生ハム

燻製を作り始めた人が抱く一つの到達点は生ハム作りでしょうか
以下の方法で、技術的な問題は解決します
技術より重要なのは、根気と気象条件です
気象条件にあわせた技術の開発が必要です
人工的な加温・冷却をまったく使用しない、自然が生んだ味わいです


生ハムの種類

生ハムといってもその意味するところは国によって、地方によって異なります。
生ハムは大きくわけるとイタリアタイプとドイツタイプがあります。イタリアやスペインのハムは発酵製品で煙はかけません。パルマハムが有名です。
ここで作る(または目指す)ハムは、分類的にはドイツハムに属し、塩蔵・燻煙・熟成・乾燥の工程で作成します。
もちろんドイツハムと一括しても地域によって、原料の豚によって、温度や湿度、乾燥度等々によって著しく異なる製品がえられますのでどれか正しい生ハムかの議論は意味を成しません。
まさしく「自然が生んだ」と言えましょう。


製造過程

燻煙の20日間、乾燥と熟成の50日間すべての行程が10℃以下でなければなりません。
私自身は北海道の気候そのままに全行程を -5℃から +5℃、湿度35%前後で作成しています。この温度と湿度は一般的な参考書に比べ低いのですが、これが北海道らしさを表現していると信じております。
全工程で70日間を要しますので器具や手指は熱湯消毒・洗浄して操作してください。
我が家での漬込み開始日は毎年11月第一週目です。完成は翌年2月下旬です。

生ハム 豚モモ肉

材料
・豚もも肉 1.5Kg・亜硝酸ナトリウム0.3%含天然塩40.5g・三温糖10g
・粗挽き胡椒12g・刻みジェニパベリー3g
・豚肉はなるべく新鮮なものを使う。枝肉解体をしている肉屋で予約すればまちがいありません。

生ハム 調味料を擦り込む

摺込み
・調合した調味料を肉にすり込む。・肉の断面や溝にも指ですり込む。
・まな板に残った調味料に肉をこすり付けるようにしてすり込む。

生ハム 塩漬け

塩漬け
・1小片のニンニクをスライス・鷹の爪1本。
・漬物用ビニール袋に肉の脂肪を上にして、間にニンニクと鷹の爪を挟んで漬け込みます。肉と肉の間に隙間ができないように詰め込みます。
・重しは肉と同量。冷蔵庫に保存。

漬け込んだ肉は毎日積み替えます。袋から肉を出して、下に溜まった浸出液を汲み取り、上にあった肉から詰め直し、取り置いた浸出液をかけまわします。
7日間つづけたら次の工程にかかります。


肉をぬるま湯ですばやく洗い、香辛料や表面のヌメリを落とします。
冷水の溜め水を10分置きに換えて1時間塩抜きします。長年の経験から言えば塩抜き加減を見るための味見は必要ありません。

生ハム 薫煙下拵え 下拵え
・ブヨブヨと付いている余分な脂肪を少しけずりおとします。写真手前の赤い部分は脂肪を削りすぎた状態です。
・削り取ることによって乾燥が均一に進みます。
・凧糸て゜肉に厚みがでるように縛り釣り下げられるようにします。形がふぞろいだと成熟や乾燥にばらつきが生じます。あらびき胡椒を表面にまぶすなどの変化もたのしい工夫です。
・表面が乾燥するように一週間車庫内につるしておきます。
生ハム 薫煙

燻煙
・燻材は桜。燻材を10本用意し、鋸で縦に2つに切って一日一本使用します。約3-4時間燻煙。
・冬の日でも燻製箱に陽があたると温度があがりますので夕方から始めます。
・肉と燻材の間隔は50cm以上を理想とします。

夕方からはじめて燻煙を終えたら車庫内に保存。時には次の日の昼間に外気に当てます。これを20日間つづけます。
車庫内は外気より5度ほど高く、真冬でも肉が凍ることはありません。また雪が降り出すと保温効果もあり屋根に積もった雪は太陽熱も遮断してくれてかなり一定の温度が保たれています。庇と壁の間から外気が入りますので換気も充分です。
それぞれの状況に合わせて熟成・乾燥の場所をさがしてください。

生ハム 外気にあてる


生ハム 成熟・乾燥

熟成・乾燥
・生ハムは車庫の中で静かに乾燥・熟成していきます。
・あまり寒くない日は(熟成時期は外気が -10℃近くにさがります)外気に数時間出します。絶対凍らせないように注意。
・その年の温度と湿度によって仕上がり時期が異なります。乾燥が激しいと表面だけがガチガチになります。
・2月にはいったら指で挟んで弾力を確かめて仕上がりを決めます。

生ハム スライス
完成品大写し

スライス
・スライサーで薄く切ります。厚く切るよりも薄い方が美味と思います。
・真空パックで保存します。10ケ月以上美味しく食べられます。
・冷凍保存も有効ですが、水っぽくなり塩がきつく感じられます。
・真ん中の柔らかい部分も、端の硬い部分もそれぞれの美味しさです。