「クリスマス」(1)
もうすぐクリスマス、というある日。
学校から帰ると、美鶴ちゃんが居間で忙しそうにしていた。
「ただいま、美鶴ちゃん・・・って、何、これ?」
「まぁ、珠紀様。申し訳ありません。お迎えにもあがらずに・・・」
「ん、そんなのは良いけど・・・。こんなにお菓子、どうしたの?」
居間の中、お菓子の山がいくつも並んでいた。その中央に、美鶴ちゃんが座っている。
「これは、クリスマス用のお菓子なんです」
美鶴ちゃんはそう説明すると、山から一つずつお菓子を取って、持っているブーツの中に落としていく。
「イブの日は、近所の幼稚園に通う児童が集まって、公民館でクリスマス会をやるんです。
玉依毘売神社も、村の方々にはいつもお世話になっていますからね。
毎年、お手伝いをさせてもらっているんですよ」
「なら、私も手伝う!!」
そういうことなら、私だって役に立ちたいもんね。意気揚揚とそう言って、私も山の中央に座り込んだ。
「クリスマス会って、どんなことをするの?」
黙々と作業するのもつまらないので、私は美鶴ちゃんに話し掛ける。
「そうですね。みんなで歌を歌ったり、お遊戯をしたり・・・。
それから、サンタさんからプレゼントを貰ったり、ですね」
「それ、すごい、楽しそうだね。サンタさんからのプレゼントかぁ。何か、良いなぁ」
「プレゼントは、このブーツのお菓子ですけどね。
そうそう、サンタクロース役は、守護者のみなさんがなさるんですよ」
守護者・・・って、真弘先輩達が?
みんなのサンタクロース姿、想像したらおかしくなっちゃった。あれ?でも・・・。
「あのさ、美鶴ちゃん。卓さんも、サンタクロース、やるの?」
「いえ、大蛇さんは、お母様方の相手をなされています」
「そ、そうだよね」
サンタクロース姿で子供達に囲まれている卓さん。ちょっと、想像付かないかも・・・。
うん。でも、良いな。すごい楽しそうなんだもん。
「今年は、慎司くんも帰ってきてくれたから、サンタさんが一人増えますね」
「ねぇ、そのサンタクロース役。私もやりたい。もう一人くらい増えても、大丈夫だよね?」
こういう裏方も嫌いじゃないけど、どうせやるなら当日も一緒に参加したい。
幼稚園の先生やお母達さんがいるなら、人手は足りるのかもしれないけど・・・。
私も一緒に、クリスマスを楽しみたい。
「珠紀様が、サンタクロースを?だ、ダメです、そんなの。
だいたい、女の子の衣装なんて、ありませんよ。私だって着物なのに・・・」
まさか、反対されるとは思わなかった。
もしかして、着物でクリスマス会に参加するの、気にしてるのかな?
「衣装なんて、作れば良いだけだよ。そーだ、今から手芸屋さんへ行って、材料買って来る。
ついでに、美鶴ちゃんの分も作るから。ね、それなら、良いでしょ?」
「私の分も?い、良いです、結構です。そんなの、似合いませんよ、絶対!!」
「大丈夫。美鶴ちゃんなら、絶対似合うって!!私が、すっごい可愛いの、作ってあげる。
当日は、それ着て、一緒にサンタクロース、やろう」
美鶴ちゃんが困惑して涙目になっているのにも、私は気付かないふりをする。
「袋詰は帰ってから手伝う。ちょっと買い物に行って来るから、そのままにしておいて」
何か言われる前に、そのまま居間を飛び出して行った。
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