HOTH PRESS 
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  「ファントム・メナス」には、極めて多くの情報が詰め込まれていた。それは、「エピソード2」「エピソード3」への伏線と説明であるとともに、旧三部作で張られていた伏線が、ここに収束している。そうした膨大な情報を整理したうえで、 「ファントム・メナス」を楽しみたい。

 ウォルドとグリードをめぐる二、三の問題
 「ファントム・メナス」の公開前の、映像に写っていたローディアン(種属名)の少年(役名ウォルド)。このウォルドがグリードではないかという噂が流れた。グリードとは、NHのカンティーナのシーンで、ジャバ・ザ・ハットの賞金首となったハン・ソロを殺そうとするが、返り討ちにあいハン・ソロに殺されてしまうエイリアンである。私もウォルドがグリードではないか、当初予想していたが、実際はその想像を大きく超える、複雑なドラマが展開していた。
 しかし、映画「ファントム・メナス」では、その絶妙な描写がカットされた。
 まず、注意しなければいけないセリフは、ポッド・レースの前日のクワイ=ゴンとアナキンの母シミ・スカイウォーカーとの会話の中に出てくる。クワイ=ゴンは「息子さんを誇るといい。彼は何の報酬も考えていない。」と言うと、シミは「あの子は欲というものを知りません。あの子には・・・」と答える(訳は「スクリーン・プレイ」から)。
 このシミのセリフは、英語では
 "He knows nothing of greed." と言っている。
 グリードとは「貪欲、欲張り」という意味である。字幕では「あの子は無欲です。」(私の記憶なので不確かだが、無欲という言葉を使っていたのは間違いない。)小説では、「ありの子は貪欲ではありません。」と訳されている。直訳的な小説の訳が、原義を最も良く伝えているのではないか。しかし、このシーンを注意して聞くと、何か不自然である。というのは「あの子の心は純粋です。」とか「あの子はまっすぐな子です。」というセリフなら、前後のつながりからわかるのだが、いきなり「貪欲(グリード)ではない」という言いまわしは、極端なのである。これは、敢えて「グリード」という言葉を、使うべくして使ったとしか思えない。
 そして、スター・ウォーズ・ユニバースで「グリード」という言葉を聞けば、それはハン・ソロに殺されたローディアンのグリードを指すのが当然と思われる。
 そのような、嫌疑を持って映画を見ていくが、ウォルドのセリフは何箇所かあるのと、ポットジ・レースに優勝して、アナキンと抱き合うウォルドのシーンくらいしか、ローディアンは登場しておらず、肩透かしをくらう。しかし、小説と「スクリーン・プレイ」を読むと、そこには興味深いエピソードが書かれている。

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図1 ウォルド
 アナキンの友人である、ローディアンの少年

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図2 グリード
ハン・ソロを殺そうとするが、返り討ちに会う(NHのカンティーナのシーン)。

 まずは、スクリーン・プレイからの引用を読んでいただきたい。ポッド・レースにアナキンが優勝した後のシーンである。


【EXT タトウィーンの町中、奴隷居住区、昼】
 アナキンとグリードが地面を転がり、取っ組み合いの喧嘩をしている。十数人の子供たちが2人を囲んで立ち、はやし立てている。不意に、長い影が少年2人の上にかかる。2人は喧嘩を中断して、見上げる。クワイ=ゴンが2人の上にそびえ立ち、キットスターはクワイ=ゴンと並んでいる。

クワイ=ゴン 「どうした?」
アナキン   「僕がズルしたって言うんだ」
クワイ=ゴン 「ズルをしたのか?」
アナキン   「してない !」
クワイ=ゴン 「それでも彼がズルをしたと思うか?」
グリード   「ああ」
クワイ=ゴン 「いいか、アニー。君は真実を知っている・…彼の意見を大目に見るんだ。喧嘩をしても何も解決しない」

クワイ=ゴンが通りを歩きだすと、アナキンがついていく。グリードは、成り行きをずっと見ていたウォルドのほうにぶらぷらと近寄る。

ウォルド 「やめとけ、グリード、さもないとひどい目にあうぞ」 
              「エピソード1 スクリーン・プレイ(ソニー・マガジンズ)」 ページ162―165

 
 小説(ソニー・マガジンズ)を持っている人は、ページ184―185を読んでいただきたい。
 アナキンが優勝したのは、ズルをしたと言いがかりをつけるグリード。それに腹を立てたアナキンは、怒りに身を任せ、グリードを殴りつける。怒りに身を任せることが、ダーク・サイドの始まりであることは、ESBのダース・ベイダーとルークの対決シーンからわかる。

 「ホス・プレス」編集部では、このカットされたアナキンの喧嘩シーンを、秘密裏に入手した。

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 エピソード1から3では、アナキンがいかにダース・ベーダーになるのか、その過程が描かれるていくだろう。純真無垢なアナキン少年が、いかにダーク・サイドに染まって行くかという物語が展開するはずだが、その悪の発露がこのアナキンがグリードを殴るというエピソードである。
 この瞬間、アナキンの心に貪欲な一面が生まれた。
 シミの"He knows nothing of greed."という言葉に、アナキンはもはやあてはまらない。 
 "He knew greed."とでも言おうか。 
  アナキンの心にグリードを呼び起こしたキャラクターがグリードであった。
 そして、以上のシーンは実際に撮影されたが、本編ではカットされてしまった。もったいない。
 しかし、このシーンがカットされたのには、極めて重要な意義があった。その隠された理由については、後日別なページで紹介する。

 グリードとウォルドが、別なキャラクターであることは、「スクリーン・プレイ」、「小説」の両方に共通している。上の、カットされた映像でも、右端にアナキンの喧嘩を人事のように眺めるウォルドが映っている。
 結局、「ファントム・メナス」では、グリードは登場することはなかったが、しかし、NHのビッグスとルークのシーンのように、「スクリーン・プレイ」、「小説」の両方描かれていることから、スター・ウォーズ・ユニバースに実際に起こった裏エピソードとして理解して良いのではないだろうか。
 「ファントム・メナス」をより深く、おもしろく見るためには重要なエピソードと考えられる。
                                           (1999年6月14日初掲載)
                                           (1999年7月31日追加)

 

グリードはダーク・フォースを象徴する

 「ファントム・メナス」では、グリードがダーク・フォース(フォースのダーク・サイド)を象徴する言葉として使われている可能性がある。「ファントム・メナス」には、上記の "He knows nothing of greed."他にも、数カ所にgreedという言葉が登場する。

 例えば、冒頭のクレジットである。
 このクレジットには「the greedy Trade Federationt(貪欲な通商連合)」という言葉が登場している。ヌート・ガンレイら通商連合の奴らは、確かに貪欲で意地汚なかった。しかし、通商連合の黒幕は、シスの暗黒卿ダーク・シディアスであった。「グリード」をダーク・フォースを意味する言葉と理解すれば、この冒頭のクレジットに、実は物語りの秘密が暗示されていたことになり興味深い。
 その視点から、シミの言葉をもう一度、もう一度見返してみよう。

  "He knows nothing of greed." 

 直訳すれば、「彼は無欲です。」となるが、「グリード」がダーク・フォースを暗示するとすれば゜、

  "He knows nothing of the dark side ." 
 彼は、フォースの暗黒面を知りません。
 
 このよう意味になる。そして、これは「今は」、という言葉を補うと、余計わかりやすい。
 「今は、アナキンはフォースの暗黒面はしりません。」 つまり、これから暗黒面を知るかもしれない、
シスの暗黒卿ダース・ベーダーになるかもしれないという暗示が、このセリフには含まれているのではないか。
 おそらく、「エピソード2」以降にも、「グリード」という言葉は登場するだろう。それによって、我々の
「グリードはダーク・フォース(フォースのダーク・サイド)を象徴する言葉」
という仮説は証明されるであろう。
                                               (1999年7月31日更新)