「被団協」新聞 2004.3月

主な内容
1面 イラク派兵に反対声明 国会要請行動
2面 集団訴訟の動き 東訴訟31日に判決  「核かくしかじか」
3面 各都道府県の動き
4面 相談のまど「確定申告について」


イラク派兵反対、撤収を  日本被団協代表理事会が声明

 2月27日に開かれた日本被団協代表理事会は、イラク派兵をやめ、自衛隊をただちに撤収させるよう求める声明を発表しました。

原爆被害の体験を踏まえてこそ
 「声明」では、59年前の被爆の惨状とその後の苦しみを語り、被爆者が体験から引き出した教訓は「(被爆の)苦しみを他の人たちに二度とふたたび味わわせてはならない」「核兵器は人類と共存できない非人道残虐きわまりない兵器であり、一日も早く廃絶しなければならない」ことだとしています。
 そして、「日本国憲法がその前文で『政府の行為によってふたたび戦争の惨禍が起こることのないやうに』と明記し、第9条で、戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否定を謳い上げたのは、原爆被害を頂点とするあの戦争の体験から導かれた結論であり、英知であった」と訴えています。
 また、「(日本国憲法には)どのような理由にもとづくものであっても、戦争そのものを悪として拒否する思想があると私たちは信じます。この思想は私たち被爆者のゆるぎない信条でもあります」としています。
 その上で、被爆者は「イラクへの自衛隊派遣に大きな危惧を覚えずにはいられません」「たとえ復興行為であろうとも、武器をもって兵士が他国へ行くことは戦闘行為をまねくおそれが大きい」と危惧しています。

劣化ウラン弾で放射線障害の危険も
 同時に「声明」は、劣化ウラン弾が使用されたことを指摘し、「自衛隊が駐屯するサマワも安全な場所ではなくなって」いるとしています。劣化ウラン弾が原爆被害と同様の放射線障害を引き起こす危険性は以前から指摘されていたところです。
 さらに、イラクが保持しているとされた大量破壊兵器の脅威が根拠のないことが確かにな」り、「自衛隊の駐留に何の根拠も」ないと指摘しました。

全国から「自衛隊派兵反対」の声を
 「声明」は、平和憲法のもとで59年間、戦争で人を殺してこなかった日本が、はじめて他国の人を殺すことになるかもしれない事態に「胸が張り裂けそうです」と被爆者の心情を伝えつつ、首相と閣僚などに向けて「どうか、日本国憲法の立場に立ち返り、イラク派兵をやめ、自衛隊員をただちに撤収させてください」と求めています。
 この声明をもとに、全国の被爆者が「自衛隊派兵反対」「自衛隊即時撤収」、そして、「平和憲法を守れ」の声を上げていくことが求められます。

集団訴訟のうごき  運動広がり提訴相次ぐ

  昨年4月17日に第一陣の提訴で始まった集団訴訟ももうすぐ満1年。訴訟は全国に広がり、13都道府県・9つの地方裁判所で、117人の原告が国を相手に争っています。3月に広島と静岡で、4月に鹿児島で、新しく提訴を予定、神奈川でも準備中です。一方アメリカでも現地の平和団体が訴訟の署名を翻訳して集める動きが出ています。訴状も英訳中。各地の裁判の模様をお知らせします。

 【東京】1月28日、第四回口頭弁論が開かれました。これにあわせ、新たに6人が提訴。また、この日原告のうち1人が原爆症と認定されたため提訴を取り下げました。
 法廷では、原告の大森克剛さんが意見陳述をし、弁護団が「原因確率」を批判する準備書面の陳述を行いました。
 【大阪】1月30日、第四回口頭弁論が大阪地裁大法廷で開かれ、原告側の証拠としてビデオ「ヒロシマ・ナガサキ─核戦争のもたらすもの」が上映されました。
 弁論後の報告集会では、原告が「ビデオには色もにおいもない。被爆の惨状はもっとひどい」と発言。藤原精吾弁護団長は、「裁判はいよいよ核心に入る」と語り、支援活動の強化を呼びかけました。
 1月27日には、2,297人分の署名(前回分とあわせ計3,654人分)を裁判所に提出しました。
 【名古屋】2月4日、第4回口頭弁論が開かれ、裁判所から次回までで当事者の基本的な主張を終わらせたいと希望が出されました。弁論期日は4月14日、6月17日、8月23日と決まり、10月ころから証人調べに入る見込みです。
 懸案のビデオ上映については、裁判所側が今回も留保しました。この間支援ネットでは二度にわたる対裁判所宣伝行動をし、全国からの要請はがき運動を展開。これらの運動を、裁判長も無視はできないようです。
 【熊本】2月6日の第4回弁論では国の審査方法を原告側が批判。証拠のビデオ「ヒロシマ・ナガサキ─核戦争のもたらすもの」を上映しました。次回は4月16日。
 この日、1人の被爆者の遺族が新たに提訴に踏み切りました。報告集会では、遺族原告の妻が、夫の無念について涙ながらに訴えました。
 【千葉】2月10日に第3回弁論が開かれました。原告からは被爆の全体像やDS86・原因確率の不合理性についての準備書面を提出、ビデオ「ヒロシマ・ナガサキ─核戦争のもたらすもの」を上映しました。次回は4月23日。
 【広島】2月18日の第5回弁論では、原告が「原因確率」批判の準備書面を提出しました。
 前回の弁論で原告側は国に、8月19日に入市して1週間救援活動を行った三好高等女学校生20人のなかで原爆症認定を受けている人の記録を裁判所に提出するよう主張しました。20人の中には集団訴訟の原告大江賀美子さんがいます。国は、プライバシーを理由に提出を拒否しましたが、この日裁判所から「名前を伏せてでも提出できないか」といわれ、渋々「検討します」と回答。入市は被爆線量が少なく、問題にならないと主張する国の態度がいい加減であることが明らかになっています。
 弁護団は同日山口県を含む被爆者12人が3月8日追加提訴する見通しを明らかにしました。
 【宮城】2月23日仙台地裁で第1回の口頭弁論が開かれ、原告の新沼弐雄さんと弁護士らが意見陳述をしました。法廷は満席で、傍聴者があふれました。弁論終了後寒い屋外で報告会が開かれ、これから始まる裁判闘争に決意を新たにしました。

東訴訟31日に判決
 東数男さんの裁判は3月31日、東京地裁でいよいよ判決が出ます。東さんは1994年認定申請、却下され、99年提訴。長崎1.3km被爆。病名はC型肝炎。
 原告・弁護団は勝利判決を確信していますが、勝訴した場合、国は集団訴訟への影響を恐れて控訴することが予想されます。今後は、国が控訴しないよう厚生労働省、国会の厚生労働委員、各党に要請行動を展開します。全国からの要請をお願いします。 

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