ハッピーエンドでは終われない

城谷詠人
 二章 もう一つの出会い
 

 15


火照る肌をバスタオルにくるんだ僕が、シャワー室から出てベッドを見ると、ジョージ
の褐色の肌がそこに横たわっていた。
 すでに全裸になっている。
 腹筋は割れていて股間は黒々とした短い縮れた毛に覆われている。
 僕を見て彼は、再び湿り気を帯びた笑みで笑った。

 荒木さんはまだ服を着たままだ。
「キレイにしてきたかな。じゃあエイトはソファで見てなさい、ジョージのを元気にする
から」
 いきなり抱かれるかと思っていたけど、そうじゃなさそうだ。
 荒木さんは上半身裸になると、ベッドに横たわるジョージに覆いかぶさった。
 ジョージの股間に手をやる。
 まだダランとした物を右手に握ると、僕の方に見せ付けるようにしてから、顔を近づけ
ていった。
 荒木さんのしようとしている事を見て僕は軽くパニックになる。
 
 荒木さんは僕を好きなんだろう?
 それなのに好きな相手の前で他の男の物をくわえるなんてありなのか?
 しかし、止めに入るという考えは僕の中で浮かんでこなかった。
 ディナーで飲んだワインが僕の心を鈍らせているのか、この異常な状況がそれをしてる
のか、判断はできなかったけど、おそらくその両方が僕の気持ちを静めてしまってるんだ
ろう。
 荒木さんは僕に顔を向けるようにして半分硬くなった男の物をくわえ込んだ。
 口を大きく開けるから端正な顔がゆがむ。
 でも、荒木さんは僕に出会うまで何人もの男とこんなことをしていたんだろう。
 ちょうど僕が女性と楽しんでいたのと同じように。
 そして、荒木さんがジョージとこういう事をするのは、僕がジョージに抱かれることで
釣り合いが取れるのかもしれない。

 見る見るうちにジョージのものは大きくなっていった。
 巨根というのがどの程度のものを言うのか、僕は知らないが、彼のをそう呼んだとして
も、誰からも異論は唱えられないだろう。
 あんなのが入るのか?
 今度はそっちが心配になってきた。

 荒木さんの顔が上下に動くたびに、長い髪の毛がカラスの羽のように羽ばたいている。
 ジョージの息がだんだん荒くなってきた。 
 なんだかいきそうな感じに見える。
 ここでジョージがいってしまったらどうなるんだろう。
 じゃあ二発目ってことになるのかな。
 ずいぶん長い時間が過ぎてるように思えた。
 自分ならこれ程されたらとっくに発射してるだろう。

 上質なベッドのスプリングはその運動を吸収して、ほとんどきしみ音も発しない。
 素肌にクリームを塗りたくるような湿った音が聞こえるだけだ。
「お上手ですね、いきそうですよ」
 ジョージの言葉で、荒木さんが顔を離した。
 乱れた髪の荒木さんが僕を見る。
「じゃあ代わろうか。エイト、こっちにおいで」
 うなずく荒木さんの口の脇のしわがぐっと深くなった。
「わかりました」
 自分の声が他人の声みたいにかすれて聞こえてきた。
 立ち上がり、ベッドサイドに数歩踏み出す。
 ジョージが体を起こして、脇に寄った。
 そしてその空いたスペースに僕が横になる。
 左手にジョージの微かに汗をかいた身体があった。
 横向きになって肘で頭を支えるジョージの顔が僕の左耳に息を吹きかけてくる。
 荒木さんの手が僕の身体を包んだバスタオルを開く。
 まるでプレゼントの包みを解かれるような期待した顔をジョージはしていた。

「じゃあ足を上げて。ゼリーを塗ってやるよ」
 荒木さんがゼリーの蓋を緩めながら言う。
 羞恥と屈辱に心が煙を上げてるみたいに思えた。
 そのためなのか、目の前の光景に霞がかかる。
 現実ではないみたいだ。
 では、どこまでが現実だったのか。
 ローズビーズの階段を初めて上がる前まで?
 でも、それにも理由がある。
 理由があってそれが原因になって、結果につながるのだ。
 そして結果が次の原因になる。
 現実は、原因と結果の因果関係でずっとつながってるのだ。
「早く足を上げて」
 赤ちゃんがおしめを換えるような格好を荒木さんは要求している。
 でも、ジョージの目の前でそのポーズをするのは嫌だった。
「手伝いますよ」
 ジョージが脇から手を伸ばして僕の両膝をつかんだ。
 足が持ち上げられる。
 抵抗するほどの気力は僕には無かった。
 
 無様な格好を見たくなくて目を瞑る。
 ぐっと足を引かれて、アヌスが荒木さんの目の前にさらけ出される。
 二人の視線を感じて僕の股間も少し興奮の意思を示し始めた。
「じゃあ力を抜いて」
 荒木さんの細くてしなやかな指がたっぷりとゼリーをのせて僕のアヌスに到達する。
 恥ずかしい感触。
 するりと指が中に入ってきて、僕の体内をかき回す。
「二本いくよ」
 いったん抜かれた指が、太くなって再び入ってくる。
 人差し指と中指を入れられてるんだ。
 くちゅくちゅという音がいやらしい。
 僕は股間がすっかり立ち上がったのを自覚した。
 そして、ゆっくり口から息を吐く。
 ジョージの手だろうか、わき腹をツーと指でなぞられて、快感に声を上げてしまった。





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