葵桜団の敗北

2-2



 快晴高校3年2組、山上達郎というのが、先日公園にいた高校生から聞いた名前
だった。さて、どうアプローチするか。
 いきなり校門で待ち伏せしても、顔がわからないから捕まえられないし。
 こういう時はやっぱり手紙作戦だよね。それも夏海を使うに限る。
 夏海は二つ返事で喫茶店を出て行くと、埠頭の倉庫裏に呼び出す手紙をもって快
晴高校に向かった。校庭にいる適当な生徒を捕まえて、手紙を渡してもらうのだ。
 あたしや郁子が手紙持っていったら、果たし状と勘違いされかねないけど、美少
女の夏海ならその心配は無い。
 かわいい子だったぜ、なんて言葉にウハウハしながら鼻の下伸ばしてやってくる
はずだ。

 午後6時の柳埠頭はまだ太陽が高くて全然夕暮れって感じじゃなかった。
 倉庫裏の物陰にスクーターを停めて、標的が現れるのを待つ。
「この緊迫感がいつも良いんですよね」
 あたしの隣で右京が鼻の穴大きくして言った。
 喧嘩にはほとんど手出ししないくせに、期待感だけは一人前なんだから。
「素直に白状しなかったら、いつものやつですよね。久しぶりに満足行くまでやれ
るかな」
 右京とは別の意味で興奮状態なのが深雪だった。
 いつものやつというのは、一章読んだ人にはわかると思うけど、当然逆レイプの
事だ。無理やりに何度でも勃起させられて、搾り取られる事は男にとって想像以上
にきつい拷問なのだった。

「深雪ってそれ以外に性生活ないの?」
 郁子がサングラスの脇から細い目で深雪を見やりながら言う。
「うちの高校はみんなまじめだから、相手になってくれる男がいないんですよ。別
にあたしがもてないわけじゃないんですよ」
 太目の身体をもじもじさせながら言ってるのは、ひょっとしたらすでに下着がヌ
ルヌルで冷たくなってるからかもしれない。
「あんまり早くから濡らしてたら、冷えて風邪ひくよ……。あ、来たみたいよ、夏
海レッツゴー」
 バイクの直管マフラーの爆音が聞こえてきたから、あたしは一人だけ葵桜団の制
服と違う黄色いワンピースをかわいく着こなした夏海の肩を押して言った。
 もちろん足元は厚底サンダルだ。これで玉潰しされたら効くだろうな。
 ぷっちんってつぶれちゃいそうだ。
 爆音の主はやっぱり一人のようだった。あたしや郁子が手紙を持って行ったとし
たら、少なくとも10台でやって来たはずだ。一台で来たという事は当然夏海の事
を聞いてるという事で、エッチな期待で胸を膨らませてるって事だ。
 もちろんあそこもね。

 隠れてるあたし達から5メートルほど離れて立つ夏海の横に、その爆音元のバイ
クは颯爽とやってきて止まった。
 当然のようにノーヘルの彼は、エンジンも止めずに、乗れよって叫んだ。
 夏海が困った表情で首を振る。
 夏海を乗っけてさっさとホテルにでも乗り付けるつもりだった彼は、どこで行き
違いがあるのかと、口を尖らせてしぶしぶエンジンを止めた。
「なんだよ。俺を呼び出したのおまえだろ。かわいがってやるから乗れよ」
 彼は改めて普通の声で言った。前髪をかきあげるシグサが意識してるってバレバ
レだ。爆音の止んだ埠頭は、遠くで汽笛の音が微かに聞こえるだけの静かな倉庫街
に戻った。

「その前に聞きたいことがあるの」
 夏海が思いつめた感じでそう言う。なかなかの演技力だ。
「ちぇ、何だよ聞きたい事って」
 彼はバイクを降りて夏海の横に立った。よく見ると背が高くがっしりした体つき
のなかなかの2枚目だ。こりゃ簡単に聞き出せない方が楽しくなりそうだ。
「実はあたしの弟……ホモなのよ」
 なんだ? いきなりそれはないんじゃないのかな。相手が引く表情になるのがすぐ
にわかった。
「それで、先日……大崎公園でホモ狩りに襲われちゃって、怪我したのよ」
 まあ夏海の考えはわかるけど、そんな事で話してくれるかな、でもこっちとして
は夏海が失敗する方が楽しめるからいいんだけど。
「怪我させられた弟の敵討ちって言うか、仕返しをしてやりたいって考えていたら、
あなたがホモ狩りのグループの事を知ってるらしいって聞いたから……」
 黙ってる彼の前で、夏海は切実な言葉を続ける。
「冗談じゃないよ。俺知らないぜ、そんなの」
 彼の言葉は予想通りだ。さてそれからどうするの?夏海!。
「もちろんただで教えてなんていわないよ。教えてくれたらあたしを好きにしてい
いよ」
 こっちからじゃ見えないけど、男を見上げる夏海の目つきは男にとっては最高に
ぐっと来るものだったはずだ。彼の喉仏がゆっくり上下するのがよく見えた。

「そりゃ知ってたら教えてあげるけど、知らないもんなあ。でも知っていそうなや
つに聞いてやるから、まあ今日のところはいい事しようよ。ほら後ろ乗って」
 彼は夏海の左腕をつかむと、強引に抱き寄せた。反対側の手が早くも夏海の胸を
触りにいっている。夏海のおわんみたいなおっぱいが男の強引な愛撫を受けてゆが
んでるのがチラリと見えた。
 ちぇっ、と舌打ちしたのは夏海だ。
 夏海は身体をくるりと返すと、胸をもんでいた男の腕を逆に取って言った。
「あたしのお願いをすんなり聞いてくれなかった償いは、ちょっとばかりきつくな
るわよ。最初は少し眠ってもらおうかな」
 腕の痛みで前かがみになった男の後ろに夏海は回りこむと、白蛇のようにしなや
かな右腕を彼の首に回した。
 そのまま裸締めだ。
 ぐえっ、と舌を出した彼が痙攣しながらくずおれるのに、ほんの十秒もかからな
かった。ぴくぴく震える男を腕の中に感じながら、微笑む夏海はいつにも増してぞ
くりと来る色気を発散させていた。

 中ががらんどうに近い倉庫を、鍵を壊して確保していた。
 倉庫の中は昼間の熱気が残っていて暑かったけど、裸になることを考えればちょ
うどいいくらいだ。
 そこに5人がかりで彼を連れ込むと、彼のズボンと下着を剥ぎ取る。
 黒々とした陰毛に隠れるようにして生白いペニスがこんにちはをしていた。
「美味しそうなPですね。あたしからいただいてもよろしいでしょうか」
 深雪が早速そのPをニギニギしながら言う。
「その前に起こさないといけないだろ。夏海お願いね」
 すでに上着を脱いで、パンツも脱ごうかとしてる深雪を制して郁子が言った。
 高い所にある明り取りの隙間からわずかな光が差すだけの倉庫の中は薄暗い。
 その中で一人だけ浮き立つような黄色のワンピースを着た夏海が、一つ頷くと男
の背中を膝あてして気付けをした。
 微かに身じろぎしたかと思ったら、彼はぱちりと眼を開いた。
「え、なんで?どうなってるんだ」
 彼はすばやく起きようとしたけど、胸の上にでかいお尻の深雪が座り込んでるか
ら起きれずにもがいてる。
「素直に白状すれば良かったのにね」
 夏海が彼を見下ろして軽くあばらにキックした。
「おい、何だよ。離せよ、おまえら俺を誰だと思ってるんだ」
 いきがっても、ズボンを下ろされて下半身丸出しでは何とも滑稽だ。
 下半身が涼しくなってるのに、やっと彼は気付いてあっと声をあげた。
「何なんだおまえら。俺をどうするつもりだ」
 5人の(本当は4人なんだけど)女達に囲まれて、下半身裸にされて押さえつけ
られてる状況に、彼も焦りだしたみたい。
 不良と言っても暴走族に入るほどの根性座った不良じゃなさそうだ。すでに涙目
になっている。



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