと、ほら。と言って後ろ向きのユカの浴衣のすそを捲
り上げた。膝のあたりまでパンティを下ろしたユカの白くてむっちりしたお尻が丸
出しになった。

 きゃ。いやん。先輩駄目ー。
 ユカがそう言って下手に暴れだしたから、好男の方にまで柔らかな陰唇の赤さが
露出してしまった。
 鼻血が出そうな刺激に思わず好男はうつむいた。

「好男君かわいい!真っ赤になってる。ユカより好男君のほうが恥ずかしそうだね」
 山本智子がそんなことを言いながら、あぐらをかいている好男の背中に寄りかか
ってきた。ノーブラの胸が好男の肩に押し付けられる。
 振り向くと、好男の目に襟元からのぞく智子のピンクの乳首が飛び込んできた。
 
「はい二番目の挑戦者は誰かな」
 岡田主任の言葉に颯爽と手を上げたのは、その山本智子だった。
「山本さん大丈夫?まあ、ストリップがやりたいだけなんでしょうけど……」
 後ろのほうで見ていた村田ひとみが言った。
 好男が顔を上げると、看護婦が10人いた部屋には6人しか残っていなかった。
 4人の看護婦はあまりの成り行きに見ていられなくなって出て行ったのかもしれ
ない。

 智子は全然強敵とは思えない。好男は余裕で勝てると思った。
 今度は智子のストリップか。少しぽっちゃりぎみな智子だが、豊満な胸は色気た
っぷりだ。尻もでかくて、先が楽しみだった。
 再び岡田主任の掛け声で、腕相撲が始まった。
 智子は最初から勝つ気が無いみたいであっさり負けてしまった。

「やっぱり、パンツ脱ぎたかっただけね。山本さんお酒が入るといつも脱ぎたがる
もんね。良かったね。今日は口実ができて……」
 村田ひとみの言葉は好男には随分いやみに聞こえたが、言われたともこも全く気
にしてないようだった。
 智子はえへへ、と照れ笑いするだけだった。

 智子が脱ぎ始めた。ユカのように後ろ向きになることもなく、好男の方を向いて、
帯を解かずに後ろから手を入れて脱ぎだした。
 後ろから手を入れていても、裾はまくれて太腿まで丸見えだ。

「ほら、智子は見られるのがすきなんだから、じっくり見てあげてね」
 村田ひとみはうつむく好男の頭を後ろから抱えてしっかり見えるように向ける。
 智子のぽっちゃりした太腿が目の前にあった。
 白い肌にうっすらと血管が浮いて見える。
 腰をくねらせるようにして智子は下着を下げる。
 好男の見ている太腿に上のほうから黄色い布切れの下着がずり落ちてきた。
 膝を上げて下着を抜こうとした時、智子がバランスを崩した。

 きゃっ、危ない。誰かが手を貸す間もなく智子は後ろに尻餅をついた。
 裾はまくれ上がり、股を開いた智子の股間が皆の前に丸出しになった。
 いやだあ。智子、ぱっくり赤身が丸出しじゃない。
 毛もじゃもじゃだね。ちゃんと手入れしてる?
 濡れ光っていたよ。変態ー!
 周囲からそんな野次が飛んだ。
 先にノーパンになったユカもその様子を見て笑い転げている。
 好男は随分長く智子の股間を見つめていた気がした。
 ほんの5秒くらいが、すごく長く感じた。

 好男は今までまともに女性の股間を見たことが無かった。
 裏本とか、ノーカットビデオとかで見ることは何度かあったが、風俗店にいく金
もない貧乏学生だった彼は、本物を間近に見たのは初めてだったのだ。
 もちろん童貞だ。
 めまいがするような光景に、ただただ呆然とするだけだった。

 人生ってなんてすばらしいんだろう。太陽がいっぱいだ。
 好男は、ぼんやりする頭で古い映画のタイトルを思い描いていた。



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好男の災難
放射朗