HOTH PRESS 
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復刻「ホスプレス創刊号」   
SWノベルで野田氏が誤訳
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 野田昌宏氏、といえば日本SF界でも大御所の存在であると同時にSWノベルの日本語訳をされていることでも有名だ。

 野田氏は、キャプテン・フューチャー・シリーズなどのスペース・オペラ翻訳を手掛けて来た方でもあるので、まさか彼が誤訳、などとお思いになるかも知れない。それでは、その証拠をお見せしよう。

 
引用@ 
 ルークは首を振った。
 「ここを立ち去った者が何者かはあとにして、彼らは、バンサ二頭を並べてここから立ち去っておる。だが、バンサで進むとき、砂人どもは順々に、つまり一列になって進むものだ。遠くから見られたときに、その数を多く見せるためにな」


引用A
  Luke shock his head.  "Whoever left here was riding Banthas side by side.  Sandpeople always ride one Bantha behind another, single file, to hide their strength from any distant observers."


引用B
 足跡は二列、サンド・ピープルは人数をかくすために必ず一列で移動する。
                     (スター・ウォーズ、日本語版)

 上の引用@は、野田昌宏訳、角川書店刊「スター・ウォーズ」(ハード・カバー)P112、10〜13行目(文庫の場合はP136、12〜15行目)からの抜粋である。その前後を説明すると、ジャワたちがストーム・トルーパーにおそわれたあとを、ルークたちが通りかかったシーンでのオビワンのセリフである。ここで問題になるのは、引用A(米国Ballantin社刊の “STAR WARS” P185、下から6行目より)の英文の最後の部分 “to hide … distant observers.”の日本語訳である。ひの部分を野田氏は、引用@の傍線部のように「遠くから見られたときに、その数を多く見せるため」と、訳しておられるが、この訳はどう見ても誤りである。というのは、むろん文法上の誤りではなく意味上の誤り−すなわち意訳のしすぎとでもいおうか。まず、この英文を直訳すると、おおよそ「遠くの敵からその人数をかくすため」と、なる。これは先日公開されたSW日本語版のセリフ(引用B)とほぼ同じといえる。つまり、ここの部分は本来、数を多く見せるためにではなく、数をかくすためなのである。なぜ数を多く見せるためではいけないのか。それは、以下の通りである。まず、ここで敵がタスケンたちを目撃する場合を2通り考えてみよう。

 1つは、このルークたちのようにその通った足跡を目撃する場合である。バンサたちは、1列になって進むのだからその足跡も当然一列(図1)。よってこれは頭数をかくすことにはなるが、多く見せることにはならない。かえって少なく見せることになりかねない。人数を多く見せるためなら、横1列または2列になって歩くのが有効ではないだろうか(図2)。
2つ目は、彼らが実際に歩行している所を目撃される場合である。この時、図3のAの方向から目撃された場合、バンサは重なって1つとなり人数をかくすことになる。そして、B、Cの方向からの場合にはその実数はわかってしまう。つまり、どのような場合でも縦1列で歩行することによって、その数を多く見せることは不可能である。以上のことから、「その数を多く見せるために」という野田氏の訳は誤りといえる。
 非常に細かいことのように思われるだろうが、この一文はタスケンの性質を知る上で非常に重要なポイントなのだ。
 
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          図3