P.S.T.双眼 その2
ダブル・スタック双眼!

  公開:2012年9月28日〜
更新:2013年8月30日 *Takahashi Abbe 9mm を追加しました。


ダブル・スタックの双眼化 (2012年9月28日)

 いろいろな太陽を見たい。同じHαでも、また別な表情が見れるなら見ようではないか、という訳で、今年(2012年)の3月に、P.S.T.のダブル・スタックを注文した。友人は何ヶ月も経っているのに届かない、というのに、あっという間に(10日程で!)届いた。たまたまショップに在庫があった、という事なのだろうか。このダブル・スタック・ユニットを利用して片方だけダブル・スタックにしたのは報告したが、実は、このダブル・スタック鏡筒、驚異的に見えるのである。ダブル・スタックにしなくても、ダーク・フィラメントも恐ろしく良いコントラストで見え、しかもプロミネンスもしっかり見える。今まで見た 、どの8cmクラスより、はるかに優秀なのである。

 
我が家の望遠鏡には、全てOAカヴァーがしてある。サッと取って、すぐに見れる。

 これが寝室の出窓に置いてあり、朝、起きたら、余程の曇天で無い限り、薄雲を通してでも、必ず太陽を見るのが日課となっている。我が家での驚異的稼働率の望遠鏡は、このP.S.T.なのだ。ご存知無い方のために申し上げるが、薄雲を通しても、けっこう いろいろ見えるのだ。見なきゃ損!


LE 10mm と LE 7.5mm

 以前は、CEMAX 12mm が最もプロミネンスがシャープで良く見え、ベスト、と報告したが、鏡筒の解像度が上がり、Takahashi LE 10mm を常用するようになった。さらに拡大しても像が崩れないので、LE 7.5mm も使うようになった。双方ともピント位置が同じなので、アイピースを換えれば、即、倍率を変えてしっかり見れるので、極めて高率が良い。P.S.T.の場合、ちょっとしたピントの位置や眼の位置で、随分見え方が変わってくるので、この利便性は絶大だ。 繰り返しになるが、チョイ見は損で、きちんとピントを合わせてじっと見ていると、いろいろなものが見えてくる。

 それにしても、シングル・スタックなのに、こんなに見えるのは、たまたま大当たりだからなのか、P.S.T.が進化したせいなのか、それとも、ダブル・スタックの鏡筒本体が、シングル・スタック鏡筒とは若干違うのか? いずれにしても、ダブル・スタック鏡筒を注文して双眼化し、チャレンジする価値は十二分にある。という訳で、P.S.T.双眼の鏡筒入れ替えを計画した。4月に注文し、実はGWにNYでpick upする事になっていたのだが、今度は、私のが来ない。 納期約1週間、という事だったのに、来ない。問い合わせる度に、答えは納期約1ヶ月。結局来たのは9月半ば過ぎだった。「このショップ、本当に大丈夫?」と途中、キャンセルしようか、との思う位イライラしたが、注文後、P.S.T.がけっこう値上がりしたので、じっと我慢した。

  やっと届いた鏡筒を見比べた。やはり進化したのか、新しい方が良く見える。ただ、最初に届いた寝室の出窓のP.S.T.が抜きん出ている。この鏡筒、たまたま大当たりだったようだ。結局、一番使用頻度の高い寝室の出窓にこれを置き、新しく来た2台で双眼の鏡筒入れ替え行った。

 ダブル・スタック・ユニットの直径は73mmなので、このままでは双眼にはならない。これを双眼にするには?
松本さんとは、いつもいろいろなアイディアを出し合っているが、以前、この段違いダブル・スタックのアイディアを教えていただいていた。では、将来、ダブル・スタックを入手したら、という事で延び延びになっていた。その内、先客に先を越され(2012年7月12日)、今となってしまった。

 

 原理は、ここも参照(2012年9月26日)していただくとして、段違いでダブル・スタック・ユニットを装着する、というもの。松本さんの凄いところは、こういったアイディアがポン、と出るだけでなく、左側の鏡筒に短いアタッチメントを装着して、きちんとクリアランスを取り、眼幅60mmですら双眼対応になっている事、そして、ネジ込みの回転位置まで考慮して干渉を避けている事、内径はきちんと42mm確保されている事、鏡筒へのねじ込み、ダブル・スタック・アタッチメントのねじ込みの工作制度のすばらしさ(本来のオリジナルは、もっと粗雑)だ。つまり、これ以外に無い、という正解が、そのまま製品になっている点が彼の真骨頂なのである。普段は、このアタッチメントを装着してレンズ・フードとして使用し、さあ、という時はダブル・スタック双眼となる。どうです、見事でしょう?

 ダブル・スタック・ユニットは、オリジナル・ケース(1個用)を加工して、2個入るようにした。さあ、届いた翌日の朝、ファースト・ライト、と思いきや、台風の影響で、おそろしく曇天。明日へ持ち越しだ。
 

ダブル・スタック双眼、ファースト・ライト (2012年9月29日)

  今朝は、朝から快晴。さっそく見てみた。まずは、シングル・スタック鏡筒単体、次にシングル・スタック鏡筒単体+アダプター装着、次にダブル・スタック鏡筒単体、次に鏡筒+アダプター+ダブル・スタック、そしてそれぞれの双眼、という具合にチェックした。

 シングル・スタック鏡筒単体のチェック。この鏡筒は優秀だ。ダーク・フィラメントのコントラストを上げると、プロミネンスが見えにくくなってくる場合が多いが、この鏡筒では高レヴェルで両立している。ただし、鏡筒付け根のリングの調整はシヴィア。本当に良くみえるポイントは1点しかない。まあ、外れてもけっこう見えるのだけれど...

 次に、シングル・スタック鏡筒単体にアダプター装着して、その影響をチェック。アダプター内径も42mm確保できているし、きちんとアルマイト加工がされているので、当然だが影響無し。

 次に、ダブル・スタック鏡筒単体をチェック。太陽表面のコントラストが1段upする。太陽表面から少し奥に入ったところを見ているような感じだ。ただし、プロミネンスは少し消える。

 次に、鏡筒+アダプター+ダブル・スタックをチェック。アダプターを介さないのと像は同等。アダプターでダブル・スタック・ユニットが離れる影響は無いようだ。

 最後に、ダブル・スタックの双眼。やはり双眼は良い! ダーク・フィラメントが浮き出て見えるような感じだけでなく、太陽表面のウズの表情が豊かで、活動の活発さがわかる。でも、シングルだとプロミネンスが派手に飛び散っているのがわかるので、まずはシングルで見て、次にダブルで見るのが良さそうだ。

 この約半年間、アイピースはTakahashi LE 10mm を常用していた。光球が大きくなり迫力は増すのだが、今回、改めてCEMAX 12mm の良さを再認識した。コントラストとプロミネンスの見え方が実にクリアで良いのだ。Takahashi LE 12.5mm もあるけれど、背景・黒のしまり具合はCEMAX の方が良い。で、出窓の驚異のP.S.T.のデフォルト・アイピースはTakahashi LE 10mm のまま、双眼の方は、CEMAX 12mm に戻した。
 

眼のこと (2012年9月29日)

  春頃から、P.S.T.双眼・左側の鏡筒の赤が濃く、やや暗めだなあ、と思っていたが、先週、左側の鏡筒を右眼で見て仰天! 鏡筒のせいではなく、眼のせいだった。左眼の方が、若干、赤が濃く、暗く見えるのだ。周囲に黄斑変性症の人が2人いるし、また、眼圧のチェックも長年していなかったので、あわてて眼科に行ってみた。 緑内障の疑いがある、との事で、2週に渡り精査したが、異常無し だった。瞳孔の開きが左右異なる病気があるが、それでもない。その後、双眼望遠鏡でもいろいろ左右の眼の比較を行ってみたが、月や恒星では左右差は無い。つまり、波長の長いところでは、左右で眼の感受性が若干異なる、という事なのだろう。耳だって、モスキート音が聞こえる人と聞こえない人がいるように、眼だって差があるのだろう。という事は、Hαは、人によって見えている像が、実は違っているのかもしれない。
 

Takahashi Abbe 9mm (2013年8月30日)

  ここに来て、各社からAbbe が出た。古くからZeiss 社製が有名だが、太陽望遠鏡には、今回出たシリーズが価格の点でも使いやすい。今、使っているのは、標準でTakahashi LE 10mm、さらに倍率を上げる時は、LE 7.5mm だが、このあたりに“よく見える曲線のピーク”があり、山は比較的急峻かもしれず、焦点距離9mmというのは、ちょっと試しておきたいところだ。アイカップがきちんと装着されているのでTakahashi Abbe 9mm を調達し、寝室のP.S.T.で見てみた。

 基本的には良く見えるし、P.S.T.用としても最適なアイピースの1つだと思う。ただ、2日間使ってみた印象では、LE の方が、若干表面のコントラストが良いかも、という印象もあった。ただ、薄雲がかかっていた時もあり、シーイングも刻一刻と変わっている時もあったので、まだ結論には至っていない。
 なお、このアイピースの見掛け視界は44°とLE の52°に比べ狭くなっているが、P.S.T.での使用には特に気にならなかった。また、惑星やDeep Sky等に、このアイピースを使う予定は無い。

    続く.....!
 

    P.S.T.双眼  その1へ

ご感想・問い合わせ等はこちらまで.

INDEX