「被団協」新聞 1998.6月号
インド、パキスタンに抗議   「松谷」勝利へネットワーク   「原爆と人間展」

 被爆者は核兵器を許さない − インド、パキスタンに抗議

インドは、5月11日と13日の両日、合計5回、パキスタンは5月28日と30日に爆発をともなう地下核実験をポカラン砂漠の核実験場で強行しました。

 世界の大勢が核兵器廃絶の方向へ歩み始めているとき、これに逆行して新たに核兵器開発を進めたことに抗議して、日本被団協と各都道府県被団協は「被爆者をつくるな」と、インド大使館を通じてインド政府に抗議と要請を行ないました。

 11日の実験にたいしては13日に、日本被団協の藤平事務局長ら22人が大使館に詰めかけて抗議しました。参加者は「非暴力を国是としてきた国が、核兵器で人間を大量虐殺する方向に変わったことに失望した」などと語り、「核兵器もつな」と、怒りを込めた唱和をぶつけました。

 13日の実験には19日に、JR渋谷駅で11人参加で街頭宣伝のあとインド大使館を訪ね、プラカシュ参事官にバジパイ首相あての抗議と要請書を渡し面談しました。

 小西事務局次長らは、新たな核軍拡競争の導火線にもなりかねない今回の核実験に抗議し、核保有より核廃絶のための国際条約を締結する先頭に立つよう要請しました。

 プラカシュ参事官は、「核保有国に取り囲まれているインドの立場を理解してほしい」とくりかえしていました。

 日本被団協の要請団はこのあとパキスタン大使館を訪ね、ゴロ三等書記官と面談。シャリフ首相に「インドに触発されて核実験を絶対に行なわないよう伝えてほしい」と要請しました。ゴロ書記官は、「インドの国際法違反に何の制裁もないのは解せない。パキスタンは自制しているが、自国の安全は自分で守るしかない」と述べました。

インド核実験に各地で抗議

 インドの地下核実験の強行には、全国の被爆者がいっせいに怒りの声をあげました。

 「平和団体といっしょに50人で抗議の座り込みをして、県被団協とゆだ苑の連名で大使館宛に抗議電報をうった」と山口県被団協

 「うちにはファックスがないので、日本被団協の抗議文を愛知に電話して教えてもらって、県としての抗議文を出した」と福井県被団協の布施田広義会長。

 「抗議文は会で2回出した。ぼく個人でも1回郵送で抗議文を送った」と、京都府原爆被災者の会の三好杢平専務理事。

 「新聞社からの取材があったので抗議の談話を出した」と大分県被団協の岡田実会長。

 熊本県被団協は14人参加で街頭宣伝して抗議文をファックスで送付。

 鹿児島県被団協は平和センターとともに抗議集会を開いて抗議文送付。

 北海道被団協は大通公園で抗議の街頭宣伝をして用意したビラ全部を渡しきりました。

 岩手被団協、山梨被団協、富山県高岡市の会、鳥取県被団協東部支部、島根被団協、福岡被団協などは、抗議文を送りました。

 広島、長崎では抗議の座り込みを平和公園で行ない、神奈川は平和行進でアピール。東京、千葉、埼玉は日本被団協の2回の抗議行動に参加して、怒りをぶつけました。

 静岡では、平和行進を5月19日に迎え、さっそく「実験止めろ」「核兵器なくせ」の唱和を町まちに響かせました。

 昨年1月に、インドで被爆の実相普及で遊説した愛知県被団協の遠藤泰生事務局長は、「政府には裏切られた感じです。でも、国民の間では反核の思いが強いことを肌で感じました。インド国民のこれからの反核運動に連帯していきたい」と語っていました。 核兵器廃絶へ


 「松谷」勝利へネットワーク

「原爆松谷裁判ネットワーク」が5月15日、東京・新宿の日本青年館で結成されました。

 これは、長崎の原爆被爆者・松谷英子さんにかかわる「原爆症認定」訴訟が、1、2審では全面勝利したのに、厚生省の不当な上告で最高裁に持ち込まれたことから「裁判だけでもう10年。松谷さんをこれ以上苦しめるな」ということで、日本生協連、全国地婦連など14団体が力を合わせ、一日も早く上告を棄却させよう」ということで結成したもの。

 ネットワークは当面、松谷裁判についての学習を深めながら、福岡高裁判決1周年にあたる11月7日までに、 「松谷さんをこれ以上苦しめないで署名」 を100万人分集めることを重点に、運動していくことにしました。

ネットワークは当面、次の行動をすすめます。     

@最高裁への要請署名  

「松谷英子さんをこれ以上苦しめないでください。一日も早く上告を棄却してください」を、11月7日を目標に100万人分集める

A厚生省にたいして上告取り下げの要請ハガキを送る

B各界著名人の支持・賛同署名運動

Cこれらの署名を定期的に最高裁に届ける

D原爆松谷裁判の学習運動

E必要な情報の提供

 原爆松谷裁判ネットワーク

 原爆松谷裁判ネットワークの結成後、松谷英子さんと事務局の6団体の代表は記者会見して、運動の目的と柱を発表しました。  藤平事務局長は「松谷裁判はl人の被爆者を通して、原爆被害の実相と、冷たい被爆者行政の実態を国民に広げ、国の姿勢を変える運動」とのべ、全国的な支持を訴えました。 ネットワーク参加団体

 ネットワークは15日午後、「松谷裁判について強くなろう」と安斎育郎立命大教授と安原幸彦弁護士を講師に学習会をしました。

 安斎教授は、「核兵器の被害の深刻さをありのままに見るかどうかだ」とのべ、安原弁護士は、「最高裁の厚い壁に穴をあけるのは世論」と結びました。 松谷訴訟


原爆と人間展

 生協ひろしまは、日本被団協制作の「原爆と人間展」パネルを、交流のある海外の生協に贈りましたが、このたびロシアのボルゴグラード州生協連とイギリスの生協卸売連合会(CWS)から原爆展を開催したという手紙と写真が届きました。

 ボルゴグラード州生協連は昨年12月から今年1月に生協ボルゴグラード大学で原爆展を開催しました。

 これは「世界の平和」という標語のもとに開かれたもので、学生、教師、生協職員をはじめ約6,000人が参観しました。

 同生協連のコブジン議長は、「第二次大戦で大きな被害を受けたボルゴグラード市民は、悲しみと戦慄をもってこの写真パネルをながめました」と、反響の大きさを述べています。

 生協卸売連合会(CWS)は、さっそくマンチェスターにある生協卸売連合会本部のロビーに「原爆と人間展」パネルを展示。CWSのマクドナルド幹事は、「国中のたくさんの団体で展示してもらえるよう手配していく」と述べています。

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