見知らぬ少女は、ずっと下を見ている。
[選択1-1]
(自己紹介する。)
萌は、小さくうなずくと、走っていった。
[選択1-2]
(虫を見るような眼で見る。)
少女は、下を向いたまま、こちらが気味悪がって離れるまで、じっとしていた。
好きになれば好きになるほど、ちゃんと喋ることが出来なくなる。
緊張すると、好きになると。
シャワーを頭から浴びながら、呆然と自分の全身を映す萌。
あの人を思って、
何かを喋ろうと、口を動かす。
萌は、泣きながら喉を押さえた。
声を出そうとして、意味不明の音を上げる。
かきむしり、血を出す喉。
背中にシャワーが当たった。
萌は、しゃべれなくて、喉に手を当てている。
気持ちの悪い声を出して、そして哀しくなって、走っていった。
※どれか1つしか聞けない。
萌は、しゃべれなくて、喉に手を当てている。
気持ちの悪い声を出して、そして哀しくなって、走っていった。
[選択1-1]
(ほっとく。)
(そのまま終了)
[選択1-2]
(腕をつかむ。)
萌は下を向いたまま、目を思いっきりつぶっている。
泣きながら逃げようと、細い腕に力を込めた。
[選択2]
(筆談って手もあるよ。) / (しゃべる練習でもしようか。)
萌は、びっくりして顔をあげた。
まじまじと笑っている○○を見る。
そんなことは、考えたこともなかった。
もう駄目だと、ずっと思っていたのだ。
萌は、じっと○○を見て、こくんとうなずいた。
顔を赤らめて、もう一度、うなずいてみせた。
萌にとって、それはどんな魔法より偉大な発見だった。
嬉しすぎて、ちょっと泣けた。
どこからか、優しい笛の音が聞こえる。
…笛? …違う。なんだ…。
心優しいその音に心惹かれていると、
そのうち、曲は唐突に鳴り止んだ。
人影が、遠ざかっていった。
一人の少女が、屋根の上で黒い月と青い月を眺めながら座っている。
萌が、猫を傍らにおいて指を動かしていた。
何もない空間の空気が揺れ、音楽が奏でられている。
…不意にこちらを振り向いた。
[選択1-1]
(ほっとく。)
(※へ続く)
[選択1-2]
(呼び止める)
萌は、脅えた目で、こちらを見た。
いじめられると思ったようだ。
[選択2-1]
(不思議な曲…綺麗。)
萌は、足を止めて、なにかを言おうとした。
結局何も言わず、指を震わせて音楽を奏でる。
萌は、こちらを見て、下を向いた。[イベント終了]
[選択2-2]
(やっぱりこいつ人間じゃない。)
※
萌は、そのまま走っていった。
ゆっくりそれを追いかける猫が、非難がましい目つきで、こちらを見ていった。
一人の少女が、屋根の上で黒い月と青い月を眺めながら座っている。
萌が、猫を傍らにおいて指を動かしていた。
何もない空間の空気が揺れ、音楽が奏でられている。
萌の隣に、座った。
萌は何も言わずに、音楽を鳴らしている。
「…夜は…好き…。誰も…私を…いじめに……こないから…。
…ちゃんと…話せないからって…、…笑われることも…ないの…。
…伝説が…あるのよ…。
…青い月から…死を告げる…舞踏が…来るの。
…全ての…悲しみに…終わりが…来るように、…意味ある生があるために…死がいるのよ。
…その舞踏は…やさしい…のよ…。
…だから…、みんなが…いやがることを…
…自分で行うことを…決めたのよ…。
…私…ね…、はやく…自分の…順番が… …来ると…いいな…。」
萌はそう言うと、顔を赤らめた。
「…来須には…強力な呪いがかかっているわ…。
…その血を…絶やすために…、呪いが…
…かかってる…。
…だから…人を好きに…なることは…ない…。」