脱気・包装装置を買う

一般的には「真空包装」などといいますが、趣味の世界では大げさすぎます
せいぜい「脱気」がいいところです。いままでの脱気装置の遍歴と現在使用中のものを説明します

脱気しても殺菌効果はありません
ただ燻製が酸化することとカビの増殖を防いでくれるだけです 安心してはいけません


手作業脱気

最初に脱気装置を使ったのは燻製をはじめた十数年前です。たしか象印の製品で友人M君がくれたものです。
脱気部分は手動で、石油ポンプの蛇腹部分を太くしたものを押すものでした。さすがにこれではバッグにある大量の空気は吸引できますがとても力が弱くて、重ねられた材料の間に空気が残ってしまいました。でも1〜2年使ったでしょうか。


キッチンシーラー

初めて買ったのは東芝のキッチンシーラーMF−20Vという機種でノズル方式でした。これは8年以上使ったと思います。
簡単な装置ながら気持ちよく脱気ができるので重宝しました。シールと脱気が独立し、シール時間が変更出来るうえにヒーター線が二重になっているので保存中に空気が入ることも少なかった。

バッグは旭化成のキューパックを使用していました。このバッグにはポリ塩化ビニリデンが使われていたので酸素透過率が低く保存性においても優れているものでした。現在キューパックで探しても松下のキューパックとして売っているだけです。松下の真空パックの機械の指定として生き残っているのでしょうか?。問合先のサランラップ販売のHPにはすでにキューパックはありません。関連品は旭化成パックスに移行したようですが移行先にもキューパックはありません。「飛竜」シリーズがそれに該当するようです。

そのうちに内蔵のポンプが壊れてしまい、会社で捨てるというダイアフラムタイプの真空ポンプをもらって接続して使っていました。

真空ポンブ外付けでも活躍するMF−20V

最後には真空ポンプも壊れてしまったが、いまだにシール専用機として我が家では活躍しています。


フードセーバー

MF−20Vが完全に使用できなくなったころ見廻すと家電メーカーで売っていた国産の真空パック器は見当たらず、すべて輸入物に取って代わられていました。テレビでも宣伝していることが多く、種類は多くなっていました。

1999年フードセーバー(29,800円)を買いました。

フードセーバー

この機械には指定のバッグがあり、キューパックのようなツルッとしたものではなく斜め90度で交わる空気抜きのための溝がついたものです。
機械には空気を吸い出すノズルがなく、バッグを挟み込む部分は上側に少し硬いゴム、下側が発泡スポンジという構造です。
このような構造ではバッグ側に空気抜きのための溝が必要なのだと知りました。

バッグは一定の大きさに切ったものとロール状のものがあり、ロールものはたとえば鮭一本でもパックできる利点があります。
バッグの溝は真空引きしたときにも潰れずらく、なおかつ最終的には真空で潰れなければならない。そのためには材質の硬さが重要であるが、実際に使うとなかなか問題があることがわかります。
2003年にバッグのメーカーのティリア社が価格を上げてきたとかで国産らしいバッグに変更になりました。そのため90度クロス溝ではなく縦一直線溝になって、なおかつゴワゴワとした質感に変化しました。明らかに90度クロス溝バッグより劣るものでした。「90度クロス溝」はパテントでもあったのでしょうか?。

純正、国産ともにポリ塩化ビニリデンを使用していないので酸素バリア性能は低いとおもいます。そのため脱酸素剤は使用できませんし、あきらかにカビの生えるものが多くなりました。
この機械を販売している某社は「塩化ビニール系」を敵視していて、焼却炉でダイオキシンが発生するというのがその理由のようです。

性能としては「一分間に一回」と表示されているので多数をパックするには向きません。真空度が設定値(固定)に達すると自動的にシール作業に移ります。

結局は吸引が弱くなって、ヒーターもお粗末なので2005年11月に引退となった。


SQ−202

急遽脱気装置を購入しなければならなくなりました。なぜなら外には鮭の燻製がぶら下がっており、数日中には完成するからです。
時間もありません、お金もありません。

まずは装置に望む性能は:
1.真空度が高い。
2.酸素透過度の低いバッグが使える。つまり脱酸素剤が使える(20cc/m*m・24hrs.atm20℃以下のパックで使用可能)。
3.高価を望まず(望めず)。
4.一生物(つまり10年は使えること)。そのためには交換部品を長く供給してもらえる国産機が良い。

高真空で高価であればチャンバー式が良い。我が家は200V三相もOKなので受入れ態勢は万全です。。
チャンバー式は袋の中を真空にするのではなく、燻製を入れたバッグをチャンバー内に入れてチャンバーを真空にするので袋の中に空気が残る率が低くなり、高真空が得られることになる。しかし40万は必要だ。

次の選択はフードセーバーのような簡易な装置である。しかし上記の条件のほとんどを満足させない。かろうじて「安価」のみが合格である。

最終的には製造元 シャープ 販売元 旭化成パックスのSQ−202に決定しました。姉妹機としてSQ−303がありますがシール幅は202が広く、アルミ構成ラミネートは303(上下ダブルヒーター)でしかシールできません。
謳い文句は「業務用」です。上記条件の1.は満足できませんが、これぐらいが妥当なところでしょう。購入はシロ産業さんです。

旭化成SQ−202



早速使用した感想を以下に述べます。
1.重い
まず荷物が届いて持ち上げようとしましたが重くてちょっと躊躇しました。実際には13Kgなのですが、「卓上」とは言っても移動せずに使うことが前提のようです。昔から機械は重いことが良いといわれていましたので、とりあえず安心しました。しかもこの重さは吸引ポンプだけではなく、機械を取り付けてあるフレームもしっかりしているためと思われます。ただしバラしてなかを見る何時もの癖を出すことはやめました。

2.電源コード
電源コードがどうしたと言うんだ!なんていわないでください。電源コードについては深い想いがあるのです。簡単にいうと、たとえばコンピュータの電源コードがやたらに太くて硬い、おまけに梱包時に短く畳んだ折癖がいつまでも取れずレイアウトに苦労することが大嫌いです。腹立たしい。美しくない。
その基準からいうとモーターが付いていて500Wにもかかわらず柔らかな癖のない電源コードを使っていることはうれしい設計です。

3.脱気・封印
吸気時間も調節可能です。吸気時間をセットすると一定時間後にノズルが後ろに引き抜かれシール作業が始まります。また吸気を連続にセットし脱気状態を観察してシール開始ボタンを押す方法も可能です。吸気+シールの1分間の最大連続回数は3回です。

操作盤



バッグのなかにノズルを入れて空気を吸引します。
ノズルは狭いバッグの空間から空気を抜こうとします。当然バッグがノズルに密着し脱気がとまります。これがノズル式の一番の問題です。それを防ぐためにはまず品物とノズルの距離を短くする必要があります。しかし短くすると内部の水分がノズルのなかに吸引されやすくなります。
吸引しながらノズルのあたりを伸ばしたり揉んだりして密着を防ぐ必要があります。

2011/10/16追加
ベーコンなどの薄いものを入れて脱気するときのコツをつかみました。品物とノズルの距離を短くすると同時に、写真にあるように吸引開始から手のひらでバッグを左右に強くなで、同時にノズルに近い方向に手を滑らせます。この方法で成功率が高まります。

バックをなでる

バッグの長さは内容物の上端から6cmは必要で、内容物の上端から5cmのところがシールされます。もう一度シールだけすると3cmになります。
シール専門の器具があればもっとスマートに仕上がります。

ノズルから吸い込んだ水分はトラップにたまるようになっていますがせいぜい100ccぐらいですので水分の多いものは無理です(水物用のオプションがあります)。少しでも水分・油分を吸引したらノズルからトラップの間を洗浄する必要があります。ノズル洗浄のための器具が付属していますが有効とはいえません。ノズルの両端にある肩の部分に汚れがたまります。ノズルを外すことは簡単です。外したノズルはぬるま湯の洗剤に漬けて水洗いしてからエアーダスターなどで吹き飛ばし、汚れがとれるまで繰り返します。

吸引中 吸引ノズル

ポンプも含めて洗浄することが可能で、そのためのホースも付属しているのはいかにも「業務用」で長期使用に耐える設計になっているようです。



総合的な見解:
商売で使用していることが多いようなので部品等の在庫は問題ないと思います。作りもしっかりしているので長期間使用が可能なものと思います。
吸引ノズルの構造から脱気には少しコツが必要です。ゴロゴロしたホタテや鮭などは問題ないのですが、ベーコンのようなペタッとしたものを脱気するのは修練が必要です。幅20cmのバッグはノズルの近くを揉んで吸い付きを防いで脱気することが可能ですが30cmになると指が届かずに苦労します。
酸素透過度の低いバッグ+脱酸素剤を使用することによって脱気の不備は補えると思います。少なくとも酸素透過度の低いバッグを使用すればカビの発生はかなり防げます。

価格からいっても気軽に勧めるには躊躇しますが、燻製を安全に保存するのであればこれを購入するしかありません。
しかし、本音を言えばフードセーバー + クロス溝付きバッグにポリ塩化ビニリデンが使用してあれば、コツもいらずにお手軽に脱気できるのにと、フードセーバーのために残念に思います。

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