調教倶楽部
 7月11日 13:20  久美子から弓へ

 どう?最近あの彼氏とはうまくいってる?なかなかの美形をゲットしてたね。
 早いところ落としてクラブに登録してよ(^^)/ 

 7月11日 14:04  RE 久美子から弓へ

 あれ? どうして先輩あの子のこと知ってるんですか? まだ紹介していなかったです
よね。
 どこかで見かけました? まあいいや。あの子、佐川耕平って言うんですが、私のいっ
こ下で、今年入学した子なんです。私の入っているクラブの進入部員なんですよ。実はま
だ唾つけてないんですが、今度紹介します。

 7月11日 16:11 まだなのかよ

 やり手の弓しては遅いじゃん。もう入学式から四ヶ月たつっていうのにさ。
 手こずってるんじゃないの? そのうちなんて言わないで明日紹介してよ。
 14:00 に学校前のマクドね。すっぽかしたらお仕置きだかんね。

 7月11日 22:45 RE まだなんかよ

 レス遅くなってすいません。発破かけられたんで早速いただいてきたところです。
 美形だから、かまっ毛入ってるかななんて思ってましたが、その辺はノーマルみたいで
した。
 童貞君だったらしくて、お尻に入れられそうになりましたよ(笑)
 調教は難しくないと思いますが、一人っ子で甘やかされてた所為か、やや自己中みたい
です。明日の 14:00 マクド了解しました。
 この子が入ったら、登録もいよいよ二桁ですね。楽しみです。ではでは。



 一章   罠

 1
 
 蝉の鳴き声が耳に響くキャンバスの木陰のベンチで、私はブラックの缶コーヒーを一口
飲んだ。
 喉を通り過ぎていく苦い水は冷たくて、うっすらと汗をかいた私の身体を内側から冷や
してくれる。
 昼までで帰る生徒たちの姿もまばらになって、噴水脇の広場は強い光とそれの作る真っ
黒な影でコントラストが鮮やかだった。
 正面玄関の奥からほっそりした人影が出てくる。
 ぴったりしたジーンズに包まれた長い足を見たときにすぐ耕平だというのは分かった。
 女の子みたいな長い髪を太陽の下で振り払うようにしてこっちを見た彼は、早足で近づ
いてきた。

「ごめん。講義がなかなか終わんなくてさ」
 私の横に腰掛けて前かがみになった耕平がさわやかな笑顔で私を見上げる。
 高校の頃はずいぶんもてたろうだろうな。女の扱いに長けてるって言うか、経験から来
る慣れがすごく感じられる。その彼が私の缶コーヒーを当たり前のように取り上げて、残
り少ない中身を一気に飲み干した。
 彼の手から離れた缶は、三メートル先のゴミ箱にゆるい放物線を描いて吸い込まれてい
く。

「大丈夫。大して待ってないから。それよりおなかペコペコだよ。お昼にしよ」
 私はバネ仕掛けみたいに勢いよく立ち上がって、校門に向かう。
 すぐに私を追ってくる彼は、私を追い越して先に校門を抜けた。
 どこにするって聞いてきた彼に、私は無言で目の前のバーガーショップを指差した。

 ランチタイムが過ぎて、おやつにも早い時間帯だったからか、いつも込んでる店内は半
分以上の席が空いていた。
 私が座って待っていると、バーガーとポテトと飲み物を乗せたトレイを持った耕平が、
所々はみ出した椅子を軽やかに避けながらやってきて私の向かいに腰を下ろした。
 サンダルを脱いだ足で耕平の足をさすると、ポテトをつまんだ手を止めて片方の口の端
を引き上げる。
「昨夜はあんまり満足できなかったのかな。二回じゃ不満?」
 台詞はプレイボーイみたいだけど、セックスの経験は無かったのは昨夜ばれてるんだよ
ね。
 多分Bまでの関係がほとんどだったんだろう。
 私は笑いたいのを堪えるのが大変。
 恥ずかしがる振りして横を向くと、目の端に久美子先輩が映った。
 
「あれ、弓じゃん。どうしたの今日は早いね」
 わざとらしく久美子先輩が声をかけながら寄ってきた。
 手には黄色いトレイを持っている。
「あ、先輩。ここ良かったらどうぞ。一緒に食べましょう」
「そんな、あたしゃそこまで無神経じゃないわよ。デート中に声かけてごめんね。あたし
はあっちで食べるから」
 通り過ぎようとした先輩に、お約束の追い打ちをかける。
「そんなんじゃ無いですよ。クラブの後輩なんです。一緒にいいよね」
 後の方は耕平に向かって言った。
 耕平は一瞬戸惑った表情をしたけど、異議をとなえる事まではしなかった。

「こちら佐川耕平君です。こっちは岡本久美子先輩。三回生だよ」
 私の横に腰を下ろした先輩に紹介していると、先輩のトレイのほうから熱いコーヒーの
香りが漂ってきた。
「どうも、はじめまして佐川です、よろしく。でも、何の先輩なの」
 耕平が私に聞いてきた。
 調教クラブの先輩さ。と心の中で言いながら私は用意しておいた答えを口に出す。
「高校のときのバレー部の先輩なんだ。あたしずっと先輩にあこがれててさ。だからこの
大学選んだんだ」
「へえ。弓ってバレーやってたんだ。なるほど結構たくましい腕してたっけ」
 昨夜のことを話したくてたまんないのか、耕平はそんなことを言ってるけど、いきなり
呼び捨てかよって思って私はむっとしてしまった。
 一発やってしまえば女は自分のものって勘違いしてる馬鹿がここにも居たって感じ。
「クラブの後輩にしてはずいぶん砕けた仲みたいね。こんな美形とお友達だなんて、弓が
うらやましいわ、まったく」
 上半身は短いティーシャツ一枚の先輩の巨乳が揺れているのを、耕平が見ている。
 喉仏が大きく上下した。
 一人っ子の自己中ナルちゃんは巨乳が好きなんだよね。
 ママに甘えたいのがまだ治らないんだろう。
 私が黙って食べていると、一足先に食べ終えた耕平が久美子先輩に話しかけ始めた。

「今もバレー部やってるんですか?」
「去年まではしてたけど、今は引退かな。時々後輩の練習見に行くけどね」
 久美子先輩の言ってるのは本当のことだ。
 私はバレーなんかしたことも無いけど、先輩は高校時代からバレー一筋。
 引退したのは実は巨乳が重くなって揺れてしまって、やりにくくなったからなのではと
私は思っている。
「残念だなあ。岡本先輩のバレーしてる姿、いかにも格好よさそうだから見てみたかった
ですよ」
「バレーに興味あるなら今度見学しにくる? 君が見てるならあたしも久しぶりにやっち
ゃおっかな」
 ジャンプ、アタックにゆれる巨乳を想像したのか、耕平が犬みたいに頷いて(犬は頷か
なかったか)かすれた声を上げた。
「ぜひ見学させてください」
「バレー部にいる美人は久美子先輩だけだからね。あんまり期待し過ぎない方がいいわよ」
 釘をさす私を冷ややかな目で見る耕平の心は手に取るように分かる。
 私が嫉妬してると思っているのだ。
 わざと嫉妬させるような行為をするのも恋の駆け引きってやつだ。
「弓とはいつだって会えるじゃん」
 耕平は、私のあまり無い胸を突付く様に指差した。
「じゃあ私はこの辺で失礼するわ。耕平君、いつでも電話していいよ」
 久美子先輩が携帯のメールアドレスと番号の入った名詞を耕平に渡して席を立った。
 トレイを持って去る久美子先輩の揺れるお尻が耕平に手招きしてるみたいだった。




 
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