温度管理

なかなかむずかしい温度制御
一定の品質を保つにはどうしてもクリアーしなければならない関門です
私の経験を参考にいろいろとアレンジしてみてください


燻製と温度

燻製は下拵えから製品の貯蔵までそれぞれ決められた温度があります。生ハムの燻煙は10℃以下、ベーコンは60℃または65℃が要求されます。塩漬や製品の保存は10℃以下です。

周囲より温度を上げることは比較的やさしく、下げるには大きな装置が必要です。ここでは趣味の燻製として加熱だけを対象として温度制御方法をとりあげました。もちろんプロは冷却装置付きの燻煙装置を用いて真夏でも生ハムを生産します。

コントロールされた温度は均一な製品を作るための大きなファクターです。しかし、15℃から40℃は細菌の繁殖温度ですから魚や肉をこの温度に長時間放置するような加熱条件は避けるようにしなければなりません。目的温度に上昇してから魚や肉をセットします。

温度コントロールの基本

温度のコントロールは加熱装置による温度上昇と、外気への放熱による温度下降のバランスから成り立っています。ですから夏には充分なヒーター容量であっても冬には不足して目的の温度に達しません。また箱容量・外気温度・ヒーター容量が同じであっても容器が金属と木製では大きく異なります。金属箱に風が当たれば大きな熱損失が生じてヒーター不足が生じます。地域と季節はもっとも大きな要素となります。

目的の温度に達してヒーターがOFFになっても余熱で少しのあいだ温度は上がりつづけます。これをオーバーシュートと言います。また温度が降下してヒーターがONとなってもすぐには温度が上昇せず下降を続けますのでコントロール状態にあっても一定の幅で温度が上下します。一定の幅で温度が上下することをハンティングといいます。ハンティングの大きさは箱の容積・箱の材質・外気温・ヒーター容量などいくつかの要因が関係します。

その他の条件としてディファレンシャス(調節感度)があげられます。制御装置は、たとえば60℃になったらOFFとなり、59.9℃にさがったらONとなるようには作りません。制御幅をせまくすることによる頻繁なON/OFFは制御装置の寿命を著しく短くしてしまいます。そのためONになる温度とOFFになる温度に数℃の差を付けて作成します。これがディファレンシャルです。
狭い範囲を制御するには比例制御方式が適当です。

温度調節に必要な器具

(ON/OFF方式)

1.制御装置

1-1.OMRON電子サーモ
電子サーモ E5L−BX1(8800円)+ソケット PTF14A(700円)
この装置は制御部、サーミスタ、温度計がセットになっています。ディファレンシャルが調節できます。性能は次のとおりです。

・制御温度 0−100℃ ・ディファレンシャル 0.6−4℃ ・使用周囲温度55℃以下
・ON/OFF 20A/100V ・サーミスタコード長 50cm ・本体サイズ 35*45*70mm

燻製用として充分使用可能な規格と思われます。

1-2.ロバートショウ液圧式サーモスタット
温度管理ロバートショー


以前私が使用していたものです。とにかく丈夫です。多くの恒温槽や孵卵器に使われて誤動作しないことが確認されています。たくさんの種類がありますがB10−L2S(15500円)をおすすめします。温度計は別途用意する必要があります。感温部分(先端の太い部分)にアルミホイルを巻き煙中のタール分から守るようにして時々交換します。
性能は次のとおりです。
注)ディファレンシャルは感温部を水中に浸けた時の値です。空気中では幅がひろがります。

・制御温度 15−120℃ ・ディファレンシャル 1℃ ・使用周囲温度 80℃以下
・ON/OFF 20A/100V ・キャピラリー長 120cm ・本体サイズ 44*70*40mm
三幸株式会社

理化学機器をあつかってくれるところで取り寄せてもらえます。

1-3.IC温度センサーとリレーによる制御
温度センサーとしてLM35DZを使用した制御器です。ヒーターを直接制御できないのでリレーを介してコントロールします。チェックポイントの電圧を測ることによって設定温度と現在温度を知ることができます。1Vの電圧メーターで100℃まで直読できます。

我が家では春に1000株以上の花を育てる発芽用の保温箱に使っていますがもちろん燻製にも大丈夫です。模型店や電気部品屋にキットとして販売していますので自分でハンダづけして組み立てます。
2013/02/14 追加
キット:梅澤無線電機 LM35を使用した温度スイッチ 1890円
リレー:OMRON MKS2P AS100 10A 2回路 1920円
リレーソケット:OMRON PF083A-E 840円
注)リレーは100V 10A 2回路をコントロールできますが、一台のヒーターを2回路に振り分けて使用することはできません。


1-4.デジタル制御装置を使う

温度管理デジタル調温器 99/11に完成した燻製箱に使ったコントローラーです。
部品:価格は98年の正価です
・調温器 OMRON社製 E5CS−Q1G 100V〜240VSSR駆動警報ありサーミスタタイプ 20,500円
・調温器用ソケット OMRON社製 P3GA−11 裏面接続タイプ 590円
・サーミスタ OMRON社製 E52−THE5A 0℃〜100℃ 1,890円
・SSR OMRON社製 G3NE−220T(20A) 75V〜264V 1,620円
・放熱器 OMRON社製 Y92B−N100 1,350円



配線方法は調温器に添付されています。

OMROM社製品は下記の会社から買いました。相談にも乗ってくれ、地方発送もしてくれて便利です。ヒーターも種々そろえています。
坂口電熱KK東京都千代田区外神田1−12−1 Tel 03−3253−8211

サーミスタの抵抗から現在の温度を知り、調温器に設定した温度より低ければSSR(半導体リレー)をONにしてヒーター電源をコントロールします。
サーミスタは15℃で約3Kオームほどありますから10m以上は延長できます。
寒い冬に外に出なくてもデジタルで温度がわかり、調節もできる便利なコントローラです。
SSRは半導体ですからヒーター側がショートすると一瞬の内に破壊されON状態になってしまいます。対策としてSSRとヒーター間に瞬断ヒューズを挿入しなければなりませんが、札幌では入手できませんでした。

2.ヒーター
写真にあるようなヒーターが多くの電気器具メーカーから販売されています。350W+350Wで切り替えて使えます。上記制御装置で2台まで直接制御できますので350Wから1400Wまで選択できます。

普通の家庭で700Wを一時間稼動させると20円ぐらい掛かります(北海道電力)。
ヒーターを二台使用する加熱ベーコンで全行程10時間。外気温によりますが多くとも1/2がONと計算すれば、1.4KW*10時間*1/2*28円(1KW/hr)=196円となります。
電気の領収書に1KW/hrの料金が載っていますので計算してみてください
ジタル調温器を使った新しい燻製箱の2KWのヒーター(富士コンロ製 坂口電熱で購入)です。




3.温度計

OMRONのE5L−BX1には温度計が付属しているので問題ありません。LM35DZを使ったものは電圧で温度を知ることができます。
私の使用しているものは料理用のものと思いますが記憶がはっきりしません。右端はデジタル温度調節器の表示です。
液晶デジタル温度計にはいろいろな種類が販売されています。計測温度範囲、使用周囲温度、電池交換に注意してください。

温度管理アナログ温度計 温度管理デジタル温度計1 温度管理デジタル温度計2

共通注意事項

・ヒーターを二台使用すると14Aの電流が必要です。電源コード、内部配線コードは余裕のあるものを使ってください。壁のコンセントやブレーカーに余裕があるか?、使用中にコンセントなどが発熱していないか?、チェックしてください。余裕のない場合は配線例のようにブレーカー系列(子ブレーカー)の違うコンセント2ケ所かに接続します。余裕があればAの矢印から先(下段配線)は必要ありません。

・制御装置の温度目盛りは目安ですからかならず温度計であわせてください。

・制御装置、リレー、温度計、パイロットランプなどはすべて煙を嫌います。制御装置を燻製箱内にセットするときは小箱に収め、建築用シリコンシーリング剤で充分な防煙加工を行ってください。温度計の先端部分や制御装置の感温部分は煙中のタールから守るためアルミホイルを薄く巻き付けます。
燻煙中は箱内に設けたコンセントからヒーターのプラグを抜いてはいけません。

使用例

ともにロバートショウを用いたものです。

F氏は鉄製の燻製箱を使っていますので穴をあけずに使えるよう缶の底から挿入するように作りました。制御装置を入れるアルミの箱の後ろにキャピラリーを支えるアルミ板(幅10mm 厚2mm)をネジ止めし、これにキャピラリーを針金でくくりつけました。アルミ板もキャピラリーも手で簡単に曲げることができるので容器にあわせて加工します。
この燻製箱は底が開放状態ですので風のあたらない場所を選ぶ必要があります。またキャピラリーの余った部分をアルミ箱に収めてしまいましたが温度制御上からはまずい設計でした。キャピラリー全体を燻製箱に挿入する必要があります。
温度管理F氏 1 温度管理F氏 2

私が以前使っていたものを示します。木製(コンパネ使用)でサイズは90*90*180cmあります。ヒーターは二台使います。木材は大量の空気を含み箱内の温度がなかなか上がりませんので、内部にはテンプラガードとして売っている薄いアルミ板を画鋲で貼り付けています。制御装置、温度計、電源ソケットは塩ビ管の「掃除口」のなかに収めてありますので防水効果は万全です。
覗き窓は2ケ所設けましたが内部に光源はありません。温度が定まればその後の温度チェツクは不要で長時間安定した温度が得られます。
コンパネ製箱 コンパネ製箱 コンパネ製箱 生ハム燻煙中

配線例

ロバートショウ液圧式サーモスタットの配線例です。
ロバートショウ配線例
ヒーターを一台しか使用しない場合か、または二台であっても一つのコンセントから17A(14Aに余裕を加えて)を取り出せる場合は矢印Aから先(下段)の配線は必要ありません。配線図どおり作ったら、プラグ(a)をそれぞれ子ブレーカーの系列が違うコンセントへ差込んで使います。

上段配線のAC入り口にはスイッチを設けませんでした。通常使う時だけコンセントに接続すると思いますし、タイプB10−L2SにはOFFポジションがありますので必要なしと判断しました。もしスイッチを付けるならヒーター一台につき10Aの容量が必要です。
配線には充分な容量の電線を使ってください。

a.100V/AC プラグ
使用するヒーター一台につき電気容量は8.5Aを必要とします。ブレーカー容量をチエックしてください。
b.ヒーューズ
使用するヒーター一台につき10Aのヒューズが適当です。
c.スイッチ
なくても可。目的温度まで達したところでこのスイッチを切れば一台のヒーターがOFFになるためハンティングの少ない制御ができます。スイッチの容量は10A/100V.AC以上を使用してください。
d.ロバートショウ液圧式サーモスタット
タイプ B10−L2S
e.リレー
ロバートショウ液圧式サーモスタットのON/OFFに同期するためのリレー。
駆動電圧100V/AC 、開閉規格 100V/AC 10A以上(できれば12A)を使ってください。
f.抵抗入りネオンランプ
ヒーターのON/OFFにかかわらず電源が接続されていれば点灯します。
g.抵抗入りネオンランプ
ヒーターがONのとき点灯します。は色違いを使用します。
h.ヒーター用コンセント
コンセントを箱内に設置する場合は煙の侵入に注意する必要がありますが防煙に対する有効な手段を持っていません。いい考えがあったら教えてください。

熱源と電気の危険性を充分に考慮して設計施工してください。また制御装置の詳しい特性は各メーカーに確認してください。メールをくだされば微力ながらアドバイスいたします。