発色剤・静菌剤 その2 |
経緯:
1954年、英国の研究所で4名の研究員が肝硬変を患い、その内の一人が肝ガンで死亡し、その原因が研究に使用していたジメチルニトロソアミンにあったことが判明した。1957年、家畜飼料のニシンの防腐のため亜硝酸塩を加えたためにジメチルニトロソアミンによる家畜中毒が発生した。ジメチルニトロソアミンはN−ニトロソアミンの一種です。
1967年にはN−ニトロソアミン化合物のガン原生が確認された。1968年にはラットに亜硝酸塩と第二級アミンを同時投与して胃内容物からN−ニトロソアミン化合物を確認した。
このような経過を経てN−ニトロソアミンの発ガン性が確認され、その物質が亜硝酸塩とアミンによって胃内において合成されることが確認されました。
我々の生活とN−ニトロソアミン:
N−ニトロソアミンは、毎日摂取する食品に含まれている硝酸塩から生成される亜硝酸塩(主として口腔内で生成)と肉または魚(特に焼いた魚)に含まれるアミン類が化学反応を起こして発生する物質です。
日本人の多くは魚を食べ、多くの野菜を摂取します。食べる前は問題のない二つの物質がN−ニトロソアミンに変化するには次のような条件(絶対条件ではない)が必要です。
- 亜硝酸塩とアミンが存在すると酸性側でニトロソアミンを生成する。
- ニトロソアミンの生成は亜硝酸塩濃度の二乗に比例する。
- 生成反応の至適pHは、ニトロソジメチルアミンでpH3.4、ニトロソジフェニルアミンではpH1.0である。
以上のような生成条件のため食品からの一日摂取量はジメチルニトロソアミンに限ってみると日本では0.5〜1.8マイクロg、アメリカ・西ドイツでは1.1マイクロg、英国では0.5マイクロgと微量です。食品から摂取する数十倍から百倍以上のN−ニトロソアミンが体内で生成されているものとされます。特にpHの低い胃の中での生成が盛んです。
欧米人にくらべれば大量の野菜を摂取する日本人においては体内で大量の亜硝酸塩が作られ、蛋白源としてして摂取する魚に含まれるアミンが主として胃内において反応してN−ニトロソアミンが生成されています。
結語:
食物として摂取する硝酸塩の89.9%は野菜からの由来です。体内の亜硝酸塩の約93%が口腔内で硝酸塩から生成されます。
食品として摂取するN−ニトロソアミンの数十倍から百倍が生体内で亜硝酸塩とアミンから合成されています。
結局野菜類の硝酸塩を減らすことが、N−ニトロソアミンの生成を防ぐ最大の対策であり、ひいては農業のありかたも改善していかなければならない広範囲な問題も孕んでいます。
N−ニトロソアミンの生成条件を挙げましたが生成を阻害する方法も研究されています。アスコルビン酸、ポリフェノール類が亜硝酸塩を分解したり、N−ニトロソアミンの生成を阻害します。食事ととにも日本茶を飲む風習は合理的な意味があるのかも知れません。
まとめ
この文章は添加物としての硝酸塩・亜硝酸塩の危険性を取上げている多くの読物に対して弁明し、両添加物への正しい認識をいただくために作りました。その目的はほぼ達成されたと思いますが私の心は複雑です。
調べていくほどに硝酸塩による土壌・地下水の汚染や、多量の施肥や育成期間の短縮などによる高硝酸塩野菜が出回っているため硝酸塩摂取量が増える傾向にあることを知ったからです。その修復には長い時間と生産者と消費者の自覚と努力が必要であると感じました。
「硝酸塩の大部分は野菜から摂取している」と言っても食肉加工における硝酸塩・亜硝酸塩の使用が絶対的に安全なわけではなく、可能な限り減らしていく努力も欠かせません。また硝酸の体内代謝が100%解明されていないということも私自身肝に銘じておかなければならないと思っています。今後も勉強を続けなければならないと思います。
最後に、私の立場は生産者ではなく趣味の燻製製作者であるということ。添加物を擁護している者ではなく添加物として加える硝酸塩・亜硝酸塩のみを弁明したにすぎないことをご理解ください。
「趣味で作るなら無添加でよいのでは」という意見に私は与しない者です。無添加こそプロの売り言葉になっているのは皮肉なことです。なぜなら硝酸・亜硝酸が無添加であることによって得られる利益は消費者に少なく、生産者にこそあるからです。
国立医薬品食品衛生研究所
下記のHPにあるNO3-が硝酸根 NO2-が亜硝酸根です
生鮮食品中の硝酸塩,亜硝酸塩含有量
加工食品中の硝酸塩,亜硝酸塩含有量
1998年日本学術土壌・肥料・植物栄養学研究連絡委員会
「土と水と食品の窒素をめぐる諸問題」
スパイスと亜硝酸からC−ニトロ系変異原が発生
野菜が糖尿病をひきおこす?
家畜伝染病発生情報データベース
食品添加物としての硝酸塩・亜硝酸塩の危険性を指摘しているHPはたくさんありますのでここには載せていません。