語る会モニター報告


      オスプレイ問題 テレビはどう伝えているか
       96日緊急着陸事件から101日普天間配備まで~


                 20121014  放送を語る会モニターグループ



 20126月、米国防総省が、海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間基地配備を正式発表して以来、テレビニュースでもこの問題が断続的に報じられてきた。オスプレイは、アメリカでも「ウィドー・メーカー(未亡人造成機)」の異名をとるほど事故が多い欠陥機と言われ、普天間基地配備には国内で強い反発がある。
 放送を語る会では、96日~101日オスプレイ報道の集中モニターに取り組んだ。報告は、この期間の大きな事件や動きを基に、「96日緊急着陸事件・墜落事故」「99日沖縄県民大会」「917日パネッタ来日・日米実務者協議」「921日岩国初飛行」「101日普天間配備」の5項目、それに「番外編」をつけてまとめた。
 今後も、オスプレイが普天間基地に配備された後、訓練が開始されれば、沖縄県民・国民の反発もさらに強まり、事態は引き続き動いてゆくと思われるが、とりあえず現時点で中間報告としてモニター活動のまとめを提出する。
 モニター対象にしたニュース番組は、いつものように一日のうごきがまとめて報じられる夜の各局ニュース番組。首都圏のチャンネル順に、NHK「ニュース7」「ニュースウオッチ9」、日本テレビ「NEWS ZERO」、テレビ朝日「報道ステーション」TBS「NEWS23クロス」、テレビ東京「ニュースアンサー」、フジテレビ「NEWS JAPAN」の7番組が主。番組ごとに担当者を決めて、「放送内容」と「担当者のコメント」の2つの項目からなる「モニター票」を作成した。以下の報告は、その「モニター票」をもとにまとめた。したがって、個々の番組の批評、評価は個人的なレベルのもので、その内容は必ずしも放送を語る会の統一的な見解というわけではないが、報道の一定の傾向が明らかになったと考える。
 また、私たちが取り組んだモニター活動は、6月以降続いたオスプレイ報道のうち9月6日から101日まで、限定された極めてわずかの期間に過ぎない。その限界を承知の上で、テレビのオスプレイ報道をめぐり気付いたいくつかの側面を指摘したい。

1.「安保タブー」はないか 
 米軍のオスプレイ配備正式通告を受けて、629日森本防衛相は「(配備の是非について)安保条約上、日本には権限がない」と表明、79日の衆議院予算委員会でも「安保条約の趣旨に従うもの」と答弁した。 オスプレイ普天間配備直後の102日沖縄県議会では、玉城義和県議が「知事は、県益において日米安保の限界性に踏み込み、全基地閉鎖を政府に求めるべきだ」と迫った。
 オスプレイ問題の背後に安保条約があることは、ここで改めて指摘するまでもない。
 テレビでは、各ニュースが9月9日の沖縄県民大会で、「オスプレイ配備撤回、普天間基地の閉鎖・撤去」が決議されたと伝えた。13日には、大会実行委員が森本防衛相・玄葉外相に決議文を手渡し、席上
那覇市長が「もし沖縄で事故が起きれば、県民の意思は米軍基地の全面閉鎖に向かう」と発言した(NHK「ニュース7」)。21日には、岩国の試験飛行を受けて、配備されればすぐ上をオスプレイが飛び回ることになる沖縄志真志小学校長が「基地があるゆえの事故。基地撤去を要求する」とコメントした(テレビ朝日「報道ステーション」)。
 安保条約をめぐって住民の間に賛否両論が存在する地方自治体首長や地域住民が、慎重に「安保条約」には直接言及しないで「基地撤去」を求めることは地域事情として理解できる。しかし、メディアが「安保条約」への言及を避ける必要はあるだろうか。むしろ問題の根源ともいえる「安保条約」を、今日の状況と時代を踏まえて検証することがメディアに求められているのではないだろうか。
 ところが、期間中、モニターした97番組の中で「安保条約」の用語が使われたのは、わずか一度だった(9/21NTVnews every」)。
 解説に当たっても周到に「安保条約」の用語使用あるいは直接の言及を避けているように
思えてならない。一例をあげれば「日米関係、貿易や経済はかなり日本も言いたいことを言うが、どうしても安全保障はアメリカのペースになる。ただこれ単にオスプレイの安全の問題じゃなくて、沖縄に基地が集中していること、普天間という住宅密集地にあるということも問題」(9/17テレビ朝日「報道ステーション」コメンテーター)。
 テレビに「安保タブー」はないか?
 安保条約」をタブー視して議論や検証を避けている限り、人々のオスプレイ配備や基地の存在をめぐる議論で、未来への選択肢を狭め、根本的解決の道筋が見えてこないのではないか。

2.「抑止力神話」を疑わなくてよいか
 オスプレイ初飛行に関する大臣インタビューで、森本防衛大臣は「アメリカの抑止力、日本の安全にとって非常に重要な飛行機なので、それが運用制限とか機能を制約されることがあっては困る」「アメリカが抑止力を格段に上げることは日本の安全にとっても非常に重要な意味をもっている。そこを理解して、この飛行機を受け止めて頂きたい」と、繰り返し「米軍の抑止力」を強調した(9/21NTVnews every」)。聞き手は、沖縄で日米合意が反古にされた歴史を突き付けて鋭く迫ったが、「米軍の抑止力」までは踏み込んだ質問をしなかった。
 同じくオスプレイ初飛行をめぐり田中秀征福山大学客員教授が「原発再稼動と同じ。必要性が先にある。防衛大臣は安全保障上の抑止力という必要性を強調した。しかし、必要性と安全性の議論をごっちゃにしてはいけない」と、「米軍の抑止力」を自明の前提にコメントした。これを受けたキャスターは、普天間配備は批判したが、こちらも「米軍の抑止力」は当然のことのように素通りした(9/21テレビ朝日「報道ステーション」)。
 しかし、来日したパネッタ米国防長官は17日記者会見で、尖閣への安保条約適用は「義務を守る」としつつ、「主権の対立では特定の立場はとらない」と述べた。
 メディアは、「米軍の抑止力」を現実に照らして検証しなくてよいのか?
 今、メディアは「米軍の抑止力」を当然のこととして神話視していないか?原発報道における「安全神話」と同様に。

3.調査報道・取材力の不足
 これまでのモニター活動でも、繰り返し指摘してきたが、今回も調査報道・取材力が不足していることを感じる。
 例えば、オスプレイ事故報告書報道の際の「メディアとして独自にその報告書を検証する姿勢が見られない」(9/11NHK「ニュースウォッチ9」)、「事実報道だけでなく、『本格的運用の遅れる』背景にあるオスプレイの安全性、欠陥などの解説もするべきと感じた」(9/13NTV「NEWS ZERO」)などのモニター報告にある指摘を挙げるまでもないだろう。

 また、オスプレイの飛行は岩国、沖縄に限ったことではなく、日本各地に訓練ルートが設定され今後飛行が予想される。関係する多くの地方自治体や市民団体が反対決議しているが、今回のモニター期間中これらの住民のうごきはほとんど伝えられなかった。こうした草の根のうごきはもっと取り上げるべきではないかと思う。
 調査報道・取材力の不足が、「政府発表の事実のみを報道。実態は、政府広報の垂れ流し」(9/17フジ「NEWS JAPAN」)を招き、「客観報道」「事実報道」=政府広報に堕してしまう危険をメディアは常に意識してほしい。

101日配備の日―普天間からの報告― 
 
普天間配備の前日から現地に入り、岩国からのオスプレイ飛来と住民の抗議行動を見守っていた放送を語る会会員からは、次のような報告が寄せられた。この現地報告を念頭に、101日のモニター報告を読むとマスメディアの伝え方がより鮮明に見えてくる。参考までに掲げて結びとしたい。
 「各局の報道を見て気になったのは、以下の2点が巧みに排除されていたことです。
1.   市民の力で勝ち取った普天間基地全ゲート封鎖
2.   配備前日に強行された機動隊、警官250人を動員しての強制排除
 普天間基地大山ゲートに座り込む住民の間では、オスプレイ配備の前日930日、『今日はNHKさんが来ているから、ここで(市民と車両の)排除がある』とささやかれていました。事実、午後1時前にそれは決行されました。午後7時過ぎには,野嵩ゲートでも強制排除が始まりました。
 事の一部始終をNHKは終日、複数のカメラで記録していました。しかし、その日の「ニュース7」、翌朝の「おはよう日本」でオスプレイ配備を扱った際、強制排除の様子は1カットも放送されませんでした。住民の一人は、『NHK(沖縄局)の若い記者さんたちはかわいそうだ。丁寧に取材しても全部落とされるんだから』と話していました。NHKにとって、オスプレイ配備の中継・取材体制を確定するため、基地封鎖の解除に関わる情報は重要だったに違いありません。特別なルートで強制排除の情報を事前に入手し、その代わり政府や警察にとって不都合な行為は放送しない。そんな“大人の判断”をうかがわせるに十分な現場でした」

【モニター内容の詳細】

96日緊急着陸事件・墜落事故>

 モニターを開始したこの時期(968日)、沖縄では県民大会成功に向けて「オール沖縄」と言われるほど全県挙げての取り組みとなり、多くの市民団体が街頭宣伝などを繰りひろげたが、ニュースで大会準備を取り上げたのはNTV「news every」のみ。着任したばかりのマグルビー在沖縄総領事が普天間基地について、「特に危険という認識はない」という暴言が飛び出し、市民団体が抗議文を提出、抗議行動を展開したが、これも報じられることはなかった。
 6日、米ノースカロライナ州でオスプレイが緊急着陸する事件が起こったが、これを伝えたのも、わずかに以下の2番組だけだった。
NHK「ニュース・気象情報」98日(土)20452100
 APECで野田首相がクリントン米国務長官と会談、米国でのオスプレイの緊急着陸に注文を付け、クリントンも情報提供の約束をしたと発表された事実のみを報じた。(「ニュースウォッチ9」はこの日は休止)
NTV「news every98日(土)17301800
 「
米軍機オスプレイ配備反対沖縄県民大会の準備進む」55秒、「オスプレイ緊急着陸」 29秒と2項目伝えた。
 「米軍機オスプレイ配備反対沖縄県民大会の準備進む」は、会場の記者リポをVTRで。翁長那覇市長、仲井真沖縄県知事などの動向は報じられたが、市民の声や動向も伝えてほしかった。
 「オスプレイ緊急着陸」は、「アメリカ海兵隊によると6日、オスプレイが訓練中にノースカロライナ州ジャクソンビルの市街地に緊急着陸。けが人、機体の損傷なし。海兵隊が原因を調べている」と短く公表された事実報道のみ。日本政府の反応が知りたかった。
「NEWS ZERO」はこの日は放送休止)

6月のフロリダ墜落事故調査報告を取り上げたのも2番組のみだった。

NHK
「ニュースウォッチ9」
9/11
 
6月のアメリカフロリダ州での墜落事故について、後半のフラッシュニュースで約105秒、ナレーションのみ。人為的ミスで機体には異常なない、という防衛省の調査報告を、森本大臣が沖縄仲井真知事に伝えた、と報じた。続いて、人為的なミスだから安全、というのは論理的に成り立たないとする、仲井真知事の批判を紹介した。
 このところ、NHKは、短い時間量で、政府の動きを事実だけ伝えている。オスプレイ事故が続いているが、その報告書が発表された、と報じるだけで、メディアとして独自にその報告書を検証する姿勢が見られない。
 NHKが、海外での戦争航空機事故の報道の際、よくやったように、軍事専門家や航空関係の専門家を動員すれば、ある程度のところまで検証ができるはずだ。しかしオスプレイについては踏み込んでいない。これは、もしメディアが独自に「オスプレイ危険」という見解を出せば、日米両政府の動きに真っ向から疑問を呈することになり、日米同盟の根幹にふれることになる。そのため、とくにNHKは、いわゆる「客観報道」に徹したのではないか、という疑問が拭えない。この点は、NHKの報道全体をさらにフォローしていく必要がある。

テレビ東京「ニュースアンサー」
 9/11 
森本防衛大臣が沖縄を訪れ、仲井間知事にフロリダのオスプレイ墜落事故は人的要因との調査報告を伝え配備に理解を求めたが、知事は「搬入、運用は避けてほしい」と述べたと、約40秒のフラッシュニュースで伝えた。
 ちなみに、フラッシュニュースのトップ項目はバンコックの民間アパートの屋上にトラが飼育されていた事で、オスプレイは虎より危険では無いという事?らしい。

99日沖縄県民大会>
 当日は日曜日。モニター対象番組の「ニュースウォッチ9」(NHK)、「NEWS ZERO」(NTV)、「NEWS23クロス」(TBS)、「報道ステーション」(テレビ朝日)、「ニュースアンサー」(テレビ東京)、「NEWS JAPAN」(フジ)は、当日放送がなかった。そのため、近接した時間帯で放送されたニュース番組で代替した。この日は、日曜日にも定時枠のあるNHK「ニュース7」、TBS「Nスタ」が、比較的丁寧に詳しく伝えていた。
NHK
「ニュース7
9/9  ニュース2 項目目でオスプレイ問題、「配備反対 沖縄で、各地で」(310秒)。
 議事堂前抗議集会、山口・岩国のデモ、
沖縄県民大会、その参加者の声「どれだけ頭の上に大きな鉄の塊が飛ぶことが危ないか、沖縄から皆さんに訴えられたらいいなと思う」など。その後、市民運動と行政の実務は役割が違うと大会を欠席した仲井真知事インタビュー(名護市)、森本防衛相インタビュー、結びは「森本大臣が明後日にも沖縄を訪問し、仲井真知事らと会談、オスプレイ配備への理解を得たいとしている」とその動向をコメント。
 この日は、記者リポを加えて県民大会を中心にかなり丁寧に報道、オスプレイ問題重視の編集姿勢がうかがえた。大会欠席の仲井真知事・森本防衛相インタビューを挟み、 会場の映像も豊富で、取材したそれぞれの現場から熱気を伝えたいとの思いが感じられた。ニュース枠の短い日曜日の伝え方としては健闘していると言えるだろう。
 
しかし、集会会場を真っ赤に染めレッドカード!をつきつけ県民の意思を、もう一歩つっこんで伝える努力を」「民主・自民の党首選などの政局報道にえんえんと時間を割くより、オスプレイ問題にもっと時間枠を」との感想が聞かれる物足りなさも残った。
 
朝7時のニュースでも、これまでのオスプレイ配備関係をまとめたものを流し、沖縄の県民大会が日米政府にどういう影響するか注目されると報じた。
 また、県民大会翌日10日朝7時のニュースでも、オスプレイ配備反対の県民大会について、9日のニュースと同じものを放送した後、記者リポート。大会に参加した全駐労が今回の大会に臨む経緯などについてコメント。
 市民運動の動向には冷淡だと見られていたNHKのこれまでの報道姿勢と比較すると沖縄県民大会の報道は、
いままでとは少し異なり、丁寧な取り上げ方と言えるだろう。
日本テレビ「真相バンキシャ」(18001855放送)
9/9
オスプレイ配備反対沖縄県民大会参加者10万人」(55秒)。沖縄県議会議長喜納昌春氏あいさつ、沖縄国際大学3年生・加治工さん(女性)の声を紹介。
 とりあげたこと自体は是とするが、1時間のニュース番組で、わずか55秒の県民大会紹介は短い。もっと各界の意見・市民の声を大切に伝え、反対が強い背景を掘り下げてほしいとの印象を持った。
TBS「Nスタ」(17301800放送)
9/9
 
トップニュースで伝えた。タイトル「オスプレイ反対“10万人訴え”」(345秒)。
 
佐喜真宜野湾市長あいさつ、参加者の声「子どもがいるので、やっぱり怖い。事故も多いようだし‥」「沖縄にぜったい配備させてはいけない」などを丁寧に伝える。
 会場外で仲井真知事をつかまえて大会の感触と今後の県の姿勢を聞きだしたのはよかった。このほか、国会前のデモ、森本防衛相のコメント、ワシントンでの野田の談話など、多角的に構成しようとした努力は評価したい。30分の短いニュース枠でオスプレイ報道に4分近くを割いて、このニュースを重視していることがうかがえた。

TBS「JNNニュース」(11301200放送)
9/9
 
夜のニュースではないが、モニターしたので参考までに紹介する。トップニュースで「オスプレイ配備に反対 沖縄県民大会」(210秒)。県民大会開始直後から会場の中継空撮映像。結びのコメントは「大会は日米両政府にレッドカードを突きつける意味で赤一色。大会ではオスプレイ配備計画の撤回求める決議文。代表団が上京して両政府に直接要請へ」。
 短いリポートだったが、危険なオスプレイの配備に反対する沖縄県民の怒りや不安が伝わった。

フジテレビ「FNNニュース」(23452355放送)
9/9
 ニュースは短縮で10分枠。10万人が参加した県民大会も、呼応して1万人が参加した国会前抗議行動も取り上げず。放送時間が短かく、やむを得ない面もあるが、「岩手から700匹 目黒のさんま祭り」に1分割いて、県民大会・国会前行動を全く無視する編集姿勢はいささか市民感覚とずれていないか、復興支援を否定するわけではないが。トップニュースで、「大阪維新の会」の公開討論、3項目目で「民主代表選告示」の配列を見ると、市民の願いやうごきより政局報道にしか目が向いていない報道姿勢がくっきり浮かび上がる。

 関連した動きとして、913日、沖縄県民大会実行委員会代表が決議文を携えて上京したが、これを伝えたテレビニュースも少なかった。

NHK
「ニュース7
9/13  この日のニュース7項目目で「オスプレイ配備撤回を」(1分)。沖縄県民大会実行委員が森本防衛相・玄葉外相に決議文を手渡したことを伝えた。那覇市長が「もし沖縄で事故が起きれば、県民の意思は米軍基地の全面閉鎖に向かう」と発言したことに対し、玄葉外相は「配備後の運用のあり方を、日米合同委で協議を進める」と強調。記者会見の県民大会共同代表発言「オスプレイは沖縄に配備できないと日本政府がアメリカに通告できるような態勢をつくりたい」で結んだ。
 7項目目で短く重要ニュースではない扱いだが、県民大会共同代表の会見の発言を生かしたのは重要と評価できる。一方で、「森本大臣のコメントも聞きたかった」の感想も。

NHK
「ニュースウォッチ9」
9/13
 
「項目ニュース」の扱いながら「大会決議文手渡し」のタイトルで1分間。沖縄の10万人集会の代表者が、防衛大臣・外務大臣に決議文手渡し、外相とテーブルで会談の映像。
 アナコメは単に手渡したというコメントで特に気になるコメントはなし。防衛大臣・外務大臣が受け取った時に、無言で受け取ったのか、何かコメントを言ったのか、それを知りたかった。
NTV「NEWS ZERO」
9/13
 
本格運用遅れる見通し」(33秒)。玄葉外相インタビューに続き、スタジオコメント「玄葉外相は米軍が目指していた10月初旬の本格的運用が遅れるとの見通しを示した。また、アメリカのルース駐日大使に対し、引き続き安全対策を撤底するよう求めた」と短く事実のみ伝えた。
 決議文を政府に届けた沖縄県民大会実行委員の動静には触れず、玄葉外相のインタビューとうごきのみ伝えた。この編集意図は判らない。また、事実報道だけでなく、「本格的運用の遅れる」背景にあるMV22オスプレイの安全性、欠陥などの解説もするべきと感じた。

917日パネッタ来日・日米実務者協議>

NHK「ニュースウォッチ9」
9/18
オスプレイ配備問題 野田首相 日米実務者協議の結果了承」(50秒)、フラッシュニュースの扱い。「日米合同委員会は、深夜、早朝の飛行は必要最小限に抑える、150mより低い高度の飛行は行わない、などで合意の方向。政府は、岩国で今週中にも試験飛行を始めたい。森本防衛相あす岩国市を訪れ理解求める」と、ナレーションで動きのみを伝える。
NHK「ニュースウオッチ9」は、このモニター期間中、オスプレイ関係のニュース時間量は極めて少ない、という印象である。客観的な事実だけを伝える、という姿勢に徹した報道と言える。ただ、「ニュースウオッチ9」は、モニター期間以外の時期、かなりオスプレイ関係の報道があるので、「ニュースウオッチ9」全体にオスプレイ報道が足りない、と断定することはできない。
9/19 オスプレイ 安全性十分に確認」(1分)、この日もフラッシュニュースで。ナレーションで「オスプレイの運用、政府は、安全性が十分に確認されたと発表。海外での墜落事故は、機体に問題なく、操縦ミスが主な原因」。森本防衛相インタビュー「米軍側にオスプレイ運用を開始させる」。ナレーション「アメリカ軍は、今週中にも岩国で試験飛行を開始すると見られる」
 日米合同委を受けた政府の発表を事実として伝えることは重要である。しかし、政府が最終的に安全だという結論を発表したことは、オスプレイをめぐる動きの中で、ひとつの区切りとなる出来事である。それにしては扱いが軽すぎる。また、オスプレイに対する反対運動がこれだけ続いている中で、政府が安全を確認した、と伝えるだけで終わるのは、あまりにも現実を考慮しない報道だ。やはり疑問をもつ識者のインタビューや、反対の団体の代表者の声とかを組み合わせて、一定に時間をとったニュースとすべきだろう。オスプレイにジャーナリズムとして疑問を呈することは、日米同盟の根幹に触れることになりかねない。やはりNHKとしては立ち入ることができないのか、と思わせる一連の報道姿勢である。
テレビ朝日「報道ステーション」
9/17
オスプレイ防衛トップ会談“安全策”近く合意へ」(2分)。「森本防衛大臣とパネッタ国防長官が会談、オスプレイの沖縄普天間基地での本格運用について協議。日米合同委員会で近くできる最終合意を受け、岩国基地で試験飛行を始めること確認」のVTRリポート受けて、
古舘キャスター「短かすぎてさっきのオスプレイの問題、どういう風に動いていくかわからなかったが、これアメリカのパネッタ長官が来てことを進めるような感じ」
三浦朝日新聞論説委員「日米関係、貿易や経済はかなり日本も言いたいことを言うが、どうしても安全保障はアメリカのペースになる。ただこれ単にオスプレイの安全の問題じゃなくて、沖縄に基地が集中していること、普天間という住宅密集地にあるということも問題」
 古舘の「アメリカのパネッタ長官が来て、ことを進めるような感じ」というとらえ方は、素直な市民感情を表していて同感。コメンテーター三浦氏の「どうしても安全保障はアメリカのペース」との指摘はその通りだが、アメリカ言いなりの日本政府への批判を避けているために奥歯にものの挟まったような解説になっている。

テレビ東京「ニュースアンサー」
9/17
 フラッシュニュースで30秒。パネッタ、森本会談でオスプレイ本格運用を確認。日米合同委員会で、安全性に関する議論が大詰めを迎えているとの発表事実のみ報道。
フジテレビ「NEWS JAPAN」
9/12
「独自」とスクープ性を強調しながら「オスプレイで大詰協議 米パネッタ国防長官来日へ」のタイトルで30秒の速報。「米パネッタ国防長官が今週末来日、17日に森本防衛大臣・玄葉外務大臣と個別会談することが決まった。オスプレイの飛行ルールについて詰めの協議を行うほか、尖閣など東アジア情勢について意見交換の予定」とコメント。
 「NEWS JAPAN」は、
これまでのモニター期間中、全くオスプレイ問題を取り上げなかったが、この日は、ニュースの7項目目でパネッタ訪日を伝えた。市民団体や地方自治体のうごきには関心がないが、政府・米国のうごきにはアンテナを張っているということか。スクープには違いないが、どっちを向いて取材しているのかと問いたくなる速報ではある。
9/17
 ニュース全体の3項目目「ニュースフラッシュ」の中で、2番目に「密集地・原発は『上空は回避』オスプレイで大筋合意」(30秒)。「日米両政府、オスプレイ飛行ルールについて大筋合意。周辺住民の不安配慮し、人口密集地・原発などの上空避けて通ることが盛り込まれている。日米両政府は、早ければ今週にも合意文書作成し、岩国基地で試験飛行、来月、普天間基地に配備の見通し」とナレーション。
 政府発表の日米合意の事実のみを報道。実態は、政府広報の垂れ流し。時に、「客観報道」「事実報道」=政府広報の隠れ蓑として使われる用語であることを痛感。時間もわずか30秒で、トップニュースの尖閣問題・反日デモ540秒、2項目目の皇室もの820秒と比べれば、オスプレイ問題がいかに軽視されているかわかる。オスプレイ問題への視聴者の注意をそらす意図が隠されているのではないかと勘繰りたくなる時間配分。
9/18
 ニュース 7項目で「“運用ルール”首相も了承 」(30秒)、政府発表の事実報道のみ。岩国や沖縄では、試験飛行・配備に自治体も含め多くの人々が反対している。対立する側の声や動きを全く無視し、政府発表を既定の事実の如く垂れ流すだけの報道姿勢に強い違和感を覚える。

921日岩国初飛行>

NHK「ニュース7」
9/19
 
時間をかけた重点項目は、政府のエネルギー政策・原子力規制委員会の発足・日本航空の再上場・日銀の金融緩和・尖閣諸島・民主党代表選特集・自民党総裁選。オスプレイ配備問題は、その後、短い項目ニュースの扱いで「オスプレイ 岩国市長”政府が全責任の覚悟で”」(1分16秒)。森本防衛相が岩国市長を訪れ、オスプレイの試験飛行に理解を求めた事実のみを論評抜きで報道。市長「飛行を認められない」、森本大臣「飛行の安全性を確認、飛行再開させる」と双方の主張も短く均等に伝えた。
9/21
「民主党代表選」をトップニュースで15分近く伝えた後、ニュース2項目目で「オスプレイ 抗議の中で 試験飛行始まる」。時間は4分27秒で比較的丁寧に伝えた。米軍岩国基地で始まった初めての試験飛行の実況リポートをベースに、オスプレイ飛行ルートを図示、抗議行動参加者の声。飛行を目撃した岩国市民のインタビューは「こわい。この辺に落ちたらと思うと気が気でない」、
「安全は確保できてるんでしょ!」と賛否双方の声を並べた。この後、沖縄仲井真知事の困惑、宜野湾市佐喜真市長「われわれの行動とはうらはらに、現実には配備ありきの対応に憤りを覚える。配備阻止に全力で取り組みたい」などの沖縄の表情を伝え、森本大臣の沖縄訪問予定に対し宜野湾市長の「会うべきかを含めて慎重に対応したい」とのコメントを紹介。結びは、「防衛省によるとこれまでのところ、トラブルの情報は入っていない。米軍は明日も試験飛行をし、早ければ今月中にも沖縄の普天間基地に向けて飛行させる考え」と政府発表そのまま。
 モニター担当者のコメントは、次の二つ。
この日は、オスプレイの初飛行を丁寧に伝え、防衛大臣、岩国市長、市民の反応もそれなりに伝えているが、宜野湾市長の『われわれの行動とうらはらに』という言葉の意味、つまり9日の10万県民集会を政府がネグレクトしている怒りを伝えていない。あの圧倒的な映像を出すことによって、住民の気持ちが視聴者に伝わるはずなのに」「日本政府の『安全宣言』を受け、待ってましたとばかりにオスプレイを飛ばした米軍。
 民主党の代表選挙の日に合わせたのではないか。午前中の中継になかったことは、記者の「速い、速い!」というヘリからの現場取材のコメント。幼稚すぎて、なぜそのコメントを採用したのか疑問。基地から飛び立つオスプレイの騒音や上空を飛んでいるオスプレイはどんな感じなのか――自分の上を大きな物体が飛ぶ市民の立場に立って取材してほしい」
9/22 4分費やした「尖閣問題」、2分の日米共同軍事訓練」に続いて3項目目で「オスプレイ岩国基地で、訓練飛行」(330秒)。ヘリ取材の広島局森下記者のリポート。米軍がホームページで921日試験飛行の動画や写真を公開していると紹介。試験飛行を「認められない」とする山口県、反発を強めている沖縄県の姿勢をコメントで伝えた。 この日の報道は、危険なオスプレイの飛行訓練が実施されたことへの市民や自治体の戸惑いや反対・抗議の映像はまったくなかった。尖閣問題での日中関係の悪化、それに続いて戦闘服姿での日米の共同訓練の実況(自衛隊のコメントあり)を、映像で示して、オスプレイの岩国での飛行訓練をおこなって沖縄に配備するのは当然との流れに誘導する報道にみえる。これは、かなり意図的ではないかと勘繰りたくなるニュースの配列、報道の仕方だと思う。

NHK「ニュースウォッチ9」
9/21
 4項目の扱いで「オスプレイ初めて日本で飛行」、5分15秒。オスプレイの日本での初飛行について、沖縄の反発の声を重点に伝えている。とくに涙ながらに抗議する子連れの母親のインタビューは、かなりインパクトがあった。
 しかし、オスプレイ報道で、何か大きく欠落しているものがあるのではないか。それは、いつまで経っても政府対沖縄、という図式での報道からなかなか出ていないことである。もうひとつの極として、日本国民があるはずだ。国民はオスプレイ配備をどう受け止めるか、という視点、ニュースには極めて希薄なのである。
 報道は、オスプレイ配備対沖縄の反発、という客観的な対立としてこの問題を捉えるにとどまっている。在京のメディアが、自らに突きつけられた問題として、オスプレイ配備をどう扱うか、という姿勢がなかなか見えない。
 これはオスプレイ配備について賛成か反対かをはっきりさせるべきだ、ということとは違う。どこまで行っても沖縄の問題としてしか扱わない報道のあり方がおかしいのである。オスプレイの安全性に対する独自の検証、また、アメリカの言い分を常に通してしまう、日米両政府の力関係、従属の関係などについて、もっと突っ込んだ報道をすべきであろう。
NTV「every news(17001900)(「NWES ZERO」の代替でモニター)
9/21「山口・岩国基地でオスプレイ試験飛行開始」3分16秒。 岩国基地で始まった試験飛行について山口放送高橋記者が現地からリポート。福田岩国市長インタビューがインサートされ、継続されている試験飛行で7機目の離陸を現地から生中継、沖縄県仲井真知事・宜野湾市長の「普天間配備は認められない」とのインタビューも挟まれた。
森本防衛大臣スタジオ生出演」、8分39秒。冒頭、森本大臣は「二ケ月間、岩国基地にオスプレイをとめていた」「2か月間止めていた機体の機能を確認するフライトをやっている」と、2か月間止めていたことを2度にわたって強調。
さらに「基本的な安全性を確認する措置を日米間でずっと交渉」と、安全性が確保されていることも強弁。
アナ「安全と国民に納得させることは難しさが?」
森本「一番安全性に気を使っているのはなんといっても運用しているアメリカ」「本来、アメリカの抑止力、日本の安全にとって非常に重要な飛行機なので、それが運用制限とか機能を制約されることがあっては困る」
アナ「仲井真沖縄県知事は『事故が起きたら沖縄にあるアメリカ軍基地を即時閉鎖しろということになる』と?」
森本「これは日本にとり大変なことですが、アメリカがこの点を気にしている」
アナ「合意の内容に、仲井真知事『判断は米軍側にゆだねられている。我々の経験から守られなかった。沖縄県民は不安』と?」
森本「飛行機、運用を制限することによって能力を規制されることがあってはならない。可能な限りできる限りの安全性の配慮をおこなうという文章」
田頭記者(元沖縄駐在)「日米安保に賛成の首長さんも含めてすべてオスプレイに反対。辺野古移設一層困難ではないか?」
森本「辺野古の施設は海に出ている。より安全なルートをアメリカが使うこと可能。アメリカが抑止力を格段に上げることは日本の安全にとっても非常に重要な意味。そこを理解して、この飛行機を受け止めて頂きたい」

 ニュース前半は、VTRリポートによる岩国基地の試験飛行の事実報道が中心だが、最後に沖縄県知事や宜野湾市長の発言がインタビューできちんと伝えられたことはよかった。
 大臣インタビューは、森本防衛大臣が「アメリカの抑止力が日本にとって大切」と繰り返しアメリカの立場を代弁、「安全性」より「米軍の行動を制限しない」ことを優先する姿勢があからさまになり、日本国民のオスプレイへの不安を理解していないことを浮き彫りにした。アナ・記者のかなり踏み込んだ質問が、その回答を引き出したともいえよう。
9/22  山口・岩国基地米軍機オスプレイ試験飛行続く」、1分11秒。「昨日と違い瀬戸内海の周防大島町を旋回しながら離着陸を繰り返えす」とVTRリポートで伝えた。
 昨日と今日、連日オスプレイを取り上げていたことは評価できる。また、結びのコメントで「普天間基地に配備され、本格運用が始まると全国7ルートで330回の低空訓練が計画されている」ことを、情報としてきちんと伝えたことも適切。12機のうち10機が試験飛行していた事実に驚くが、事実の報道のみでなく、反対の声も取り上げてもよいのではないかとの印象が残った。

テレビ朝日「報道ステーション」
9/18
 
野田総理が安全策を承認オスプレイあさってにも試験飛行」、25秒。フラッシュニュースだが、古舘キャスターのコメント「飛行の高さなどアメリカは十分配慮してということだが、日本側からみるとまだまだそのあたり詰めなきゃなというところ」は、政府発表の垂れ流し報道にはしないとの意思表示とも受け取れる。
9/19
 
週内にも試験飛行 オスプレイ『安全対策』で日米合意」、5秒。「日米両政府は今日、オスプレイの安全対策で正式に合意した」。この日は、スタジオコメントなし。
9/21 オスプレイ初飛行」、13分。この日のトップニュースで詳しく伝えた。古舘キャスターがスタジオで「モード変換の際、機体が不安定になるといわれている」と視点を提示。続いて初飛行を岩国基地からリポート。岩国基地前抗議集会の市民の声「アメリカの理屈に乗って安全宣言出したと思えて仕方がない」。ナレーションは「4月モロッコ、6月アメリカフロリダ州で墜落事故。アメリカは人的要因が原因と発表、日本も同様の見解、安全宣言。ただ気になるのは転換モード。モードの転換は基地内で、となっているはずだが、今日の場合もすべての機が、洋上でモードを切り替えた」。沖縄の反応は、仲井真沖縄県知事、配備されればすぐ上をオスプレイが飛び回る志真志小学校多和田文子校長「子どもたちがいる学校の上空は飛ぶべきでない。基地があるゆえの事故。基地撤去を要求する」。2005年沖縄国際大学ヘリ墜落で自宅が被災した中村桂さん「死者が出ないと動かないのか」。最後にナレーションで森本防衛大臣沖縄訪問取りやめを伝えた。
 VTRリポートを受けてスタジオの古舘「結論が先にある」。コメンテーター田中秀征福山大学客員教授「原発再稼動と同じ。必要性が先にある。防衛大臣は安全保障上の抑止力という必要性を強調した。しかし、必要性と安全性の議論をごっちゃにしてはいけない。安全性は必要性に優先しなければいけない」。古舘「10月には沖縄の住宅密集地にこのオスプレイが来るという。それはあってはならないこと」。
 岩国からのレポートは可能な限りオスプレイの機影を追いかけ、どの時点で垂直から水平にモードが切り替わるかを観察し、リポートしていた。こうした客観的な目は、ジャーナリズムに大切な視点である。
 「報道ステーション」はこれまでにもオスプレイ問題を様々な観点から取り上げてきたが、「今日初飛行」という時点で捉えた場合、まずこの飛行機がどんな飛び方をし、これに関わる人々がどんな思いでいるかに焦点を絞った編集の仕方は妥当だったのではないか。「安全宣言」がいかに茶番であるかも、問わず語りに見えてくる。
9/26  オスプレイ本格運用に向けあさって沖縄・普天間へ移動」、2分40秒。アメリカ軍側の通知を防衛省が沖縄に伝えたと紹介した。限られた時間の中で、事実報道VTRに1分、スタジオコメントに1分40秒。
 三浦コメンテーター「竹島とか尖閣とかあるから、こういう足の長い飛行機が日本の安全保障のために要るんじゃないかという議論もある」「基本は沖縄に負担が集中していること。そして住宅密集地に飛行場があるというオスプレイ以前の問題。オスプレイの安全性だけ見てしまうと本質を見失ってしまう」
 「報道ステーション」では、これまでも基地周辺の取材とあわせ「今のオスプレイ問題はオスプレイの安全性のみの問題ではない」とくりかえし主張している。問題の本質を見極めようとする姿勢は評価できると思う。映像は住宅街や学校のすぐ近くを飛ぶオスプレイの映像を使用するなど、今後沖縄普天間基地周辺の人々が日々生活しながら目にするオスプレイをイメージすることができた。
9/27 沖縄では抗議の声高まる中… オスプレイ体験搭乗ナゼ」として5分10秒。
 まず、オスプレイの体験搭乗に招待された22の市町村の首長、全員が辞退したことをつたえた。その後、「今、かなり急上昇しています。そして今、体が一気にすこし揺さぶられたり、体に強い…(コメント中途でおわる?)」など、体験搭乗の機内からのリポートも併せて紹介。基地ゲート前で抗議する人々と警官が、ぶつかる映像も随所で使っており、沖縄の思い、基地周辺住民の思いをしっかり伝えようとしていた。また、スタジオでは、体験搭乗に招待されながら辞退した市町村長の判断を「正しい選択(三浦)」とし、「(呆れ顔で)体験搭乗って…(古舘)」「乗り心地ではなく、飛行するオスプレイの下での暮らしを体験するべき(三浦)」とコメント。今回の体験搭乗は安全性をアピールするため防衛省がアメリカ軍の協力を得て実施したとのことだが、政府の愚行とも言える今回の“体験搭乗”について、“体験と言うならばむしろオスプレイの下での暮らしを体験するべき”とした三浦コメンテーターの発言は高く評価したい。主役はそこに生きる、何らかの負担を負わされる住民だということ。そしてその基地周辺住民の負担軽減が何よりも優先されなければいけない、その事をあらためて考えさせられた。
TBS「NEWS23クロス」
9/17
ニュース6項目目で取り上げたが34秒と短いもの。岩国基地内で機体の点検をするオスプレイなど断片的な映像とナレーションで伝えた。「オスプレイの安全性について、森本防衛相など関係閣僚が協議、政府として最終判断。19日の日米合同委合意受け森本防衛相が山口県訪問へ。早ければ20日から試験飛行開始へ向け最終調整」
 デイリーニュースの中の扱いで、関連の動きを記録風にまとめただけのもの。岩国なり普天間での試験飛行などの具体的な動きがあるまでは、腰を入れた伝え方はしないのではないかと推測される姿勢。
9/19  8項目目の扱いで時間は50秒。映像は岩国基地の機体、日米合同委、森本防衛相の岩国市訪問、福田市長のコメントなど。ナレーションで「政府はオスプレイの安全性は確認したと発表。日米合同委で合意した配備後の安全策で、低空飛行訓練は150m以上、人口密集地上空は避ける、飛行モードの変換は短時間という内容」。理解を求めた森本防衛相に対し福田市長「政府の最終判断は極めて残念」。ラストコメントで「試験飛行は20日にも岩国基地で開始」。
 オスプレイの飛行訓練についての日米合意の内容が決まったのに、それについての見解すらも出さないのは理解できない。高度150mという基準についてだけでも、国内法と比較していかにルーズなものか指摘ぐらいはすべきではないか。
9/21
5項目目で報道、「オスプレイ初の試験飛行」、4分55秒。スタジオの膳場キャスター「安全性への懸念が消えない中、地元は反発」の前ふりで実況をVTRリポート。共同通信提供写真で下関市街地上空の飛行を確認。市民「やはり恐怖感じる」。沖縄仲井真知事インタビューを入れ、ナレーションで「知事は“配備ありき”で進めていると不快感あらわに。一方、政府は日本の安全保障上、中核の装備と理解求める」。森本防衛大臣インタビュー挟み、ナレーションで「今後各地で低空飛行による訓練計画。事故は一件も許されない」と結んだ。
 オスプレイの飛行の状態を岩国上空と関門海峡上空から、記者2人がそれぞれリポート。ほぼ飛行ルートに沿って飛行している様子は分かったが、初日の
飛行だけに表向きは規定どおりの飛行という印象を与えようという姿勢が見て取れる気もした。今後、普天間基地や全国各地の空域で日米の合意が守られるのか、記者はどう思っているのだろうか? 特に低空飛行による爆音被害が連日のように起きている現状についても触れてほしかった。ちなみにわが国の航空法では、ヘリでさえ市街地上空の高度制限は300mになっており、これと照らし合わせてもオスプレイの制限150mに疑問は起きないのだろうか?
テレビ東京「ニュースアンサー」
9/18
 
約1分のフラッシュニュースで、19日の日米合同委員会で安全確認合意の見通し、これを受けて20日に試験飛行する最終調整に入ると報じる。
9/21
 2項目で「オスプレイ国内初飛行」、4分。「安全への懸念を残したまま、オスプレイが日本の空へ飛び立った」のナレーションでVTRリポート。住民インタビューは、
60代女性「やめて欲しい。やっぱり危険」
30代女性「小、中学校や幼稚園などが近いので心配」
ナレーション「一方で容認する意見」
60代男性「岩国市民は関心を持っていない。デモをしている人に地元民は、ほとんどいない」
60代男性「岩国市民で、いやと思っている人はあまりいない」。
 東京出張中の福田良彦市長、森永防衛相、仲井真沖縄県知事挟んで、潮匡人氏(軍事評論家)にインタビュー。
インタビュアー「合意では可能な限りとか、必要最小限とかあるが守られるのか?」
潮「実践では、敵のレーダ網をかいくぐる飛行も求められる。ぎりぎりの低空飛行訓練もする。訓練に手を抜くようなことはしない」
ナレーション「また配備後に予定されている、本州を縦断する訓練ルートは重要な意味がある」
潮「朝鮮で有事があれば最初に投入されるので、朝鮮半島と地形が似ている山間を、低い高度で飛行できる地形を選んだ」
 スタジオの大浜キャスター「訓練ルートは安全面が非常に心配だが、専門家の話では、日米合意を強制的に守らせるすべを日本側は持っていない。アメリカ側も事故を起こしたくない、と思っていることを信じる事しかない、合意が守られているか、チェックしてアメリカに伝え、プレシャーを与えることが大事とのことでした」
 オスプレイ問題を短時間だが、本格的に初めて伝える。沖縄以外にも、日本全国に訓練飛行ルートがあることをパターンで示したが、詳しい情報は全くなかった。キャスターの締めのコメントも安全確保ができれば、受け入れやむ無しの姿勢を感じる。住民インタビューの扱いにも疑問がある。賛成、反対の意見を公平に取り入れようとしたのであろうが、賛成派である男性二人の主張は反対意見の女性二人のインタビュー取材で、明らかに成り立っていないのにそのまま伝えている。賛成意見を伝えるならオスプレイ受入れに、なぜ賛成かを問うべきだ。
フジテレビ「NEWS JAPAN」
9/21
 
ニュース4項目で「ルート外れ市街地上空も」、115秒。試験飛行の実況リポート、「初日の今日、オスプレイが関門海峡を外れて下関市市街地上空通過が確認され、辺りには轟音が響いた」と伝え、中尾下関市長インタビュー「当初の報道と違うルートを通ったとすれば、市民の不安を増長させる行為で強く抗議したい」
 この日は、時間は短いがニュース第4項目で取り上げていることは一応評価できる。内容も市街地上空通過の合意違反に焦点を当て、日米合意項目を字幕表示して問題点を明示。下関市長の抗議インタビューを挟んで、現地の批判的雰囲気をきちんと伝えていた。

101日普天間配備>

NHK「ニュース7
10/1
 
ニュース2項目目で「オスプレイ抗議続く中、普天間基地に配備」、1006秒。
 当日は野田3次改造内閣の組閣が一番手で17分半もあり、見るほうとしてはやや疲れたところで、オスプレイ報道を見ることになった。当日クロノロ→沖縄の人々の怒りや不安→日米両政府(軍)の立場説明という手堅いまとめ方となったが、通り一遍の批判は免れそうにない。当日の動きはわかるのだが、オスプレイに象徴される駐留米軍の弊害、オスプレイの飛行ルートの検証、今後懸念される全国での飛行訓練など、時間が限られているとはいえ、掘り下げるべき部分があったのではないか。沖縄の人々の怒りの取り上げ方はステレオタイプ。むしろ、日本に配慮すると言いながら、トラブルが起きた場合、重大な事故につながりかねない市街地上空を飛んでいたことや、今後予想される訓練の飛行ルートの検証などをもっと見たかった。政府や米海兵隊の説明もお座なりな感じで、そのお座なりぶりを糾弾してほしかった。
 ニュース7は「当日のニュースの百貨店」的な位置づけで、ニュースの進行もキャスターというより本来の意味でのアナウンサーが行うので色を出しにくい。NHKが言うところの「客観報道」が貫かれているのだが、問題意識を持つ人が見れば不満だろう。
NHK「ニュースウォッチ9」
10/1
 
ニュース4項目で「(オスプレイ)地元反発の中、普天間基地に配備」、6分05秒。
 921のこの番組についてのコメント同様、どこまで行っても政府対沖縄、沖縄の過重負担という視点から一歩も出ない報道である。これはNHKだけを批判するわけには行かない、テレビメディア全体に共通する姿勢であろう。キャスターは、沖縄の人々の不安に言及しているが、ではNHKのジャーナリストは、オスプレイの安全性への不安は持たないのだろうか。オスプレイの安全性にたいする不安は沖縄の人々だけにあるのではないはずだ。
テレビ朝日「報道ステーション」
10/1
 
トップニュースで「オスプレイ沖縄へ」、1650秒。沖縄にやってきたオスプレイとそれを受け止める沖縄の人たちの声を多方面にわたって取材し、報道したことは評価していいだろう。しかし、問題が米軍対沖縄県民という構図に矮小化されているきらいがある。最も問題とすべきは、沖縄が抱える悩みを日本政府が何一つ解決しようとせず、米軍に対しても代弁してこなかったことであろう。日本政府が沖縄を見放しているのだ。三浦コメンテーターにはそうした踏み込んだ意見まで言ってほしかった。今日の発言内容では何か道徳的、倫理的なことでお茶を濁された歯切れの悪さばかりが残る。根本は日米安保にある。この問題に言及しない限り、沖縄は永久に救われないことをマスコミは真剣に考えなければいけない時期に来ているのではないか。
TBS「NEWS23クロス」
10/1
 
「オスプレイ6機普天間へ~沖縄の反対押し切り~」、ニュース2項目目で3分38秒。沖縄に配備されたオスプレイが、案の定、那覇市の市街地上空を飛んで基地に入るさまや、その際宜野湾上空で飛行機モードからヘリモードに変換しながら飛行する姿を、上空からのリポートで伝え、今後の運用でも日米の取り決めがいかにルーズに扱われる可能性があるかをうかがわせた。また、強襲揚陸艦とオスプレイの連携で中東までもが作戦の範囲に入ることを指摘したのはよかった。
 ただ、普天間基地に飛来したオスプレイに抗議する住民たちの怒りや不安の心情に全く触れず、ゲート前の抗議行動を簡単に映しただけだった。当日午後5時前の『Nスタ』では、短い時間の中でも住民の声をきちんと紹介していただけに、この時間帯の扱いには不満が残った。
テレビ東京「ニュースアンサー」
10/1
 
ニュース2項目に「オスプレイ“普天間”到着」、2分50秒。配備に強く反対している沖縄住民の様子は伝えている。しかし住民が実際に配備されたことについてどう思っているか、なにも伝えられていない。画面には、(報告)橋本春樹と、表示されたが「オスプレイが姿を現した」の、一言のみで終わっており、これが報告だとすればあまりにも報道の仕方が杜撰だ。果たしてまともに取材をしてるのか、疑念を持たざるを得ない。
フジテレビ「NEWS JAPAN」
10/1
 
「知事『どう見ても無理がある』オスプレイ沖縄配備地元は反発」、530秒。トップニュースは、野田内閣改造でスタジオ解説を合わせ12分弱。オスプレイ問題は二項目目で5分30秒。いつも通り、民より官のニュースを重視する「NEWS JAPAN」の編集姿勢明確。オスプレイの普天間移駐映像、ゲート前で抗議する人々、反発する沖縄県知事、岩国残留6機のうち2機の不具合などを型どおりに伝えた。反対住民の映像・インタビューを入れてはいるが、ナレーションは事実のみを伝え、知事発言・政府関係者の証言を忠実になぞって一歩も踏み出さないよう細心の注意を払いっている。勿論、論評は全く抜きで行政側の情報のみで自主取材の形跡は見られなかった。

<番外編・自民党総裁候補の態度>

 直接のオスプレイ報道ではないが、自民党総裁選候補への質問で、オスプレイ問題への態度を問うたシリーズがあった。
テレビ朝日「報道ステーション」
9/7
 「自民党総裁候補者に聞く」に町村信孝氏が生出演。 オスプレイ配備について問われる、「正直言ってオスプレイの技術的な危険性のことについて、率直に言って詳しくありません。責任を持って言うだけの情報が乏しい。なのでこの件に関してはちょっと申し上げたくありません。」と。他人事のような無責任な回答にもかかわらず追及が続かず、古舘キャスターはすぐ引っ込めて、違和感があった。時間の制約もあってか、そのまま話は日米関係にスライドしてしまった。
9/10
 「自民党総裁 候補者に聞く」。
ナマ出演した石破茂氏は古舘キャスターの質問に答える形で「オスプレイの安全性はアメリカが言うから安全なのではなく、日本独自に徹底的に調査する必要がある。だが、オスプレイそのものは必要である。朝鮮有事の際、頼れるのは海兵隊、その海兵隊の足とも言うべきオスプレイはなくてはならない存在」9/14  生出演による「自民党総裁選きょう告示 全候補者に聞く」、40分25秒のなかで「オスプレイ配備」を話題にした部分が350秒ほど。
古舘キャスター「10月にも普天間に配備という流れのようだが、『これはもうちょっと待ってくれ』ってたとえば総理になったら町村さんが言ってくれる?」

町村「今、日本独自でその安全性の確認済んだら良い。『問題があるなぁ』ということであればアメリカに対して『NO!』と言えば良い。ただこの尖閣の…
古舘(話を遮って)「アメリカは、(日本が)『NO!』と言ったら『そうですか』と言う?」」
町村「信頼関係が無いのに『アメリカさん待ってくれ』と言ったって『いやいやこれはアメリカの専権事項だ』と言ってくる。だから日米の信頼関係の重要性が出てくる」
林「安全だっていうことは勿論だが、これ(オスプレイ)に替わればどこまで飛行距離が延びて、どれだけ安全保障に役立つか、これも併せて説明しなければいけない」
 
安倍・石原氏は発言ナシ。
 「報道ステーション」は、9/7,10,14放送分を通じて自民党総裁候補のうち3人がオスプレイ普天間配備を容認していることを明らかにした。多くのニュースが政局報道に走る中で、視聴者の政治選択に重要な情報の提供といえる。この日の聞き手・古舘氏の質問は、政治的争点に切り込んで各候補の態度を明らかにさせ、視聴者市民の声を代弁していたと言えるだろう。


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