エピソード5-1

 『ハーフ天国』から歩いて15分くらいのビルの3階に、その店はありました。
 通りを歩いてくる途中、私は何度も酔った男に声をかけられたり、お尻を触られたり
しました。その度に手で振り払うと、かえって面白がって触ってきます。
 以前だったら、近くに落ちている手ごろな棒きれでも拾って、ぶちのめすところですが、
その時は弟の事で頭がいっぱいで、どうでもいいと思ってました。

 赤や黄色のネオンとお酒でにぎわう歓楽街。
 タバコの煙に、ふざけた男達や女達のきょう声渦巻く場所。
 本当にここは日本かしらと思うほど、一目で外国人とわかる人々が、大勢たむろして
いたりしました。
 歩道を通る酔ったサラリーマンに声を掛けて誘う金髪の女達や、店に引き込もうと
する呼び込みの男達。
 
 
 この街のどこかに弟はひっそりと佇んでいるのかもしれません。
 とにかく早く見つけて、連れ帰らないと。
 それだけを考えていました。
 
 教えられた店はごく普通のこじんまりとしたスナックでした。
 客は一人もいません。
 こんな時間に若い女が一人で入ってくるなんて珍しいのか、口ひげを生やした初老のマ
スターは怪訝な表情で私を迎えました。
 カウンターに座ってビールを頼んだあと、私は切り出しました。
 
「ああ。さっき和歌子から電話で聞いたよ。組の者に話はしてあるからすぐに迎えに来る。
弟さんを見つけるのはわけは無いと思うけどねえ……」
 マスターの言葉は中途半端にとぎれます。

「まあ、篠崎さんに可愛がってもらうんだね」
 私が黙っていると、初老のマスターは口髭をつまみながらそれだけ付け加えました。

 しばらくそこで待っていると、篠崎という男が現れました。
 黒っぽい地味なスーツを着た背の高い中年の男でした。
 弟を探してくれる交換条件は、彼と一晩付き合うことでした。
 私は既に覚悟を決めていたのですんなりOKしました。
 
 てっきりラブホテルに連れて行かれるものと思っていた私の想像は、あっけなく裏切られ
ました。
「カウンターに両手をついて、尻を突き出せ」
 彼はいきなりそう言ったのです。
 初老のマスターも、思わぬ展開に興奮してるのか、喉仏が大きく上下するのが見えました。

「ここでするんですか」
 私はわかりきってることでも、聞かずに入られませんでした。
「早くしろ。客が来るぞ」
 彼は面白そうにいいました。誰かが入ってくるのを心待ちにしてるみたいでした。
 入り口のカギくらいは閉めるのかと思っていたのに、二人ともそんなそぶりは見せません。

 私は観念しました。
 言われた通りに、光沢のある一枚板のカウンターに両手を突いて腰を突き出しました。
 篠崎は私のジーンズのベルトを外すと、チャックを下ろし、みかんの皮でもむくように
ずるずると脱がせました。

 私の小さな下着に包まれた少し大きめなヒップが剥き出しになりました。
 ある程度覚悟はしていたけど、こんな風にいつ誰が入ってくるかもわからない場所で、
二人の男性に変な事をされるということはさすがに予想外の事です。
 体中が燃えるくらいに羞恥の波が渦巻いてきました。
 
 ジーンズから足を外すようにいわれ、完全に脱がされてしまいました。
 そして篠崎の大きな掌が私の股間を包み込むように触ってきました。
 マスターは私のお尻がよく見える場所に位置を変えました。

 下着の上から股間の亀裂を指ですりあげられました。
 クリトリスを刺激する彼の指は慣れた動きで私の官能を呼び覚ましました。
 考えてみたら、こんな風に男性主導でセックスした事は今まで一度もありませんでした。

「贅肉が少ないな。結構鍛えてある。何かスポーツやってたのかい」
 片方の手で私のお尻をなでまわしながら彼が言いました。
 答えないでいると、今度は下着の端から股間の亀裂に指を差し込まれました。
 自分ではわかりませんでしたが、すっかり潤ってたのでしょう。

 その指は抵抗なくぬるりと入ってきました。
 久しぶりの感覚に私はすぐにでも登りつめそうになってました。
 自分からお尻を突き出し、彼の指を出来るだけ深くまでくわえ込もうとしていました。
 横目で見ると、マスターはさっきと同じグラスを持ってまだ磨いていました。
 篠崎も興奮して我慢できなくなってきたみたいです。
 彼はズボンと下着をずらせて、ギンギンになった股間の物を取り出していました。
 
 彼のペニスが私の襞ひだを掻き分けて侵入してきた時、私は頭の中に火花が散るような
快感を感じました。
 今までしてきたセックスとは180度反対の、責められる快感に今度は酔ってしまいそう
でした。
 長くて太い彼のもので、ゆっくり、深く私は貫かれました。
 卑猥な音が、低い音量のイージーリスニングの流れる店内にひときわ大きく聞こえました。
 篠崎がいくまでに20分くらい、そうして、強く浅く激しく、緩やかに突き回されました。
 彼が発射したのがわかって、私はほっとしました。
 なんとか、他のお客が来るまでに終わってくれたと思ったからです。
 でも、考えが甘かったようです。
 たった一度のセックスで終わってしまうほど、篠崎は淡白じゃなかったというわけです。
 
 次に、椅子に座った篠崎の物を私は口でしゃぶって愛撫させられました。
 突き出した裸のお尻を今度はマスターが抱いています。
 マスターの物は篠崎と比べれば、大きくはなかったけど、妙に硬く感じました。

「…あ、あん。すごい」
 逆レイプで感じるものとはまた別の興奮で、自然とそんな甘い声を出してしまいました。

「マスターまだやってる?」
 いきなり入り口のドアが開いて、3人のサラリーマン風の客が入ってきました。
 私は茫然自失という状態でしたが、マスターはさすがに驚いて、うろたえてました。

「あんた達運がいいぜ。この娘は今日はみんなのものだ。好きなだけやっていっていいぜ」
 唖然としている3人組に篠崎がふんぞり返ったまま言いました。
 
 今までやってきたことの報いでしょうか。
 私のやってきたことの反対の状態になってきました。
 私は快感を感じていたし、弟のためという名目もあったので篠崎に言われるまま、3人の
サラリーマンとも嫌というほどやりまくりました。
 彼らは2回ずつ私の中に出してさっぱりした顔で帰っていきました。
 
 そして結局その夜は私の携帯電話の番号を教えただけで別れました。
 本当に探してもらえるのか疑わしかったけど、私としてみれば、他に方法はありません。
 やり逃げされるのは癪だけど、それでも仕方が無いと思ってました。
 とにかく弟を探し出せる可能性が少しでもある事に、縋り付くしかなかったのです。
 三日以内に連絡するといわれました。

 丸一日いらいらしながらホテルで待って、そしてその次の日の午後。
 自分でも新宿を歩いて探してみようと出ていたときに、携帯のベルが鳴りました。
 

 篠崎に連れられて入った、暴力団の組事務所みたいなビルの一室に、パイプ椅子に座った
弟はいました。
 部屋にむっとする熱気がこもっていたのはエアコンの調子が悪かったからかもしれません。

「姉さん」と一言、すこしやつれた弟の口からこぼれました。

「無事でよかった。さあ、帰りましょう」
 弟の肩を抱いて立たせようとする私の後ろで、男の声が言いました。
「帰すわけにはいかないな。おまえ達」

「どういうことですか」
 驚いて振り向くと、スキンヘッドでサングラスの男が指を鳴らしながらたっていました。
 私を連れてきた篠崎はそこにはもう居ませんでした。
 
「こんな可愛い男の子と、美女だ。高く売れるだろうねえ。ちょうど来週香港と取引があるん
だ。その時が日本とお別れ。あっちでたくさん可愛がってもらえるぜ」
 その部屋にいた5人の組員がいっせいに笑い出しました。
 やくざ映画でも見ているみたいな気持ちでした。

「和歌子の恨みはまだ収まって無かったって事さ。あんた達には関係ないといってもな、あの
剣道部の一員だと聞いちゃあなあ」
 太った男が葉巻の煙を吐き出しました。

「さあて、商品だから手荒な事は出来ないが、とりあえず服を全部脱いで、裸になってもら
おうか」
 ひげを生やした背の高い男がそう言いながら近づいてきます。
 
 私は咄嗟に、近くのテーブルの角にかけてあった傘を手にしました。
 その傘を太った男の脳天にたたきこむと、ふんぞり返っていたその男は、泡を吹いて後ろ
に転げました。

 二人目は股間を蹴り上げてやりました。
 最初の一撃で傘も壊れてしまって武器として役に立たなくなったからです。

 思わぬ反撃に慌てた男達でしたが、やはり乱闘には慣れているのでしょう、後ろに回った
男に羽交い絞めにされて、私は身動きできなくなってしまいました。

「早く逃げなさい」
 私の声に弟は一瞬躊躇した後、ドアに向かって突進しました。

 でもそこまでです。
 ドアの外からなだれ込んできた組員達に弟もあっさり取り押さえられてしまいました。
 
「なめやがってこのアマ」
 頬に焼けるような痛みが走った後、着ていたシャツを引き裂かれ、ジーンズを引き摺り下
ろされました。
 数人の男達によってたかってクチャクチャにされながら全裸にされてしまいました。
 弟の方を見ると、同じように素っ裸にされていました。

「止めろ、はなせ」
 叫ぶ弟の股間が蹴り上げられました。

 ぎゃっと言って弟が転がりました。
 テーブルは倒れ、パイプ椅子も吹っ飛んでいました。
 
 起こしたテーブルに私は仰向けに押さえつけられました。
 大きく足を広げさせられ、さらにM字に膝を曲げて、恥ずかしい所をみんなに観察されま
した。
 必死で足を閉じようとする私を、男達は面白そうに眺めているんです。

「まだきれいな色してるじゃないか。ちょっとビラビラが大きめかな」

「中までかき回してやるぜ」
 誰かの指が入ってきて、敏感なところを刺激してきます。
 うっ!私は体の反応を止める事が出来ませんでした。

「だいぶ滑りがよくなったぜ」

「ほら姉貴がやられる所をよく見とけ」
 弟がよく見える場所に連れてこられ、ひげの男が自分のズボンを下ろして勃起した物を
取り出しました。

「ちょっと待て、こっちの気がすまん」
 私が傘で殴った、太った男が寄ってきました。
 そして火のついた葉巻を私の股間に近づけてきました。

「豆をこんがり焼いてやる」
「やめてください。許して」
 無駄とはわかっていても口から出る言葉は止められません。
 太った男は私の言葉なんか無視して、火を強くするために一度葉巻を吸い込みます。
 そして赤く燃える葉巻の先端がゆっくり私の股間に近づいてきます。

 もう駄目。もう少しでつくというとき、制止する声が聞こえてきました。

「止めなさい。商品を傷物にする気?」
 女の人が入ってくるなり太った男の頬を平手打ちしました。

「女に恥かかされたからと言って、勝手な事はさせないわよ」
 押さえ込んでいた手が離れたので、私はやっとテーブルから下りる事ができました。
 その女の人は30前後のすらりとした女の人でした。
 ショートカットでサングラスをしてますが、きりっとした面持ちをしていました。
 カルチェの赤いスーツが似合ってました。
 
 太った男と、他数人は不満を言いながらも部屋から出て行きました。

「言っておくけど、私はあなた達を助けるつもりは無いからね。あなた達は商品だから、
香港に送るまでは大切にしてあげるけど」
 彼女はサングラスをちらりと上げて、私を見ました。
 そして弟を。

「この子可愛いわね、後で私の部屋に連れて来て」
 部屋に残っていた男にそう言うと、彼女は出て行きました。

「ガミにはかなわないな」
 部屋に残った男の一人がつぶやきました。

「組長の愛人じゃなきゃ一発かましてやるんだがな」
 別の男も卑屈な笑いを浮かべていました。
 
 弟はガミと呼ばれる紅いスーツの女の部屋に連れていかれました。
 私は数人に犯される事を覚悟していたけど、その夜は何もされませんでした。



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