また、次のようなこともありました。
一人の老バラモンがシャンカラを尋ねてきたのです。シャンカラは既に、「ブラフマ・スートラ」という教典に註釈を書き上げていました。そのバラモンは、シャンカラに対して「ブラフマ・スートラ」に関する論戦を挑んできました。当時は、聖典に関する論戦は珍しいことではありませんでした。
二人の議論は続き、互いに負けを認めることなく、白熱の度を増してきました。二人の論戦に注意深く耳を傾けていたシャンカラの弟子パドマパーダは、いまやはっきりと悟りました。なんと、その年老いたバラモン僧は、「ブラフマ・スートラ」を著わしたヴェーダ・ヴィヤーサ仙その人だったのです。
ヴェーダ・ヴィヤーサと
それに気がつくや否や、パドマパーダは二人の足元にひれ伏して語りました。「わが師シャンカラ様は主シヴァの化身であられます。そしてヴィヤーサ様は、ナーラーヤナ(ヴィシュヌ神)御自身であられます。お二人の議論の中にあって、私のような理解乏しき召使のごとき者に、いったい何が出来ましょう」と。
その老バラモンがヴィヤーサ仙であること知ったシャンカラはただちに議論をやめ、深い敬意をこめてヴィヤーサ仙の足元ひれ伏し拝礼しました。それを見たヴィヤーサ仙もまた、心からの祝福をシャンカラにおくり、語りました。
「汝は16年しか生きられない運命にあるが、神の恩寵によって、さらにもう16年生きられるように祈ってしんぜよう。ヴェーダの教えをいたるところに広めるために」。
彼はブラフマー神に祈りを捧げ、その願いは聞き届けられました。