ちくり屋
 


 処置室にはあいにく鍵がかかっていた。夜は各部屋に鍵をかけるようになっている。
 そしてその鍵は宿直室にしかなかった。
 今日の宿直は誰だったろう。時計を見ると八時二十五分を回ったところだった。
 処置室の鍵がほしい。だが宿直室から借りる適当な理由が見当たらない。
 考えながら宿直室に向かっていると、名案が浮かんだ。
 宿直者から借りる理由がないのなら、自分が宿直者になればいいのだ。
 ノックしてから、六畳の埃っぽい宿直室に入ると、ベッドに寝そべってプロ野球中継
を見ていた薬剤師の林田が薄くひげの伸びた顔を上げた。
「宿直ご苦労様です。実は機械のメンテが長引きそうなんで、今日は帰るの面倒なん
ですよね。だから僕が宿直やっておきますから、林田さん、帰っていいですよ」
 四十男の林田はひょいとベッドから起き上がる。
「え、本当にいいの。でも夕食食べちゃったし、キミどうするんだ?」
 当直者の夕食は、病院側が用意することになっていた。
 それに宿直手当てのこともある、そう言いたそうだが彼は口には出さなかった。
「僕のわがままですから、宿直手当は林田さんもらっておいてください。夕食は出前で
も取りますから、気にしないで」
 岡持の言葉に、悪いね、なんていいながらも林田はさっさと帰り支度をはじめた。
 林田は岡持の気が変わらないうちにと急いでいるのだろうが、岡持にはぐずぐずしてい
るようにしか見えない。早くしろよ、心電図室でパンティを脱いだ百合が待ってるんだ。
 百合の暖かい谷間が、入れて入れてとヒクついてるんだぞ!
 そう怒鳴りたいのを懸命にこらえていた。

 林田が原付の軽薄なエンジン音を響かせて病院を去っていったとたん、大急ぎで岡持は
処置室に向かった。鍵を開けて目当てのものの入っている引出しを開ける。
 そこにはいろんな太さの注射針がビニール袋の中に並んでいた。
 その中から一番細いのを5本抜き取ると、処置室を出て心電図室に戻った。
 散々苦労して戻ってきたというのに、ベッドの上に横たわるあられもない姿の荒木百合
は、そこにはいなかった。
 ぷんと女の匂いが微かに漂い、さっきまでのことが岡持の幻想ではないと慰めてくれて
るみたいだった。
 
 いつもの岡持ならばこのまま引き下がっただろう。宿直室で買い置きの焼き豚ラーメン
をお湯で戻してテレビを見ながら啜っていただろう。
 しかし、百合の熱い身体の中に浸かっていた彼のペニスが、そんな生易しいフィナーレ
を許してくれない。
 懐中電灯を片手に、見回りを装って岡持は事務室に行った。
 九時前だ。そろそろ保険請求の残業も終わろうかとしていた。まだ若い事務主任の小川
が、終わりの合図のように自分のパソコンのスイッチを切った。
 ウィンドウズの終わる音楽が流れる。
「お疲れ様。今日は終わろうか」
 小川が、ほかに残っていた四人の事務員に声をかけた。
 四人の中にはもちろん先ほど心電図室の机に上半身を預けて白くて大きな尻を岡持に向
けていた百合も含まれる。

 百合は岡持のほうを見ないようにして、帰り支度をはじめた。
「残業お疲れ様。今日は終わりですか」
 岡持が受け付けカウンターから声をかけると、小川が、あれ、今日は林田さんじゃなか
ったの。と訝しそうに言う。
「僕が代わってあげたんですよ。林田さんのお子さんが熱が出たそうで、帰りたそうだっ
たから」
 岡持はすぐにばれるうそをついた。
 別にばれてもかまわないと思った。目的は百合の身体だけなのだ。
 小川と百合以外の二人の事務員が帰ると、小川に気づかれないようにして、百合をじっ
と見つめる。
 百合は岡持の考えがわかったと言うように小さくうなずいた。


10


 宿直室のテレビは映りが悪かった。
 病院がアンテナ代をケチって、安物の室内アンテナしか買ってくれないからだった。
 時折よこしまの入る野球中継は、ただのBGMだ。そんなものに興味はない。
 九時を十五分過ぎたとき、ノックの音がした。
 小川が帰ってから五分後だった。
 ドアを開けると百合がうつむきがちに立っていた。まだ着替えてもいない、事務服姿だ。
「早く入って」
 百合を入れてドアに鍵をかける。百合が入ると同時に、宿直室の窓口の前を、準夜の看
護婦たちがお疲れ様でしたーと小高い声を出しながら通り過ぎていった。
 狭い宿直室で百合と二人きりだ。
 岡持の心臓が派手に動きはじめる。この娘を好きなようにいたぶれるのだ。
「まずは、健康診断してあげるよ。これにおしっこしてごらん」
 岡持は用意していた検尿コップを百合の前に差し出した。
「もちろん、トイレに行かないで、ここでするんだよ」
 そういう岡持に、百合はうつむいたままこくんとうなずいた。
 百合がパンストとパンティを下げて、その場にしゃがみこむ。
 そして位置を合わせるように検尿コップを持っていく。
「うまく入れるんだぞ。こぼれたら、舐めてきれいにするんだぞ」
 言っているうちに自分も興奮してきた。股間のものもギンギンに硬くうずいている。
 岡持は身体をかがめて、百合の股間を覗き込む。
 ふうと大きく息を吐いた百合のお尻が揺れて、最初はゆっくり、次第に勢い良く尿が
検尿コップに注ぎ込まれる。
 しかし、やはりサイドに垂れたりして、コップの周りに尿だまりができた。
 200CC入るコップに八分目ほど注ぎ込んだあたりで終了。
「だめだなあ。言っただろ。こぼすなって」
 尿コップを取り上げて、まだしゃがんだままの百合を叱り付ける。
「ごめんなさい」
 部屋に入ってきて初めて百合が言葉を発した。
 尻を持ち上げるように四つんばいになって、こぼれた尿を舐めるように命令する。
 百合はわかりました、と一言言って真っ白なお尻を突き上げた。
 こぼれた尿に顔を近づける。
 岡持は、たった今おしっこをしたばかりで、まだ濡れている百合の亀裂に指を差し入れる。
 百合が切ない声を上げた。
 ぬるぬるの百合のそこは、岡持の指を三本入れても余裕で受け止めている。
 中をこねるように指を出し入れする。あんあん、という声が狭い宿直室に響く。
 まだ床は濡れていたが、もう我慢できないと、百合に立ち上がるように言った。
 いったんパンティを上げるように言われた百合が少し意外そうにかわいいお尻を包み込む。
 岡持は百合の尿の入ったカップを百合の目の前に持ち上げる。
「百合ちゃんのおしっこ。いい匂いだ」
 鼻をくんくんさせた岡持が言うと、百合は恥ずかしそうに目をそらした。
「僕らのエッチに乾杯」
 岡持は言ってその百合の尿をごくごくと飲み干した。
 初めて味わった女子高校生の尿よりも、ずっと女の味がした。

「ほら、上着を脱いでベッドに横になってごらん」
 青いシーツのベッドに、百合は言われるままサンダルを脱いで寝転んだ。
 その目は興奮に潤んでいる。決して嫌そうじゃなかった。
「両手を頭の上に上げて」
 そして百合の細い手首を備品庫から持ってきたガムテープで縛り、その端をベッドの柵
に結んで下ろせないようにした。
 紺色のスカートのホックを外して脱がせる。
 肌色のストッキングの中に黄色いショーツが見えてきた。
 そのままの状態で膝を立てさせて、思い切りその膝を広げさせる。
 伸びてショーツから浮いたストッキングに軽くカッターで切れ目を入れてやると、はじ
けるように裂け目が広がり色鮮やかなショーツが目に飛び込んできた。
 その中央には縦長の染みが出来ていて、百合の興奮の度合いを如実に表している。
「動かないようにね」
 それだけ言って岡持はさらにカッターナイフを操った。
 ショーツの股間の布を持ち上げ身体との間に刃を入れる。
「うう、恥ずかしい」
 百合の言葉はむしろ自分の気持ちを高めるために発せられてるのだ。
 黒いつややかな陰毛に隠された亀裂が顔をのぞかせる。
 その上端に位置するざくろ色の滑らかな豆はビックリするくらいに大きくなっていた。
 岡持はそこに顔を寄せて匂いをかいだ。
 つんとくる女の匂い。頭の中が熱くなり真っ白になる。
 舌を出して湿っているその場所をゆっくり味わう。豆を舌ではじくようにしたら、百合
の身体が釣り上げられた小魚のようにはねた。
「痛くされるのが好きだったね。いいものを用意してきたよ」
 さっき処置室から持ってきた細い注射針を百合の目に見える位置でパッケージから取り
出す。
「嫌や、やめてください」
 かすれた声が意味するのはその言葉と正反対の欲求の表れだろう。
「どこに刺して欲しい? 乳首が良いかな、それともやっぱり下の唇かな」
 百合はため息をついて顔をそむけた。
 やはり嫌そうじゃない。実は岡持のほうが加虐に慣れていないから気後れしてしまうの
だが、それを悟られてはいけない。
 むしろがんばって、その針先を百合の乳首にあてがった。
「いいかい、行くよ」
 もう一度やめてくださいと言われたら、慣れないSMプレイは省いてあたりまえの性行
為に走りたかったのだが、百合はうなずくように目をつぶった。
 こうなったらやるしかない。

 針を左の乳首の少ししたに刺して、百合の反応を見る。
 百合の眉間にしわが寄り、苦痛を感じてるのはわかるがそれを喜びに感じているのもま
た事実のようだった。
 しかし自分の方ももう我慢できないくらいになっている。
 岡持はズボンとパンツを脱ぎ捨てると、広げきった百合の谷間に埋め込んでやろうとし
た。
 しかし思い直して、後ろ向きに百合の顔にまたがる。
「ほら、これをしゃぶって」
 ペニスの赤黒い先端を百合の口に近づける。 
 百合は口をひらいて岡持のものをしゃぶり始めた。
 岡持は前かがみになり百合のぬるぬるになった泉に指を差し入れた。二本が三本になり
、それでも容易に受け入れる百合のそこはフィストファックまで出来そうなくらいだ。
 これまでに何人もの男のものを咥え込んできたのかと思うと、だんだん腹が立ってきた。
 パッケージから針をもう一本取り出す。
 その針で百合の赤く膨張したクリトリスに狙いを定める。
 でも、どうしてもそこに刺す事ができなかった。
 刺したりしたら、ぷつんといって弾けて萎んでしまいそうだったからだ。
 それに、その痛みを想像してしまう。
 クリトリスは男にとっての亀頭に当たるのだ。
 そこに針を刺される事を想像してしまう。ぞっとして勃起していたものがなえてくるほ
どだった。
「どうしたんですか、刺さないんですか」
 百合が岡持の物を口から出して聞いて来る。
「もう我慢できないよ」
 岡持はそう言って起き上がると体位を入れ換えた。
 両膝を思い切り広げた百合の上にのしかかる。
 亀頭を百合のぬるぬるの割れ目に押し付けると、百合のそれは生き物のように岡持の物
を飲み込んでいった。
 岡持が突き刺すというより、百合が腰を持ち上げて岡持の物をくわえ込んだ形だった。
 岡持もさすがに童貞ではなかったが、こんな風に積極的に女からされたのは初めてだっ
た。百合の膣が緩やかに岡持を飲み込み、さらにきつく締め上げる。
 岡持は腰を動かす余裕も無くなった。少しでも動かしたらあっという間に破裂しそうだ
ったのだ。
「う、動いたらだめだ。出ちゃうよ」
 岡持の声。慎重に百合が体を起こして岡持を下にする。
 あれっと思ったが、見ると百合の手首を縛っていたガムテープは外されていた。
 騎乗位の態勢から百合が体を倒して岡持の乳首を舐め始めた。
 これまで感じた事の無い快感が岡持の脳を刺激してくる。乳首が感じるなんて初めて知
った事だ。まるで女になったみたいだった。
 百合の腰が持ち上がって、岡持のペニスが抜かれた。
「やっぱり、岡持さんって優しいんですね。サディストになるには無理がありますよ」
 百合が岡持の顔を覗き込みながらにやりと笑った。いつもの百合の優しげな笑みとは違
った妖艶という言葉が似合う笑みだった。
「岡持さんにはどっちかというとマゾのほうが似合ってると思うな」
 言いながら百合が岡持のペニスをしごき上げる。
「あ、だめだよ。もう行きそうなんだから」
「いってもいいですよ。もっともっと気持ちよくしてあげますから」
 百合の手の動きが速くなって行く。岡持は一気に上り詰めるような快感の中で激しく射
精していた。




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