好男の災難

 1 二次会の部屋で

 田畑好男はその部屋に入ったとき、すでに後悔していた。
 職員旅行の夜だった。新人看護士として、彼が参加している一泊の温泉旅行は、
看護婦がほとんどだから、男は自分を含めて4人しかいなかった。
 夕食の宴会が終わった二次会に、看護婦達の部屋に呼ばれたのだった。

 女の匂いがした。
 ほら、恥ずかしがらなくていいわよ、おいでよ、と手を引っ張る先輩看護婦の唇
が妙に赤かった。
 そこは六人部屋だったが、自分を入れて10人くらいが所狭しと居座っていた。

「好男君、ここに座りなさい」
 背の高い主任看護婦の岡田佐江子が座布団をひとつ叩いてそう言った。
「でも、片桐先輩達も呼ばなくていいんですか」
 好男は上目遣いに彼女を見る。片桐先輩は好男にとっての直接の上司で、同じ看
護士だった。

「男一人じゃ不安なの? 怖くなった? 子供じゃないんでしょ」
 横から豊満な胸をはち切らさんばかりに突き出してる山本智子が言った。
 馬鹿にされるのは心外だ。好男は虚勢を張って答える。

「まさか、僕はこう見えても力は強いんですよ。仮に皆さんに襲われても跳ね返せ
ますって」
 言った後、やばいかなと思ったが、口から出た以上仕方ない。

「まあいいじゃん。飲み足りないわ。とにかく飲もうよ」
 ここでは一番上役になる岡田主任がそう言って再び飲み会が始まった。
 好男はあまり酒が強くない。
 一次会でも結構飲まされていたので、ここでさらに水割りを飲んでかなり酔って
きた。飲みながら医者の悪口などを話していたが、しだいにそれだけじゃ場が持た
なくなってくる。


「なんかつまんないね。面白いこと無いかな」
 山本智子が言った。
「さっき言ったよね。好男君って力は自信があるって。どのくらい強いか見せても
らおうよ」
 好男の右隣に座っていた近藤ユカが言った。
 彼女はグラビアクイーンの佐藤江里子に少し似た感じで背が高く、胸が大きく、
好男の好みのタイプだった。

「それいいね。腕相撲大会やろうよ。好男君対女子で」
 岡田主任がすぐに飛びついた。

「でもなにか罰ゲームが無いと面白くないよ。負けたらどうする?」
 年齢では一番上になる30歳の佐伯理香子が言った。
 30歳にしては童顔で、ぽっちゃりした体型だが、妙に男心を誘う体つきをして
る、と好男は思っていた。

「負けた人はパンツを脱ぐってことにしようよ、浴衣は着ていてもいいから」
 そんな過激な提案をしたのは、グラビアアイドル・サトエリ似のユカだった。
 普段おとなしくてあまり口数も多い方ではないのに、酒が入ってるせいか胸元の
乱れも気にせず、そんなことを言っている。巨乳の乳首が見えそうになって好男は
思わず目を見張る。
 そんな好男を目ざとく気づいたのは岡田主任だった。

「好男君。あそこもう立ってるでしょ」
 岡田主任はテーブルの下で足を伸ばして胡座をかいている好男の股間を刺激した。

 うぅっ、思わず好男はうめいた。
 ほのかに片思いの感情を抱いているユカの今にも乳首が見えそうな姿を見て、立
たないわけが無い。
 好男の硬直した棒状のものを岡田主任は足の裏ですりすりとなでた。

「やめてください。冗談が過ぎますよ」
 本当は嬉しくて、もっと続けてもらいたかった。しかし二人きりならいざ知らず、
職場の同僚がほとんど集まってる状態でやられても拒否する以外に選択肢は無い。
 
「じゃあ最初は誰が挑戦する?腕に自信のある人はいない?」
 岡田主任は足を離すとそう言った。
 みんなが注目する中、ユカが真っ先に手を上げた。

「はーい!あたし挑戦しまーす。私こう見えても結構強いんですよ。好男君の生パ
ンゲットしまーす」
 ユカが名乗りをあげたことに他の娘達はヤンヤヤンヤの大声援だ。

「あなたほんとに大丈夫?みすみす好男君にパンツ脱がされるだけのような気もす
るけど……」
 岡田主任が横から心配そうに言った。
 余計な事言うなよ!と好男は心の中で叫んだ。
 大好きなユカの生パンがゲットできるチャンスなんだ。もし本当に彼女が目の前
でパンツを脱いだりしたら、鼻血が出るかもしれない。

「じゃあ一回戦準備してください」
 岡田主任の声で、好男とユカは座卓の前で向かい合った。
 そしてお互いに腕を出し、腕相撲の体制を整える。

「パンツ脱がし大会になったら俄然やる気を出しております。田畑好男、もうすぐ
21歳です。対する近藤ユカはサトエリそっくりの美人ですが力はあまり無さそう
です。ユカのパンツはあっさりと好男の手にわたるのでしょうか。さあ、レディが
かかりました」
 名物アナウンサーの要領で実況中継をやりだしたのは山本智子だ。

「ユカ。がんばってね。簡単にパンツ取られるな。好男君のあれをみんなで干渉す
るのよ」
「ユカが負けたら、あたしがやるから負けてもいいよ。でもその時はパンツ脱いだ
まま逆立ちさせるからね」
 周りの女達から様々な声があがりだしていた。


 


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