調教倶楽部




「さっきのこと、気にしてるのか?」
 ベッドの上で耕平が裸になりながら聞いてくるのは、私がいつまでも脱がないから。
 私のワンルームマンションは大学から歩いて二十分の場所にある。
 真夏の日差しの中とはいえ、その程度歩いたくらいでは大して汗もかいていない。
 つまりシャワーを浴びるほどでもなかったから、そのままベッド直行だった。

「別に。そんなわけじゃないけど。やっぱり久美子先輩とあわせたのは失敗だったかな…
…」
「ぜんぜんそんな訳あるじゃん。大丈夫だって。あの人確かに魅力あるけどさ。俺にはち
ょっと手に負えなさそ」
 ほお、案外耕平も観察力あるのかもしれない。
 謙虚な事言ってるじゃないの。
「いつに無く弱気じゃない。自信たっぷりな耕平が好きなのに」
「へえ、じゃあ浮気してもいいってこと?」
 耕平が私の服を脱がそうとする。
 私は身体を引いてその手を逃れる。
「浮気も何も。別に付き合うって約束したわけでもないしさ。耕平は自由だよ。今の所は
ね」
 寝転がった耕平に私は覆いかぶさって、耕平の裸の胸に口をつけた。
「今の所はってのがミソかな。自由なのは嬉しいけどさ」
 体勢を入れ替えようとする耕平を抑えて、私は乳首に吸い付いた。
「今日はあたしがサービスするよ。昨夜はがんばってくれたから」
 私は服も脱がずに耕平の感じるところを探すことにする。
 男のセックスは普通攻撃的で能動的なものだけど、受身の心地よさを知らせるのが、ま
ずは調教の第一歩なのだ。
 サービスされることの快感をしっかり植えつけてからじっくり飼いならしていくのだ。
 すでに勃起して痛いくらいに張り詰めている耕平のものを握り締め、ゆるゆると刺激を
加えていく。

「こんなふうにされたこと無い? 高校の頃もててたんでしょ」
 首筋に息を吐いて耳たぶを舐めてやる。
「女子高生なんてガキだからさ。弓みたいにうまい子なんていなかったよ」
 大きく息を吐きながら耕平がつぶやいた。 
 私の手の中でぬるぬるになった耕平のものが時折ひくひくと勝手に動く。
 ちょっと早漏気味だけど、そろそろいくのかもしれない。
 昨夜二回も出したというのに、若さあふれるっていうのかな。
 私は一気にいってしまわないように、力加減を考えながら手のひらをうごめかす。
 ピンクのかわいい風船を掌に包んでまわすようにしてあげる。
 ぬるぬるのゴムボールをいじってるみたい。
「すごい……なんかソープに来てるみたい」
 ソープだなんて行った事も無いくせに、あくまでも強がりたいってのがかわいらしい。
「まだいっちゃ駄目だよ。我慢すればするほど気持ちよくなるんだから」
 私はいったん手を離して身体を起こすと、耕平の今にも爆発しそうな棒に唇を寄せた。
 舌を伸ばして先端の風船を包み込むように吸ってあげる。
 う、っという声を上げる耕平。
 ここまでくれば第一関門は突破かな。
 後はじらしてやればやるほど、男は言いなりになっていくのだ。
 でもその前に重要なことがある。
 我慢できなくなった男が責めに回れなくすること。
 要するに自由を物理的に奪ってしまうことなんだけど、ここで焦ると元も子もなくなっ
てしまう。
 怖がられたらお仕舞いって事なのだ。

「ああ、すごく気持ちいい。もういってもいいだろ」
 耕平の腰がベッドの上で跳ねる。私の口の中に一気に発射したがっている。
 私は耕平の玉を軽く握ってコリっと力を加える。
 いきそうなときはこれに限る。
 痛ててと言って身体を起こした耕平の物は私の口の中ですぐにしぼんでいった。

「ごめん。痛かった? あたしも興奮してたのかなちょっと力入れすぎたかも」
 平謝りの私に、耕平はむっとした顔を近づけてきた。
「変なこと考えてるんじゃないだろうな。なんか怪しいんだよな」
 怪しまれるようなことしたかな。知らないうちに態度に何か出たのかしら。
 耕平の思わぬ勘の良さに一瞬私はたじろいでしまった。
 気を取り直して、耕平のしぼんだものを刺激し始める。
「なに勘ぐってるのよ。ちょっと痛くされた位で。怖くなったの?」
 先手必勝だ。
「怖いって何が。冗談じゃないよ」
 撒き餌に食いつく魚みたい。
「だってあたし年上だしさ。妙に経験つんでるみたいに思われてるんじゃないかと思って」
 いったん耕平のものを放して、ベッドの上で向き合った。
 無言の耕平に私は追い討ちをかける。
「セックスってさ。別に男が主導権を持たないといけないものじゃないでしょ。普通はそ
うかもしれないけど、女性上位のセックスは実は最も気持ちいいセックスなんだよ。もち
ろん男の人にとってもさ。さっきーソープみたいって言ってたじゃない。男の人は寝たま
までサービスをしてもらうわけ。でもあっさりいってしまっちゃそこでお終いでしょ。本
当の快感は、そのずっと先にあるのに、大抵の男の人はそれを知らないんだよね」

 自分で言っていて、これじゃ経験つんだ女の台詞そのものだって、心の中で突っ込みい
れてしまった。
 耕平の目が血走ってる。ちょっと早まったかもしれない。
 ここで逃がしたら先輩たちに怒られるだろうな。
 ひやひやする私の表情を勘違いしたのか、耕平の表情が柔らかくなった。
「わかったよ。弓の気持ち。今日は弓の言うとおりにしてやるよ」
 恋人を逃がすのを恐れる女の気持ちを汲んでくれたって感じだった。





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