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ジェダイちょんまげは、つけ毛だった

 オビ=ワン・ケノビは、小さなちょんまげを髪からのばしていた。ラスト・シーンのフィナーレで、ジェダイの修行が許可されたアナキンは、髪を短く切り、この細いちょんまげをつけていた。
 ジェダイのハダワン(弟子)がつけるよう、義務づけられているのかはわからないが、ジェダイに関係した儀礼であるのは、間違いないだろう。これを仮に、「ジェダイちょんまげ」と呼ばせてもらう。
 この「ジェダイちょんまげ」は、自毛(自分の毛)をその部分だけのばしているように見えるが、実はつけ毛であることが今回判明した。
 その証拠は、オビ=ワンのジェダイちょんまげの位置の変化である。ポッド・レースでアナキンが優勝し、ワトーからヌビアンの部品をせしめたクワイ=ガンは、部品をヌビアンに持ち帰る。その時、クワイ=ガンとオビ=ワンのやりとりがある。オビ=ワンのジェダイちょんまげの位置は、それまではずっと右耳の後ろだったのに、このシーンではちょんまげは左耳の後ろから出ている。生えぎわがきちんと映し出されるので、右耳の後ろについてたちょんまげが、単に左肩側に垂れているのではないことがわかる。また、オビ=ワン(ユアン・マクレガー)には、右頬に小さなホクロがあり、このシーンでも右頬にホクロがあることから、フィルムの裏焼きという技術的な問題でないことも明らかである。

 つまり、ある時は右耳の後から、そしてある時は左耳の後から伸びているのであるから、それはつけ毛としか考えられない。
 もう一つの証拠は、フィナーレのシーンである。ジェダイの寺院に入り修行することが決まったアナキンは、剃髪したこざっぱりした髪型となり、右耳の後からジェダイちょんまげがのびている(図2、3)。

 服装も、ベルトや皮のブーツがオビ=ワンと全く同じであり、ジェダイりの装束に身を包んでいる。
 ここで注意しなければ行けないのは、剃髪前のアナキンの髪は、比較的短く、。肩に髪の毛がかかってないということである(図3)。しかし、剃髪後のアナキン(図4)のジェダイちょんまげは、明らかに肩にかかっている。

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図1 オビ=ワンの
ジェダイちょんまげ


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図2 剃髪したアナキン
ジェダイちょんまげが

見られる

 短期間で、ここまで髪がのびるということは考えられないので、これはつけ毛ということになるだろう。
 やはりジェダイちょんまげは、つげ毛だった。
 当然のことながら、ジェダイちょんまげは、日本の時代(ジダイ)劇のちょんまげを意識したものであろう。
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  3 剃髪前のアナキン
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図4 剃髪後のアナキン

 さて、このジェダイちょんまげの意味は、何かということになる。
 図2のフィナーレのシーンのオビ=ワンには、ジェダイちょんまげが見られない。一瞬しかうつらないのでわかりずらいが、何回見てもジェダイちょんまげはつけていないようである。
 オビ=ワンは、クワイ=ガンのパダワン(弟子)から、アナキンのマスター(師匠)になり、ジェダイちょんまげはなくなった。アナキンはオビ=ワンのパダワンになり、ジェダイちょんまげをつけた。つまり、パダワン(弟子)の印、私はまだ修行中ですということを、このジェダイちょんまげは象徴していると考えられる。

 

ジェダイちょんまげが示すオビ=ワンの動揺
 クワイ=ガンがダース・モールに殺された瞬間、オビワンは絶叫する。"No...."
このときのジェダイちょんまげの位置は肩の後ろである。しかし、次のカットでは、ちょんまげは、肩の前に来ている。あまりにも、大きなアクションで"No...."と叫んだだめであろうか。そして、次のカットでは、ちょんまげは、肩の前に来ている。
         後 ⇒ 前 ⇒ 後
と、次々と変わるちょんまげの位置。これは、オビ=ワンの精神的動揺があまりにも大きかったためであろう。

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 「上には上がいる」は、何を意味するか?
 グンガン・シティから、ナブーへ向かうために、クワイ=ガンたちは、ボス・ナスからボンゴという潜水艇をもらう。ナブーへの一番の近道は、惑星のコア(核)を通ることだと教えられるが、コアは危険極まりない場所であった。
 ボンゴは、巨大な魚、オピー・シー・キラーに噛み付かれる。もう少しでボンゴが破壊しそうになるが、その瞬間オピー・シー・キラーは、さらに巨大なサンド・アクア・モンスターに食べられてしまう。
 この時、クワイ=ガンは
 「上には上がいる。(There's always a bigger fish.)」  と言う。

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ボンゴ
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オピー・シー・キラー
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サンド・アクア・
モンスター
 
 このシーンは、これで良いのだが、その後また全く同じことが繰り返される。ボンゴは竜のような生物、コロ・クロー・フィッシュに襲われる。しかしまちもや、サンド・アクア・モンスターがやってきて、ボンゴは危機を脱する。「上には上がいる」のテーマが二回も繰り返される。反復の映画的意味は、強調である。
 なぜ、「上には上がいる」のテーマが、繰り返されなくてはいけないのか。
 
 おそらく、これは「エピソード2」、「エピソード3」への伏線かもしれない。しかし、「ファントム・メナス」の中に、「上には上がいる」を暗示させる力関係が、存在するではないか。クライマックスの、ジェダイ対シスの対決シーンである。
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ボンゴ
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コロ・クロー・
フィツシュ
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サンド・アクア・
モンスター

 クワイ=ガンは、ダース・モールの一撃によって、腹を刺されて死ぬ。しかし、そのダース・モールは、オビ=ワンに胴体を真っ二つに切られて死んだ(おそらく)。

 まさに、「上には上がいる。」 
というセリフがピッタリとする、三つ巴の戦いであった。

 「ジェダイは、次に起きることがわかる。」と、クワイ=ガンは言っている。ひょっとすると、クワイ=ガンは、自らの死を感じていたのではないか。おそらく、本人は気づいていなかったかもしれないがもジェダイの本能は察知していた。
 なぜなら、他のシーンでも、クワイは自らの死を暗示させる言葉を言っている。
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クワイ=ガン
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ダース・モール
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オビ=ワン

 アナキンの家で、クワイたちが一緒に昼食を食べるシーンである
。次のやりとりである。
アナキン
クワイ
アナキン 
クワイ 
「ライト・セーバーを見たよ。セーバーを持っているのジェダイだけだ。」
「ジェダイを殺して盗んだのかもしれんぞ。」
ジェダイを殺せるものはいない。
「そうだといいんだがな。」

 ジェダイを殺せるものはいない。」とアナキンに言われ、「そうだといいんだがな」と答えるクワイ=ガンの表情は、明らかに陰りがある。このセリフは、クワイ=ガンが、ダース・モールに殺されることを暗示しているのだ。
 聞いていて妙に悲しくなるセリフである。


   番狂わせが起きた理由
 熟練したジェダイであるクワイ=ガンが、ダース・モールに敗れ、ジェダイとしてはまだ未熟なオビ=ワンが、そのダース・モールを倒した。これは、一種の番狂わせである。しかし、その番狂わせは、映画の中で十分に説明されていた。
 まず、クワイ=ガンがダース・モールに負けた理由。それは、体力的な衰えである。

ヌビアンが発射準備をする中、クワイ=ガンはダース・モールの襲撃を受ける。わずか一分弱の短い戦闘にもかかわらず、ヌビアンに飛び乗ったクワイは、肩で息をしている。わずか、これだけ短時間の戦いで息が切れてしまっているのだから、長時間に及ぶ戦いに勝てっこない。案の定、ナブーでのダース・モールの戦いは長時間に及んでいた。そして、戦闘中にもクワイ=ガンの息切れは観察される。
 そして、ヌビアンに飛び乗ったクワイ=ガンに、アナキンの「大丈夫?("Are you all right?")」というセリフに対して、クワイは"I think so."と答える。「大丈夫だと思う。」という、情けない答えである。熟練したジェダイ騎士のセリフとしてはあのりにも頼りない。
 ダース・モールとの対決シーン。エネルギー・シールドが扉のようになり、クワイとオビ=ワンは分断される。そして、クワイもダース・モールと分断される。その時、クワイは何をしていたか。床に座って精神統一をしていた。一見すると精神統一であるが、このときもかなり息が苦しそうである。もうこの時点で、クワイの体力は限界にきていたのではないのか。立っていることすらできないクワイは、座って休むしかなかったのである。
 体力が限界にきていたクワイは一瞬の隙をつかれ、ダース・モールに殺されてしまう。しかし、そのダース・モールは、オビ=ワンに殺される。その原因は油断である。通路から落ちてしまったオビ=ワンは、宙ずり状態になり、武器であるライト・セーバーは、下に落とされてしまう。オビ=ワンの絶対的な危機。しかし、この瞬間、ダース・モールは油断した。一瞬の隙をつき、飛びあがり、クワイのセーバーを手にしたオビ=ワンは、ダース・モールを真っ二つに切り捨てる。ダース・シディアスから太鼓判をもらった凄腕であるダース・モールが、こんなにあっさり殺されるのはおかしいという批判もある。しかし、それは誤りである。ダース・モールの油断。それは伏線として既に、描かれていた。
 タトウィーンでのダース・モールは、ライトセーバーを片刃しか出しておらず、クワイ=ガンらと同じ刀のようにセーバーを使っていた(図1)。そして、ナブーでは、両刃を出してなぎなた状にして戦っていた(図2)。どちらの方が攻撃力が高かったか。戦いを見れば分かるように、なぎなた状のセーバーの方が、片刃セーバーよりも強力なようだ。ではなぜ、最初にクワイ=ガンと戦うときは、片刃しか出さなかったのか。そこには、明らかに油断があった。シディアスのもと、徹底的に修行を積んでいたダース・モールの実力は相当なものであっただろう。彼にとって、老齢のクワイ=ガンを倒すことなどたやすいと、甘く見ていたのではないのか。ナブーで二人のジェダイを前にして、初めて本気になったから、両刃セーバーを使ったのだろう。
 

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図1
タトウィーンでのダース・モール
片刃しか出していない

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図2
ナブーでのダース・モール
両刃を出してなぎなた状にしている

 ダース・モールは、武芸としての実力は、極めて高いものであった。しかし、おそらくジェダイ騎士と戦うという実践経験が不足していたため、精神的に十分成長していなかったのだろう。モールは実力がありすぎたゆえに油断し、自滅したのである。
 オビ=ワンがダース・モールに勝った理由は、ダース・モールに油断があったことだけか。いや、もう一つある(No, there is another.)。
 クワイ=ガンがダース・モールに殺された瞬間、オビ=ワンは絶叫する。"No."

 そして、次の瞬間から、オビ=ワンは狂ったように激しい攻撃を、ダース・モールに浴びせかける。クワイ=ガンには、明らかに「怒り」が見られる。「怒り」は、ダーク・サイドにつながる感情である。師匠の死に、怒りを隠せなかった、オビ=ワンはまだ未熟であった。しかし、宙ずり状態になり、自分のライスト・セーバーを失い、極限状態に立たされて、初めて冷静さを取り戻す。「怒り」をコントロールすることを覚えたオビ=ワンは、この瞬間に成長した。そして、油断しきったダース・モールを真っ二つに切り捨てることが可能になったのである。

 

心眼を使ったオビ=ワン
 宙づり状態になったオビ=ワン(図3)は、かろうじてでっぱりにぶらさがって、命をつなげた。ダース・モールは、オビ=ワンのセイバーを蹴飛ばして、セイバーははるかかなたに落下していく。セイパーを床にこすって、オビ=ワンを威嚇するダース・モール。次の瞬間、オビ=ワンは冷静さを取り戻し、クワイ=ガンのセイバーが残されていたことに気づく。そして、クワイ=ガンのセイバーを見て、フォースの念動によって自分の方に引き寄せる。ダース・モールのところに飛び上がり、居合抜きのように、ダース・モールを切り伏せるのだ。
 オビ=ワンは、クワイ=ガンのセイバーを見た。映画を見ていると、編集の関係からそう見える。オビ=ワンがセイバーの方を振り向いたカットの次に、クワイ=ガンのセイバーのアップがつながっているのだから。しかし、下の図3の写真をよく見て欲しい。オビ=ワンは、床の高さより、1メートル近く下にいる。したがって、床に転がっていた、クワイ=ガンのセイバーを直接肉眼で見ることはできなかったはずだ。しかし、オビ=ワンは、振り向いて、セイバーを見たようである。つまり、心眼で見たのだ。直接、視野に入らないものまでも見通すことができた。この時点で、オビ=ワンは怒りから開放され、完全に冷静さを取り戻していたということだろう。そうでなければ、直接目に入らないセイバーに、思いが及ぶはずがなかっただろう。
 ダース・モールを倒す前の瞬間、オビ=ワンは一段高いジェダイ騎士に成長し、心眼も使えるようになっていた。
 『ファントム・メナス』でのオビ=ワンは、「未熟」さと「成熟」さの両方の側面を持ったジェダイ騎士として登場していた。この心眼のシーンは、オビ=ワンの「成熟」を一瞬にして表現しているのである。

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図3 宙づりのオビ=ワン