はぁ。18歳です。
当然ながら実感なんかなくて、尚也と父さんと三人で横浜のレストランで食事なんかしちゃったりして、プレゼントなんかももらっちゃったりして。昨日と、なんら変わらない今日。
でも、そんな実感のなさとか、いつも通りってことが、改めて自分の幸せを再確認させてくれる。毎日が、誕生日と同じくらい幸せだなんて、恵まれてるよね、俺。
「じゃあ、私は病院に戻るから。尚也君、いつもすまんね。よろしく頼むよ」
レストランを出たところで、車のキーを持つ父さん。尚也は俺の隣で、いつものように微笑む。
「はい。先生も気をつけて」
「ちゃんと寝てね」
付け足すように言った俺は、ちょっとそわそわしながら父さんを見る。こんな時の父さんは、ちょっとだけ全てを分かってるんじゃないかと思わせるから・・・。
「あぁ、分かってるよ」
どうしてだか、ちょっとだけ間をおいて、父さんは微笑む。どうか・・・した?
俺は気になって、走り去る父さんの車をいつまでも見ている。あとに残るのは、耳障りな雑踏の音。すると、隣の尚也が、横を通り過ぎていくバイクの音に混じるような声で言った。
「益々、似てきたって」
「え?」
俺は、思わず尚也の横顔を見上げる。俺を見下ろしてくる尚也の視線が、妙に大人びて見えた。
「子規くんがね、益々お母さんに似てきたって。先生が、さっき言ってた」
車のライトが、尚也の背後から俺たちを照らす。俺たちは、ゆっくりと歩いてバイクの方に移動した。
そうか。あの時、父さんの目が見ていたのは母さん。だから、ちょっと遠く見えたんだ。
そういえば、母さんもよく父さんに言ってたな「ちゃんと寝てね」・・・って。
俺にとっては普通の言葉も、父さんの中ではしっかりと母さんに繋がってる。もしかしたら、父さんの目には、まだそこかしこに母さんが居るように映ってるのかもしれない。
きっと、俺以上に、父さんは母さんに会いたいに違いない。
「子規くん?」
口唇を噛んでいる俺を、尚也が覗き込む。ちょっ・・・ダメだってば。
尚也はそのまま、目を丸くして固まった。俺の頬を伝う、大粒の涙。自分でもコントロールできない感情に、俺自身もちょっとビックリしていた。
「・・・子規くん」
尚也は、俺の名を呼ぶと大きな手のひらで俺の頭をなでる。
「ごっ・・・ごめっ・・・俺・・・」
なんか、父さんの気持ちを考えたら止められなくって・・・。俺っていう「母さんが居たことの証」を見てて、辛くないのかな・・・とか。
「いいよ。はい」
後頭部に加えられる力。パフっという感じで尚也の胸に顔が押し付けられると、俺の頬にあった涙が見る間に尚也のシャツに吸い込まれた。
「どうせ、部屋に帰るだけだしね」
あくまでも笑顔の尚也。ちくしょー、なんか、かっこいいぞ。
人気のない駐車場で、俺はコットン100%の尚也のシャツに顔をうずめた。
You are the only one in this world.
月の光が、青い闇の中に尚也の輪郭を浮き上がらせる。俺は近づいてくる尚也の顔にそっと目を閉じると、重ねられてくる口唇に身を任せ、顔を傾けた。
絡められる舌。目を閉じたまま手を伸ばすと、熱い尚也の素肌に触れる。俺は少しだけ薄目を開けて、しっかりと尚也の首に腕を回した。一糸まとわない胸と胸が重なり、鼓動さえもがひとつになるような感じ。
自分の背中に尚也の腕が回されて、ぎゅっと抱きしめられる。その間も離れることなく触れ合う口唇が、言葉以上の想いを伝えてきた。
大好きだから、言葉にならない。それよりも、触れ合う肌と、交じり合う呼吸が、悲しいくらいに愛しい想いを伝えてくれる。
そういえば俺、いままでに何度、尚也に言葉で好きって言ったっけ?多分、そんなに言ってないよな?でも、分かってくれてるといいな、言葉が追いつかないほどの気持ちが、この胸の中にあるってこと。
尚也は口唇を離すと、じっと俺の目を見つめてくる。俺の胸を下りていく尚也の手が、俺の腰を辿り、そして俺のそれに・・・触れた。
「っ・・・」
背筋をゾクッと駆け上がってくる快感。尚也の腿の上で両足を開かされた格好は、ベッドの上とはいえ、かなり恥ずかしい。しかも尚也は、俺を見る目を逸らそうとはしないし。だから俺も、本当だったら目を閉じて恥ずかしさを紛らわしたいんだけど、それが出来ないっていうか・・・。
「子規くん、どうかした?」
ソッコーで元気になってる俺のコトを言ってるっていうのは分かるんだけど、わざとらしくクールな笑顔で言われると、益々恥ずかしいじゃんか!余計に、触られてるトコロが、反応・・・するし・・・。
尚也の手は、容赦なく俺のそれをいじり続ける。俺はあまりにも早くひくつく内股に、ちょっと待てよ!とココロでストップをかけた。だって、こんなに早くイッたら、それこそ尚也の思う壺。
「・・っ・・・ふ・・・」
や・・べ、こらえようとすればするほど、神経が集中して、マズイくらい感じてくる。尚也は俺がガマンしてることなんてお見通しで、俺の耳に舌を入れながら、低い声で囁いてきた。
「あれ?子規くん・・・泣いてるの?」
泣いてなんかないのに、なんのことだよ・・・と思った瞬間に、尚也が俺の先走りを拭うように、指先を細かく擦り付けてくる。ビクっと身体が震えて、目尻に涙が滲んだけど、かろうじて荒い息でやり過ごす。にしても、なんか・・・今までにない感覚で、かなりヤバイんだけど・・・。
「気持ちいい・・・?」
優しい声色なのに、きっとすんごくイヤラシイこと考えてるんだよな、尚也。ちょっとだけ、それがクヤシイ。
俺はかろうじて首を縦に振ると、尚也の胸に熱くなった額を寄せて、快感を逃がそうと俯く。尚也はそんな俺を見ると、俺のそこを擦りながら、もう一度耳元で囁いた。
「そうだよね、子規くんはもう18歳なんだから、手だけなんて・・・物足りないかな?」
うわっ!なんてことを言うんだよ!ってことは・・・ってことは・・・。
予想通りに、尚也は俺の足をさらに開いて、俺の胸に舌を這わせる。わ、だから乳首を口でつまむなってば。
「んっ・・・・・っ・・・」
そして尚也の頭はどんどん下に下がっていって・・・そして、宣告通り、俺のそこを口に含んだ。
「あっ・・・や・・・だ・・・」
熱くてヌルっとした舌が、俺のそれに絡み付いて動き出す。手でされるのとは異なる快感に、俺の腰がわなないた。
「や・・・じゃないでしょ?」
ばっ・・・か・・・そこでしゃべるなっつーのっ!それに、そんなにそこ・・・。
尚也が見えなくなった所為で、目の前に広がる窓からの景色。きらめく街の明かりが、妙に艶っぽく俺の目に映った。
「や・・・尚・・・っ・・・んっ・・・」
足を閉じたいのに、尚也の両手がガッチリと俺の足首を押さえてる。たまに焦らして俺の内腿を舐めたりしながら、尚也は何度も何度も俺のそこを咥えては舌を這わせた。
俺は声を抑えるのが精一杯で、他にはなにも考えられない。声が大きくなりそうになるたびに、自分の手首を軽く噛んだ。
「尚・・・っ・・・」
これ以上されたら、本当にガマンが追いつかなくなる。
たまった涙が目尻で弾けて、汗と共に頬を伝った。
You are the only one in this world.
「なんか・・・今日、イジワルだったよな・・・」
まだ熱いままの身体。俺はベッドにうつぶせになったまま、口唇を突き出してブーたれた。だって、本当にイジワルっつーかさ、プレイっぽいっていうかさ。
「意地悪?」
尚也は隣に座って、ハハッと短く笑う。ベッドを降りると、ミネラルウォーターの入った瓶を持って帰ってきた。
「一応、18歳の誕生日記念だったんだけどな」
「えっ!?・・・なにそれ?」
俺は美味しそうに水を飲む尚也を見上げながら、思わず聞き返してしまう。だって記念って、なにさ、それ。相変わらずな尚也の天然笑顔。マジなのか冗談なのかも、わかりゃしない。
「子規くんが忘れられないほど、気持ちイイコトをしてあげようってね」
瞬間、俺はバフっと尚也の身体めがけてクッションをぶつけてみる。なんじゃいそりゃ!も〜、ばか〜!おかげで腰が立たないんだからな〜〜!!
「あはは、気持ちよくなかった?」
う!それを言われると・・・。出会って、明日で丁度一年。そういうことをし続けて一年・・・ってことでもあるんだけども、毎度毎度、まぁ、結構なお手前で・・・。
「そりゃ・・・その・・・そういう風に聞かれると・・・」
すると、瞬間、弾けたように笑い出す尚也。正直に答えたのに、なんだよう!やっぱり笑うのかよう!くは〜〜っ!俺ってば18にもなって、相変わらず尚也の思う壺?
「子規くん・・・ほんっとに、律儀だよね・・・はははっ!」
そんなに、息を切らしてまで笑うこと無いだろ!尚也の身体だって汗が引いてないのに、今度は笑いすぎて熱くなってきてるし。
「はははははっ!!!」
ぎゃ〜〜〜!もう笑うなっつーの!あー、もうヤダヤダ、なんで俺の顔まで熱くなってくるんだよう!尚也なんか嫌いだ〜〜!
俺は笑い転げる尚也の横で、口唇を突き出しながら水を飲んでみる。すると、壁にかかっている時計を見ながら、尚也が声をあげた。
「あっ!子規くん!」
「え?」
尚也が急に真面目な顔をするもんだから、俺もつられて目を丸くしてしまう。
突然訪れた静寂。何も言わない尚也の顔をじっと見つめると、時計の秒針を見ていた尚也が、ニコッと笑って言った。
「今、俺たちが出会った日になった」
ひょえ〜〜〜〜!そんなこと考えてたんかい!あまりにも乙女チックで、ビックリだってば。
でも・・・ちょっと嬉しかったりする俺も、同じく乙女チック?
「お・・・めでとう・・・」
思わずボソリと呟いてみる。すると尚也が、横たわったままの俺の背中にのしかかるように、身体を摺り寄せてきた。わっ!ばか!あ・・・熱いだろっ!は・・・ずかしいし。
「うん、おめでとう。それで・・・ありがとう」
「ありがとう?」
思いもかけない言葉。どうして、ありがとう?
「うん。一年も一緒に居てくれたり、ケンカしても仲直りするために家まで来てくれたり、誕生日にお父さんとご飯を食べる時に一緒に呼んでくれたり、悩み事を話してくれたり、笑ったり泣いたりしてくれたり、とにかくそういう・・・子規くんが普通に俺にしてくれることが、いつもすごく嬉しい。子規くんが居てくれて、よかったなって思う。・・・だから、ありがとう」
尚也は恥ずかしがることもなく、そういうことを耳元で言ってのける。俺は今日最高に恥ずかしくなって、思わず池の鯉みたいに口をパクパクと開閉していた。だ・・・だって、なんて返せばいいんだよう!
「これからも、よろしくね」
尚也の言葉にも、かろうじて、カクッとロボットみたいに首を縦に振るだけ。自分の首まで真っ赤になっているであろうことが、皮膚の熱さからもよ〜〜く分かった。
「ふふ、子規くん可愛い」
ぎゃ!来た!いつもの台詞。しかも、このムードで来るのは、ちとマズイ・・・と思う。も、もう・・・腰が立たないって言ってるじゃん!あ、口に出しては言ってないか?
「子規くん・・・」
背中に触れる、尚也の口唇。うわっ!どうしてそんなトコを吸われてビクっとくるんだ?俺のカラダ!!
「・・・まだ、大丈夫?」
優しい尚也の声。大丈夫かって・・・んなの、大丈夫なわけ・・・。
「ん・・・平気」
とかなんとか言いながら、答えてしまう俺の口。
どうせ明日は休みだし、一年に一度くらい、恥ずかしいくらいイチャついてもいいよな・・・と、俺は赤い顔をしながら思った。
You are the only one in this world.
翌朝。とはいえ、本当にそれが朝なのかも、俺にはよく分からない。とにかく、お日様が煌々と輝く頃、俺たちは一本の電話で目を覚ました。留守電にするのを忘れていたのか、いつまでも鳴っている。
「尚也・・・鳴ってるよ・・・」
昨晩は本当に、なんていうか、恥ずかしいドコロの騒ぎではないくらいの一夜で、二人ともその疲れが色濃く出ている。俺もそうだけど、尚也もまだやっぱり寝ていたいのか、俺が声をかけても「うん」とも「ううん」ともつかない声をあげただけで枕に顔を埋めていた。
電話はまだ鳴り続けている。10回コールを過ぎても、電話は切れそうになかった。なにか、緊急の用事なのかな?
「尚也、俺・・・出ようか?」
「・・・うん」
短く言って、尚也はそのまま健やかな寝息に戻る。俺は重い腰を強引に引き上げると、ベッドの近くにある電話の子機を手に取った。
「・・・はい、竹脇です」
すると、向こうから聞こえてきたのは尚也のバイト先の探偵事務所の人の声。朝早くにすまないと言ってるってことは、やっぱりまだ朝だったんだなと、俺は思った。
「あ、はい。かわりますので、少々お待ちください」
俺は言うと、電話を保留にして尚也の背中を叩く。尚也は、それでもまだ起きそうになかった。
「尚也、事務所から電話だよ。なんか、急ぎの用みたい」
「ん・・・」
仕事の電話ということで、尚也も起きなくちゃという気になったのか、仰向けになってきつく眉を寄せる。裸の上半身が、ベッドの上でけだるくくねった。
「どうする?かけなおす?」
「ん・・・大丈夫、出る。ありがと・・・」
掠れた声で答えると、尚也は俺から受話器を取った。開ききらない目で、受話器を耳に当てる。
「はい、もしもし」
俺は尚也がまた寝やしないかと、しばらく様子を見ていた。でも、感心するほどに尚也はちゃんと話をしていた。なら、俺はもう一回寝直しちゃおうかな。
「えっ?」
俺がベッドにもぐり込み直すと、尚也が驚いたように声をあげる。振り返ると、尚也がベッドの上に起き上がっていた。
「それって・・・」
いつもあんまり見ない、尚也の険しい顔つき。なんだろう、なにか悪い話なのかな?でも、仕事の話だし、俺は聞かない方がいい・・・よね?
俺はあえて尚也に背中を向けて、もう一度寝ようと試みる。だけど、それよりも早く、尚也の電話は終わったようだった。
「ごめんね、ありがとう」
受話器を戻して、尚也がベッドに戻ってくる。俺は尚也の方に向き直りながら、言った。
「ううん。仕事行くの?」
「いや、大丈夫だよ。ちょっとした連絡だから」
「ふぅ〜ん」
尚也はそう言って、俺の身体を抱き寄せる。あ、あったかいなぁ。
「子規くん」
ぎゅっと抱きしめられて、呼ばれる名前。俺は「ん?」と短く返すと、尚也の肩の上に顎を乗せ、目を閉じた。
「大学卒業したら、探偵は辞めるから」
どうして、そんなこと急に言うのかな?なんか、俺が気にしてるっぽく見えるのかな?
「・・・なんで?」
俺はたいした意味もなく、聞き返す。すると尚也は、一度深く息をついた後で答えた。
「ん・・・。やっぱり、二人に関係のないこととはいえ、子規くんに言えないことが増えていくのが嫌・・・なのかも」
「ふぅ〜ん・・・」
そんなに、『話せないことがストレスになる』ようなことが、たくさんあるのかな?そりゃ、尚也が辞めたいんだったら、それは止めないけど・・・。
「でも、俺のことだったら気にしないでね。俺は、別に尚也が探偵やってても、嫌だと思ったことないし」
うん、それは本当。だから、尚也がそんなこと言い出したのに、ちょっとビックリしてるくらいだし・・・。
「そうなの?」
今度は尚也がちょっと驚いた声。もう!本当だってば!
「うん。それにさ、尚也が探偵してなかったら、きっと一緒にアメリカにも行ってなかったよね!」
でもって、俺の家出も続行してなかっただろうし、こんなところに・・・一緒にも・・・居なかったかもしれないし。・・・ってことはもしかして、俺もまだまっとうライフを送ってたかも?
俺が尚也の顔を覗き込んで言うと、尚也はしばらく不思議そうな顔で、俺のことを見てた。こういう時、尚也ってナニ考えてるんだろう?
「・・・ね?」
俺、変なこと言ったかな?思わず同意を求める問いかけ。あんまり黙られると、ドキドキするじゃんよ。さっさと、なんか言ってってば!
「本当に、イヤじゃないの?」
確認するような尚也の声。だから〜、良いって言ってるじゃん!
「うん。イヤじゃないってば。ただ、仕事のことばっか考えて、うわの空になられたら、ちょっと淋しいかも」
本当は最近、ちょっぴりそんなことを思ってた。俺のわがままだってことは、分かってるんだけどね。だけど、尚也はなぜか嬉しそうに笑うと、俺のことを抱きしめて言った。
「うん、分かった」
You are the only one in this world.
子規の誕生日は4月24日って筈だったような・・・
アレ?おかしいなぁ・・・・(すっとぼけ)
でもって、この話って、メインが夏だったような・・・
おかしいなぁ・・・・・(首をひねっている)。
詳しい二人のほんにゃらは、いつか裏にでもアップしようかと・・・(←フォロー)。