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ワールドウォッチ・マガジン 2001年7/8月号より
米国のエネルギー計画を策定するにあたって、ディック・チェイニー副大統領は、「エネルギー計画の策定作業に、エネルギービジネスについて知っている人間が入っていると役に立つ」と言った。チェイニー副大統領は、世界最大手のエネルギー会社であるハリバートン社の元CEOである。
しかし、チェイニーは自分のことだけを指していたのではなかった。チェイニーは、特にエネルギー業界の幹部やロビイストたちをたくさん、ブッシュ政権に集めている。
たとえば、「クリアリングハウス・オブ・エンバロメンタル・アドボカシー・アンド・リサーチ」が、エネルギー省の政治的な職への任命者を調査するための63人からなる諮問委員会のバックグラウンドを調べたところ、うち50人がエネルギー業界出身であることがわかった(27人が石油・ガス業界、17人が原子力発電・ウラン採掘業界、16人が電力業界、そして7人が石炭業界。再生可能エネルギー業界の人はたったの1人だった)。
ブッシュ大統領がその他のトップアドバイザーや閣僚を選んだとき、米国の政治に対する企業の影響をチェックしている監視グループ「責任ある政治のためのセンター」によると、「大統領は、どの業界も冷遇することはなかった」。
以下のリストからわかるように、ブッシュ政権のトップのポストを埋めた人々のほとんどが、業界との強いつながりを持っているのである。
Andrew Card, 首席補佐官
米国自動車製造業者協会(いまは存在していない)の元会長。また、ゼネラル・モータース社の主席ロビイストをつとめた。
Condoleezza Rice, 国家安全保障担当補佐官
シェブロン社は、2000年8月、石油タンカーに前役員だったRiceの名を冠した。ブッシュ政権との協議の後、4月にそのタンカーは改名された。Riceは、金融会社であるチャールズ・シュワブ社、保険会社であるトランザメリカ社の役員でもあった。
Mitch Daniels, 行政管理予算局局長
製薬会社イーライ・リリー社の元副社長。
John Graham, 行政管理予算局の情報規制部部長(指名)
ダウ・ケミカル社、化学製造業者協会、塩素化学協議会、その他の業界団体が資金供与するシンクタンク、ハーバード・リスク分析センターの所長。同センターは、健康や安全性、環境に関わる規制の大部分のコストはその便益を上回っていると主張している。
James Connaughton, ホワイトハウス環境基準に関する評議会議長
ゼネラル・エレクトリック社とアトランティック・リッチフィールド社がスーパーファンド法による用地浄化を不服として環境保護庁を相手取って起こしていた訴訟で、両社に対して法的助言を与えていた。
Gale Norton, 内務長官
NLインダストリーズ社の元ロビイスト。同社は、その塗料に含まれている鉛に子どもたちを曝露したとして裁判に訴えられた化学会社である。Nortonは、業界が支援する環境主唱者連合の全国会長を務めた。環境団体「地球の友」によると、この「えせグリーン」団体は、クアーズ・ブルーイング社、米国森林製紙協会、化学製造業者協会から資金を得ている。
J. Steven Griles, 内務長官補佐(指名)
石炭、石油、ガス開発会社であるユナイデッド社のロビイスト。石油、石炭、電力業界の利権を代表するワシントンを本拠地とするロビー活動会社「全国環境戦略」の元副社長。ここには、オクシデンタル・ペトロリアムや、米国鉱山業協会、エジソン・エレクトリックなどが加わっている。
William Geary Myers, III, 内務省民事弁護士(発表)
米国牧畜業者牛肉協会と、払い下げ公有地協議会のロビイスト。
Linda Fischer, 環境保護庁副長官
バイオテクノロジー企業への転身を図っている農業化学会社、モンサント社の政府関係担当副社長をつとめた。
Ann Veneman, 農務長官
世界最大のフルーツ・野菜の生産者であるドール・フーズ社のロビイスト。また、モンサントに買収された農業/バイオテクノロジー会社のカルジーン社の役員でもあった。
Francis Blake, エネルギー副長官(指名)
産業界大手のゼネラル・エレクトリック社の上級副社長。同社の汚染は米国内で、スーパーファンド法にひっかかる汚染用地をどの企業よりも多く生み出している(全部で47ヶ所)。
Robert Card, エネルギー次官(指名)
閉鎖されたコロラド州のロッキーフラット核兵器工場で、原子力安全基準に違反したとして100万ドル近くの罰金を科された核廃棄物浄化請負業者、カイザー・ヒル社の社長兼CEO。
Donald Evans, 商務長官
デンバーに本拠を置く石油会社、トム・ブラウン社の元役員。
Norman Mineta, 運輸長官
防衛コントラクター、ロッキード・マーチン社の元副社長。
Tommy Thompson, 保健省長官
フィリップ・モリスたばこ会社の株を所有。同社は、彼がウィスコンシン知事に立候補したときに選挙資金を提供し、当選につなげた。
Elaine Chao, 労働長官
ドール・フーズ社と、クロロックス社の役員をつとめた。
Paul O'Neil, 財務長官
世界最大のアルミメーカー、アルコア社の元会長。インターナショナル・ペーパー社の社長や、イーストマン・コダック社とルーセント・テクノロジー社の役員をつとめる。
Donald Rumsfeld, 国防長官
製薬会社G.D.サール社(現ファーマシア社)の元CEO。ケロッグ社、ギレアデ・サイエンス社(バイオテクノロジー会社)、および、シカゴ・トリビューンとロサンゼルス・タイムスを所有するトリビューン社の役員をつとめる。
Thomas Sansonetti, 環境天然資源担当次官(発表)
レーガン・ブッシュ政権の幹部をつとめた後、民間の弁護士業に戻り、鉱山業会社と石炭業界の代表をつとめる。鉱山業の利権を代表して証言し、連邦政府の公有地でさらに採掘を行う必要があると主張した。
(翻訳:枝廣淳子)
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