大人になっても
乙姫静香
まだティーンエイジャーだった頃、綺麗な俳優が出てくる映画を見て思った。
『大人になったら、こんな風に素敵で落ち着いた恋をしたい』
二十代とか三十代とか、それはとても想像も出来ない先の話で、その時がくれば自ずと自分も素敵なバーでグラスを傾けることの似合う良い男になれるんじゃないかなんて思ってた。
現実?
とんでもない。今年の春も十年前の春も、僕にはちっとも変わらなく見えるんだ。
今ならあの時の僕に言える。
恋に年は関係無いよ・・・ってね。
***As I grew up***
ここに二人の男が居る。
その一人、その名も宮坂忍(みやさか・しのぶ)31歳。フリーの翻訳家である。
親の仕事の関係で高校の途中からアメリカのハイスクールへ。そのちょっと前から目覚めてて、以来、男一筋18年。現在は気の合う友人と同居中。いろんな意味で役に立つ友人である。
そして、この話はその宮坂のマンションから始まる。
カチッ
クリックの音と同時にメイルが送られていく。それが完全に終わったことを確認して宮坂は接続を切った。そのまま画面にスリープをかけてパソコンの前を離れると、片手にコードレスフォンを持って電話をかける。
「あ、もしもし宮坂です。今送りましたのでご確認ください。・・・はい。なにかありましたら家にに居ますので・・・・はい。はい・・・・では、失礼いたします」
静かな物腰。小綺麗な部屋にこざっぱりとした服装。宮坂は電話を切ると、すべてから解放されたように、ソファに倒れ込んだ。
「終わった〜〜〜〜っ!!!!」
今は丁度昼前の11時半。昨晩から寝ずの仕事を一つ終え、これでようやくしばしの休息が取れる。日帰りの旅行にでも行ってやろうかと思った時、握り締めたままの電話が鳴った。
「・・・・はい」
ソファにうつぶせになったまま応える。すると、電話の向こうから威勢のいい声が聞こえてきた。
「よ!寝てた?」
「いや・・・寝ようかなと思ってたところ」
電話の相手は顔も性格もいい上に、同じ趣味を持ってるというところでも深く理解しあえる素敵な友人の大澤である。ただ、あまりにもお互いを理解しあえて困る点は、オトコの好みまで同じというところであるが・・・。
「一人で?」
「おかげさまで」
含み笑いの大澤の声に、棘のある声で返す。宮坂はソファの上に仰向けになり、クッションを抱きしめた。
「そりゃよかった。じゃあそんな淋しい一人寝の友人のために、この良い男からニュースです」
「なんだよ、かしこまって」
「今晩暇か?」
その質問にぐっと返答に詰まる。いい加減、徹夜はこたえる年齢だ。今日はゆっくり眠っていたいところなのに・・・。
「パーティがあるんだけど」
「今日はちょっと・・・」と言いかけた宮坂の耳に届く神様の声。宮坂は閉じかけていた目をぱっちり開き。ソファの上に正座した。
「もちろん、オンリーの」
大澤の言うパーティとは、いわゆる合コンのニュアンスを含むもの。そしてもちろんオンリーというのは女人禁制の魅惑のパーティである。大澤の最近の友人に、気の利いた宴会部長が居るらしく、前に一度宮坂も参加したことがあった。
十人ちょっとの小規模なパーティながら、その粒揃いっぷりは目を見張るほど。しかも面白いのは「全員が全員、他の参加者の嗜好を知らない」というところにある。つまりみんながみんな、「なんだか知らないけどオトコだらけのパーティに誘われてしまった」ことになってるのだ。
どうしてそういうことになってるのかというのは、ここでは説明を省くとして、とりあえずそのパーティの言葉に宮坂は色めきたった・・・という訳である。
「いやぁ・・・・ちょうど仕事が終わって、今日は外に出たいと思ってた所だったんだ」
「じゃあ、参加?」
「せっかくだから」
「そりゃよかった。今日はお前に超オススメの優良物件が来るぞ」
心の中で宮坂、「え!マジ!?」と叫ぶ。だが、あまり感情が激しく表に出ない宮坂は、くすりと微笑んで言った。
「へぇ、そうなんだ」
その頃の都内某所。
「おい、一ノ蔵。係長が呼んでたぞ」
「え?あ、はい」
一ノ蔵(いちのくら)と呼ばれた彼は、先輩の言葉に爽やかに返事をすると、部署に戻るでもなく、周りの目が無いことを確認して非常階段の扉を開けた。
「あ・・・・の」
そこに立っていたのは彼を呼んでいるという係長。一ノ蔵は決まりの悪い顔で微笑むと、なんと言っていいものか分からずに、相手をじっと見つめた。
「一ノ蔵くん!」
今にも抱きついてきそうな係長に思わず腰を引きながら、一ノ蔵はひきつった笑顔を返す。
すらりと伸びた身長。広い肩幅。その割に小さな頭が、余計に背を高く見せている。そんな「男が見ても良い男」の一ノ蔵は、キラキラと目を輝かせながらどこか淋しげな係長に、精一杯の笑顔で言った。
「あ・・・ご婚約、おめでとうございます!飯田部長の娘さんって、美人で噂の方ですよね」
「どうしてそんなこと言うんだよ。僕が君のことを好きなのは、君も良く知ってるくせに・・・」
普段は後輩一同が震え上がる若手ナンバーワンの係長も、一ノ蔵の前に出るとこれである。なんでも、一ノ蔵が係長の初恋の相手にそっくりだとかなんだとか。入社以来、せまり倒されたこの数年。おかげでいい仕事はたくさんさせてもらったものの、やはり結婚と聞いて「助かった」と思ったのも事実。
「あ・・いや、そう言う訳ではなく(どういう訳だよ)、飯田部長は幹部候補ですし、ってことは、係長もこの先は・・・・ねぇ?」
我ながらいやらしい言い方だなと自己嫌悪に陥る。しかし、どうも沈黙を作ってはいけないような気がしていた。こういう時の天性の勘を、侮ってはいけない。
「まぁいいや。とにかく、僕としても君のことはきっぱり断ち切らなくちゃいけないんだ。だから、何も言わずに今日ここへ行ってくれ」
と、係長が差し出したのは一枚のカード。良く見ると、パーティのインビテーションカードだった。
「パーティ・・・ですか?」
「そう。とりあえず女人禁制のパーティだから女性は連れていっちゃ駄目だよ。一人が不安なら、総務の西川を連れて行けばいい。彼なら、前にも出たことがあるから」
総務の西川・・・って、おい。
「そこで君がどうなろうと、それはもう僕の関知するところではないよ。君は君の、僕は僕の幸せが・・・・」
そこまで言って、こみ上げたきたものがあるのか、係長はウッと言葉を詰まらせた。一ノ蔵はただ呆然と係長を見下ろしている。
「一ノ蔵くん・・・・想い出を、ありがとうっ!」
「あ!係長!」
一ノ蔵のその言葉も虚しく、係長は目元を押さえて走り去る。後に残された一ノ蔵は、カードを握り締めて唖然としながらその後ろ姿を見送っていた。
総務の西川は、一ノ蔵も知っているそっちの男である。ということは・・・・・?
実は一ノ蔵が係長のことを拒絶しきれなかったのも、そこが原因。
つまり、彼もそっちのオトコだった訳なのだ。
***As I grew up***
そのパーティ会場は誰かの家であった。
都内のマンションの一室。見るからに高そうな部屋に、到着した宮坂が息を飲んだほど。
「これ・・・誰んち?」
「トップシークレット」
微笑みで返す大澤に、宮坂が「そうですか」と言わんばかりに肩をすくめる。
「ちょっとおい、そのスーツ新しいんじゃないのか?」
「それも、トップシークレット」
涼しげな微笑みの大澤。「ちくしょー、勝負かけてんな」と思ったけれど、宮坂はそれを口には出さなかった。
大澤は黙ってみててもナカナカの良い男。いや、ハンサムというのとはちょっと違う。好感度の高いオトコ。似ている芸能人は?・・・と考えても、良く言えばイチロー。別の表現をすれば・・・ハニワ?まぁ、その中間と思ってくれればいいだろう。
で、当の宮坂は・・・というと、年の割には童顔で背もそんなに高くはない。以前余興で学ランを着せられた時に、あまりの似合いっぷりに笑いよりも驚きが走った。ただ、性格よりも派手な外見に、人生を振り回されているのも確か。芸能人に例えると・・・それは先のお楽しみ。
「な、これってもしかして、オッケーならそのまま・・・・・」
宮坂は話しながら、視線をつつつ・・・っと廊下の奥に見える数枚のドアに投げる。大澤はそんな宮坂の視線にあいまいな微笑みで返すと、何も言わずにぽんっと肩に手を置いた。
「この年になって、そんな手順をイチイチ俺に聞かなくってもいいってば」
「この年って言うなぁ!」と心で思いながら、ちょっぴり心を痛める31歳。お肌のヘアピンカーブも既に曲がりきっている。オトコだとはいえ、やはり気になるものなのだ。
「いや・・・だって誰かのリザーブだったら困るからねぇ」
「まぁ、早いモン勝ちだろう。ここは最上階だし、イロイロ気にしなくてもいい点はあるんだぜ」
「ふぅん・・・・」
素直に返しながらも心境は複雑。どうしたもんだかなぁと宮坂が思った時に、ベルが鳴った。
「さ、来たみたいだぜ」
いそいそと玄関に向かう大澤を見ながら、宮坂は何ともいえないため息をついた。
で、いつの間にやら全員集合したらしい。
特に乾杯の音頭があった訳でもなく、来た者たちから勝手にはじめるようなパーティ。その方が気楽で良いけど・・・と思いつつ、特に好みの相手もいないなぁと宮坂はベランダに出た。
酒には強いので、酔うこともない。どっちかというといつも介抱役。今日も、大澤に相手ができなければあいつを介抱しながら家へ直行だなと思った。
それにしても眠い。電話の後に仮眠を軽く取ったものの、それでどうにかなるような睡魔ではなかった。ベランダに出たところで眠気が覚める訳もなく、宮坂はいっそのこと部屋のひとつを使って寝てしまおうと再びリビングに入った。
適当に2ショットになっている人込みをぬって廊下に出る。そのまま手近な部屋のドアに耳を寄せた。
・・・・・・・・。
誰か中に居るような気配。では次。
・・・・・・・・。
誰も、いない・・・かな?と思いながら、一応ノック。返事はない。そこで宮坂はドアを開けて中に入った。めでたいことに鍵がかかる。これで、趣味じゃない奴に寝込みを襲われることも無い訳だ。安心して中に入り、鍵を閉める。ちょっと寝たら帰ろうと思い、置いてあった目覚し時計をセットする。そして宮坂は、心地良い眠りについた。
「え?俺っすか?」
そして、気がついたらこんな所にいた。
開ききらない目を擦りながら、宮坂が上体を起こす。
「どこ・・・?ここ・・・・・」
肌寒さに身体が震える。どこをどうしたらこんな顛末になってるのか分からない。
屋外・・・あぁ、そうだ。で、なに?・・・・なんで・・・・・河原?
目の前に流れているのは紛れも無く多摩川。ベンチに寝かされている自分を理解できないまま、宮坂は辺りを見回し、そしてそのまま固まった。
キラキラと輝く川をバックに、めくるめくようなキスをしているのは我が友、大澤。相手は、見たことも無いスーツ姿の男だった。
あんぐりと口を開けたまま凍りつく。いくら真夜中とはいえ、目覚めにいきなり男同士のディープキス。声をかけることもためらわれる雰囲気に、宮坂の気が遠くなった。
「あ、起きましたか?」
「え?」
その時、背後からかけられた声に宮坂が振り返る。と、そこにはスーツ姿の良い男が何かを持って歩いてきていた。
「コーヒー飲みますか?ブラックしかないですけど」
「え?・・・・あ?・・・・」
自分の横に座って、缶コーヒーを差し出す相手をただ見上げる。モロに好みのドンぴしゃり。瞬間にして大澤の言っていた「超オススメの優良物件」が彼であることは分かった。ただ、自分の置かれている状況を理解できないことが、宮坂の反応を鈍らせていた。
「あ・・・そうですよね。突然こんな所にいて驚きますよね。実は彼が・・・・」
と、説明のために大澤とその連れを見て男が固まる。宮坂も大澤の状態を見ていただけに、フォローの言葉もないままに、思わず黙りこくった。
「あ・・・。あの・・・・・変な意味じゃなく、俺たち・・・・消えませんか?」
「え?」
ちょっぴりドキリとしながらも、『変な意味じゃなく』という部分に肯く。確かに、このままあの二人の傍に居るというのもなんだか変な話である。すると彼は、宮坂にかけてあったスーツのジャケットをひとつとって、宮坂を促した。
「あ、うん」
こっそりと立ち上がって歩き出す。河原沿いの道に上がると、彼が漏らすように言った。
「あー、びっくりした」
そのあまりにも素直な反応に思わず宮坂が笑うと、彼が宮坂を振り返って続けた。
「だって、あんなにすごいキスシーンを、しかも男同士のを目の前に見ることってないでしょ!」
宮坂は笑いながら肯く。心地良く響く声のトーンに、目を細めながら。
「すごい勇気っていうか・・・・・うん、とにかくすげぇ」
「あの・・・・あのお相手って・・・・あなたの・・・?」
宮坂は、腕を組んでサクサクと歩く相手を下から見上げる。彼は、宮坂の言葉に言い忘れていたことを思い出したのか、柔らかい表情で振り返った。
「あ、はい。会社の・・・。なんだか今日、突然連れてこられて、何が何やら・・・・」
ということは、お仲間じゃないのかな?と宮坂はちょっとがっかり。
そう、表立ってそっちのパーティであるのを歌わないのはこういうこともあるからだ。時に、狙ってる相手をワザとこういう場に連れてきては反応を伺う人物もいる。そのため、あくまで知る者ぞ知る・・・な集まりなのだ。
「遅れましたが、一ノ蔵です。さっきの西川とは同じ会社ですが違う部署にいます」
「あ、宮坂です。さっきの大澤に呼ばれて今日は・・・・」
と、お互いに自己紹介をしたところで、なんとなく微笑みあってしまう。そのまま宮坂が黙っていると、一ノ蔵が言った。
「お酒、弱いんですか?」
「え?・・・どうして?」
「だって、目覚し時計がずっと鳴ってたから・・・」
「あ・・・」
家でもよくやる。普段は無意識に消してしまう目覚し時計も、知らない家で止めることが出来なかったのかも知れない。もしくは、本当に気付かないほど熟睡していたか・・・・。
「俺がベランダから回って中に入って止めたんですよ。それでも、気持ち良さそうに寝ていたから・・・・」
「すみません・・・・」
穴があったら入ってしまいたいほど恥ずかしくなって、宮坂は俯いてしまう。
「なんだか起こすのがもったいなくって、で、お友達の・・・」
「大澤ですか?」
「あぁ、その大澤さんが帰るっていうんで、一緒に連れて行こうってことに・・・ご迷惑でしたか?」
「いえ、助かりました。一人で残されても・・・ねぇ?」
宮坂が苦笑で返す。彼に背負われてる自分の記憶が無いことのなんと口惜しいことか。ちぇ。
「なら良かった。なんか宮坂さんって・・・・」
「はい?」
くったくのない笑顔に、つい引き込まれる。
「なんか、ソフィー・マルソーに似てますよね?」
ぐはっ!また言われた・・・・と、宮坂は心の中でうなだれた。似ていると言われるのは大体外国の女優。でもまぁ、ソフィー・マルソーは嫌いではないので、まだ良い方だろう。以前、シンディ・クロフォードに似ていると言われた時は、ちょっと殺意が芽生えたのだが・・・。
「すみません、気を悪くされましたか・・・・?」
「いっ・・・いいえ、ちょっとビックリして」
「そうですよね、いくらなんでも女性に似てるっていうのは・・・・。すみません」
「いえ、そういう意味ではなく。あの・・・ソフィー・マルソーは僕も好きなものですから・・・・」
「俺も好きなんです!・・・いや、あ・・・その・・・変な意味でなく」
『宮坂=ソフィー・マルソー=好き』、の図式を頭の中に思い浮かべ、一ノ蔵が焦って訂正する。
実は一ノ蔵、寝ている宮坂を見てまさに一目惚れ。部屋の外で様子を伺っている大澤がいなければ、なんとかどうにかしてしまいたいと心の底から思っていた。が、話を聞いていれば宮坂は大澤が連れてきたらしい。もしかしたら、たまたま連れてこられただけで、お仲間ではないのではないかと、宮坂のことを疑っていた。こんなに好みなのに・・・・。くそ。
「一ノ蔵さんは・・・そうだなぁ、ヴァル・キルマーとか似てるって言われませんか?それか、ジョッシュ・ハートネットとか・・・」
「ジョッシュ・・・?」
首を傾げる一ノ蔵。どうやら分からないらしい。
「あ、あの『パラサイト』に出てた・・・」
宮坂が慌てて説明。すると、一ノ蔵が人差し指を立てて言った。
「あぁ、あの目がでかい?」
「それは多分イライジャ・ウッドだと思う。そうじゃなくて、ちょっと背が高くて、その目がでかい彼よりもかっこいい系の・・・・」
と、そこまで言った所で、今度は宮坂が顔を赤くして視線を下げた。
「いや、あの・・・変な意味でなく。あれ?あ、えと、そういうことじゃなくって・・・僕、何が言いたいんだろう」
さっきのソフィー・マルソーと違って『一ノ蔵=ジョッシュ=かっこいい』では失礼に当たらないことに気付き、慌てて宮坂が訂正する。しどろもどろになりながら、宮坂が恥ずかしさに赤くなった手で自分の身体を抱きしめた。
一ノ蔵は、そんな宮坂の一人上手を、可愛いなぁ・・・と見つめている。大澤がいなくなった今、どうにかしようと思えばできないこともない。けれど、何故だか今一歩を踏み込めないでいた。
「あの、寒いんだったら・・・これ」
「え?」
肩幅の広いジャケットを手渡されて、宮坂が戸惑う。一ノ蔵は精一杯爽やかな笑顔を作って言った。
「だって、いくらなんでもサマーニットだけじゃ寒いでしょ、春とはいえ。俺は平気ですから、どうぞ」
ほおっ・・・・っとため息が漏れそうになりながら、宮坂はオトコマエ(←宮坂ビジョン)な一ノ蔵を見つめている。ジャケットを脱いだシャツの背中の皺にまでもときめいてしまう自分に、『どうしたことか』と喝を入れてみた。
「あ・・・ありがとう」
どきどきどきどき。
ばくばくばくばく。
嫌が応にも高まる心臓。当人達以外には、どうみてもひきつってると思える笑顔も、当人達には光り輝いてみえるらしい。冷えた夜の空気の中で、そこだけ異様な熱さを放ちながら、二人は夜道を歩いていた。
「そ・・・そういえば、一ノ蔵さん、トニー・レオンにも感じが・・・」
「あぁ、その人なら分かります。『ブエノスアイレス』に出てた・・・・」
「あ、そうそう!」
通じ合えた喜びに、思わず手を叩く宮坂。が、その一言が後の二人の間に深い溝を作るきっかけになろうとは、その時は思ってもみなかった。
「なんかこう、マットな感じがしますよね、一ノ蔵さん」
そこがなんとも好みなんですとは言えないもどかしさ。でもまぁ、なんとか次に繋げやしないもんかと思いながら、宮坂が微笑んだその時だった。
「そうですか?ゲイっぽい・・・・とか?」
うっしゃー!清水の舞台から飛び降りたぜ・・・と心の中で一ノ蔵はガッツポーズを決める。が、その言葉に宮坂の頭の中はグルグルと渦を巻き始めた。
そうそう・・・と冗談めいて相づちを打ち、「実は僕も、なーんちゃって」というべきか。それとも「そんなことないですよ!」と一般的な返しをして様子を見るべきか。近道は前者。でも、一般的に考えて、外さないのはおそらく後者。
どっち?どっちなんだよう!!
悩んだ末に、宮坂は笑顔で言った。
「そんなこと、ないですよ。ははは」
その夜二人は、実にキヨラカに帰路へついた。
***As I grew up***
作者突っ込み&注釈過多小説をめざす!
突然、アダルト&コミカルでかつそこそこリアルな大人の恋っつーもんはどうかと思いまして・・・
自分の楽しみのためのお話です。こんなんが読んでみたいなぁ・・・というか。
ウッチャンのハンサム侍が許されるのだから、きっとオッケーな筈(笑)
とりあえず作者の突っ込みは今後どんどん増えます。ダメでしょうか?どきどき。