「被団協」新聞298号 2003年11月

主な内容
1面 エノラ・ゲイ公開に向けて要請行動 原爆症認定集団団訴訟 
2面 米大統領来日にあわせ行動 「語りつたえ」の会発足 「核かくしかじか」
3面 各地の動き
4面 相談のまど「特養ホーム入所中の入院」 「証言活動のしおり」


エノラ・ゲイの復元・公開に対し、署名活動をスタート

 日本被団協はこのほどブッシュ米大統領とスミソニアン航空宇宙博物館のデイリー館長宛てに、広島に原爆を投下したB29爆撃機「エノラ・ゲイ」号の一般公開に関する要請書を送り、同じ要請内容の署名運動を開始しました。この署名は日米両国で集められ、同博物館が一般公開を予定している12月に、日本の被爆者がアメリカでの行動へ持参する予定です。
 米ワシントンDCにあるスミソニアン博物館は「世界でもっとも来場者の多い博物館」。エノラ・ゲイの復元機体は12月18日からワシントン郊外ダレス空港近くに完成した新館で一般公開が予定されています。
 展示の説明文は同機の性能などに多くを割き、原爆投下については「1945年、最初の原爆を広島に落とした」など短くふれるだけ。デイリー館長は「われわれが展示するのは(エノラ・ゲイの)偉大な技術的達成としての栄光だけだ」と語っています。
 同館は1995年にもエノラ・ゲイ特別展示を計画。当初は被爆の資料を展示する一方、「原爆投下は正しかった」との主張も紹介する予定でしたが、空軍協会などの強い圧力で被爆資料の展示は中止されました。
 被団協の要請書は、「経緯を知る者から見れば、被爆の惨禍を隠し技術的進歩に焦点をあてた展示をおこなうことは、原爆投下は正しかったという立場を選択したと見なさざるをえない」とのべ、国際法に違反し非人道的被害をもたらした飛行機を、技術的名目とはいえ称賛することを「広島・長崎の被爆者はとうてい受け入れることはできない」としています。
 そのうえで、公開にさいしては原爆の被害を示す写真や資料をあわせて展示するよう要請。それができない場合は展示の中止を求めています。

 同じ要請をブッシュ大統領とデイリー館長に突きつける署名は、日本国内ですでにスタート。アメリカのワシントンDCにあるヒロシマ・ナガサキ平和委員会の協力で英文に翻訳され、10月25日ワシントンでおこなわれた10万人規模の大集会に持ち込まれ多くの署名が集まっています。
 12月の一般公開時には日本の被爆者も参加して要請・抗議行動が計画されています。国内で集まった署名は今後日本被団協で集約し、渡米する被爆者に託されます。
 各地の被爆者組織は、8月に計画が発表された直後から抗議の声をあげる一方、日本被団協の要請書に呼応してブッシュ大統領宛要請を送付。館長宛の要請書は、署名とともに渡米被爆者に託されます。

 <署名にご協力いただける皆様へ>
 日本国内からお送りいただく場合 105-0012 東京都港区芝大門1-3-5ゲイブルビル9階 日本被団協宛  Fax 03-3431-2113
 
 海外からお送りいただく場合 1.Eメールでお名前をお送りください kj3t-tnk@asahi-net.or.jp 宛
                    2.署名用紙をダウンロードしてお送りいただく時の宛先 Nihon Hidankyo
                                                Gable Bldg. #902, 1-3-5 Shiba-Daimon, Minato-ku, Tokyo 105-0012 JAPAN
                                                Fax.:+81-3-3431-2113
 どうぞよろしくお願いいたします。
 署名は11月末までにお送りいただけると幸いです。ご協力に感謝いたします。


集団訴訟 提訴者全国で100人超す

 原爆症認定集団訴訟に、9月29日長崎で5人、10月22日熊本で3人が追加提訴。これで提訴者は100人を越えました。
【熊本】第2回口頭弁論が10月24日に行われ、前々日に第3次提訴した3人を加えた原告12人のうち6人が出廷、支援者を含め70人が参加しました。開廷に先立ち地裁前集会が開かれ、支援者を代表して熊本大学生、ハンセン病の原告、原水協、原水禁の代表が激励に立ちました。
 法廷では、2人の原告が意見陳述し、弁護団が現地調査で得た原告の被爆地点や直後に歩いた足取りを被爆写真パネルを掲げて説明しました。
 裁判後の報告集会では、支援組織の「原爆症訴訟支援熊本県民会議」会則案が説明され、12月19日の第3回口頭弁論時に結成総会を行う予定を発表、入会へのよびかけがされました。
【大阪】10月10日、第2回弁論が開かれました。
 満員の傍聴者を得て、7月に新たに提訴した井上正巳さんと佐伯俊昭さんが意見陳述。井上さんは「ケロイドにできた癌を原爆と無関係とした国の仕打ちをこのままにできない」と訴えました。
 佐伯さんは、喉頭癌で声が出ないため、弁護士が代読。「誰にも話さなかった体験や思いを話すのは、正しい裁判をして欲しいから」と訴えました。この日弁護団は、原因確率を審査の方針とすることを批判した準備書面を提出しています。
【名古屋】10月15日、名古屋地裁で第2回の口頭が開かれました。
 この日は、原告側が提出したビデオ「にんげんをかえせ」の法廷での上映を求めましたが、裁判長は証拠としての採用を却下。すでに他の地裁ではビデオ上映が行なわれており、弁護団として今回の却下に異議を申し立てることにしています。
【札幌】10月6日、安井原爆訴訟と北海道原爆訴訟(集団訴訟)、追加提訴した加藤政子さんの訴訟が、同一法廷、同一裁判長の下で開かれました。
 弁護団は、「原爆症認定は被爆距離が大きな比重を占めている。松谷訴訟の最高裁で国が敗訴したにも関わらず、未だにDS86を金科玉条としているのはおかしい」「国は準備書面で『被爆者は現在手厚く保護されているから原爆症認定は厳しくあるべき』と記述しているが、これは被爆者切り捨ての思想だ」と主張。
 加藤訴訟については、「被爆距離の最初の記述が事実と異なった場合、『再申請せよ』というのならば、国自体が却下処分を見直すべき」と主張しました。
【長崎】10月21日、第3回目の口頭弁論が開かれました。冒頭、9月に提訴した5名についても併合することを確認、総勢23名の原告団となりました。国側はこの日までにまとまった反論を提出する予定でしたが間に合わず、次回11月25日までに提出することになりました。

米大統領来日にあわせ大使館、街頭で行動
 
 10月17日、日本被団協と東京都原爆被害者団体協議会(東友会)は、来日したアメリカ・ブッシュ大統領に対し、広島、長崎に行き、原爆被害の実相を直視するよう要請しました。
 要請行動はアメリカ大使館前で実施。次々にマイクを握った被爆者は、原爆投下に対する謝罪や新型核兵器開発の中止、核兵器の廃絶などもあわせて訴えました。
 米大使館での行動後は、渋谷に移動し、街頭宣伝活動を展開。ここでは、エノラ・ゲイ公開・展示にあたっての署名も呼びかけました。
 要請・宣伝活動には、ブッシュ大統領と小泉総理大臣のお面をつけた被爆者が登場。核兵器使用や新型核兵器開発をすすめようとするブッシュ大統領とそれに追随する小泉首相のパフォーマンスが披露されました。
 また、渋谷での宣伝活動には、他団体の若者たちも参加し、街頭の同世代から多くの署名を集めました。
 ハチ公前では、通りかかった外国人が被爆者の訴えに耳を傾け、「原爆と人間展」パネルに見入るひと幕も。
 要請・宣伝活動には、首都圏の被爆者を中心に40人が参加。「エノラ・ゲイ署名」28人分を集めました。

「証言活動のしおり」 ご活用ください。

 今年6月に日本被団協が発行した「証言活動のしおり」は大変好評で、初回印刷分が品切れとなっていましたが、このたび増刷しましたのでお知らせします。
 今までに利用いただいた被爆者からは、自身の証言活動の参考として役立つばかりでなく、証言を聞いてくれた人に、より理解を深めてもらうため贈るのに手ごろ、との声が寄せられています。
 これから証言活動を始めようとしている被爆者には特にお薦めします。地域の被爆者の会や支援者の勉強会にもご利用ください。お申込みは都道府県被団協、または日本被団協事務局まで。1冊300円(送料別)です。

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