「被団協」274号  2001.11月

主な内容
1面  被団協結成45周年   全国代表者会議   街頭宣伝行動
2面  中央相談所研修会   在外被爆者検討会   「核かくしかじか」
3面  アメリカの平和運動  被爆者は訴える 各地の活動
4面  「相談のまど−介護老人保健施設で請求される費用」 


日本被団協結成45周年 こころひとつに記念式典

 日本被団協は10月22日、日本被団協結成四五周年の記念式典を東京・虎ノ門パストラルで行ないました。
 式典には、全国の被爆者代表、市民・平和団体の代表ら120人が参加。山口仙二代表委員が、日本被団協の結成当時から今日までをふり返りながら「核兵器はなんとしても廃絶させよう」と力強くあいさつしました。
 来賓として、今川正美(社民)、石井郁子(共産)、福島豊(公明)、高木義明(民主)の国会議員があいさつ。いまなお実現されていない「原爆被害への国家補償」の実現に向けて最大限努力する旨、語られました。
 日本被団協の45年間を、スライドと当時を体験した人の証言でつづるコーナーでは、先人の苦労と奮闘の歴史が感動をよびました。スライドの映像に「ああ、あの方も亡くなった」という寂しい思いがある反面、絶えることなく引き継がれてゆく被爆者運動に確信を深めるものともなりました。
 式典後は祝賀会が開かれ、駆けつけた市民団体・支援者のみなさん、アメリカ、ブラジルの在外被爆者のみなさんといっしょに、肩を抱き合う交流の場となりました。

全国代表者会議開催

 日本被団協は10月23日、東京都内で今年度の「全国活動者会議」を開催し、全国から100人が参加しました。
 会議はまず、「原爆被害への国家補償」実現のための運動について、これまでの成果と残された課題を明確にし、今後の運動の展望を切り開く視点で討論を行ない、出された意見をふまえ、さらに議論を深めることを確認しました。
 「核兵器の犯罪を裁く国際市民法廷」開催の取り組み、アメリカでの同時多発テロと報復戦争に対する被団協の活動について、提起と討論が行なわれました。
 国会請願署名や緊急要求署名、在外被爆者への法適用では、署名運動の方法などについて意見や経験交流が行なわれ、被爆の実相普及については、各地から豊かな活動が報告されました。
 原爆症認定に関しては、北海道・安井、東京・東の両裁判の報告とともに、「集団提訴」についても議論され、提訴の時期や方法などについて専門家の知恵も借りながら今後さらに検討を深めることになりました。
 最後に、アピールを採択して終了しました。

テロも戦争もやめよ 東京・渋谷で街頭宣伝

 日本被団協がよびかけた「テロとそれへの報復戦争に反対する緊急の街頭宣伝行動」が10月16日、東京・渋谷駅前で行なわれました。
 行動には、東京、千葉、埼玉から約30人の被爆者が駆けつけ、支援者とともに「原爆と人間展」パネルを掲げ、チラシを配布し、ブッシュ米大統領と小泉首相あての要請ハガキへの記入を訴えました。
 すすんで要請ハガキを書きにきた18歳と19歳の女性ふたりは、「テロリストがアメリカにやったことも、アメリカがアフガンにやっていることも同じ暴力。それでは何も解決しない」「唯一の被爆国だから、(小泉首相は)それを忘れないで二度と悲しいことをくり返さないで欲しい」と語っていました。
 なお、日本被団協は「テロも報復戦争もやめよ、核兵器使うな」と声明を発表し、日米両政府に送付しました。



相談員研修会ひらく 認定制度改善に「集団訴訟」検討も

 被爆者中央相談所は10月22日、東京都内で今年度の「全国相談員研修会」を開催。全国から90人が参加しました。
 はじめに肥田舜太郎理事長が、「健康の話とは異なった新しい視点での提起になる」とあいさつ。講演ではまず、ハンセン病の集団訴訟をたたかった原告団事務局長の國本衛さんのお話を聞きました。
 ついで高見沢昭治弁護士が、原爆症認定裁判の集団提訴を行なう意義を詳しく説明しました。
 長崎・松谷、京都・高安の裁判で追い詰められても、国は根本的には反省せず、新しい切り捨ての基準を持ち出していると批判し、13人で始まったハンセン病の集団訴訟が最終的に2,500人以上の原告に膨れ上がった経験をふまえながら、集団提訴の利点を講演しました。

秋の中央行動

 代表者会議に続く24日、日本被団協は政府・国会へ向けた中央行動を行ないました。
 自衛隊の海外派遣を含む法案審理の緊迫した国会情勢のため、対応した省庁・政党は限られていましたが、参加した100人は元気よく要請に飛び回りました。
 政党要請では、民主党、共産党、社民党が対応。テロと報復戦争に対する被爆者の思いや、認定基準や在外被爆者への法適用の問題で意見を交し合いました。
 外務省へは、核兵器廃絶の明確な約束を実現するうえで日本政府の積極的な働きかけを要請。辻本課長補佐ら3人が対応し、「核保有国が受け入れる内容が必要」で、今年は交渉期限を切らない決議案を国連に提出すると回答。報復戦争については、「米国の行動は自衛権の発動だ」と弁護しました。
 アメリカ大使館へは「報復戦争をやめよ、核兵器使うな」と要請に行きましたが、警察の異常な警備によって20数人の被爆者たちは大使館行きを阻まれ、要請書の提出も代表2人だけに制限されました。
 首相官邸の訪問は実現しませんでしたが、小泉純一郎議員の秘書に要請書を手渡しました。
 なお、各県独自に地元選出議員と懇談をもったところもありました。

第3回在外被爆者検討会

 厚生労働省の第3回「在外被爆者に関する検討会」が10月4日開かれ、秋葉忠利広島市長ら50人が傍聴しました。
 この日は、韓国原爆被害者協会の崔日出(チェ・イルチュル)前会長、米国被爆者協会の倉本寛司名誉会長、在ブラジル被爆者協会の森田隆会長が陳述しました。
 崔さんは、韓国では原爆投下で解放されたと考えている人が多いため、被爆者であることがいえず、二重三重に被害を堪え忍ばねばならなかった苦しみを語りました。
 倉本さんは、被爆者は保険にも入れず、医療費負担が大変だと陳述。森田さんは、南米の被爆者はほとんどが日本国籍を持っている。国策にそって移民した被爆者を差別するのは棄民政策かと、きびしく陳述しました。 次回は11月8日午後3時から。

在外被爆者訴訟の状況
 国が控訴した郭貴勲裁判の控訴審第1回口頭弁論が10月24日、大阪高裁で開かれました。
 李康寧さんの裁判が結審し、12月26日に長崎地裁で判決が言い渡されます。
 さらに10月3日、在韓被爆者の李在錫さんが、日本政府の特別手当打ち切りを違法として、大阪地裁に提訴しました。



テロ、戦争に反対するアメリカの平和運動

 同時多発テロとその後の報復戦争に対して、アメリカ国民のなかにも平和的解決を求める力強い動きがあります。被爆者問題の研究者で、毎夏の被爆者訪米遊説の企画立案者のひとりでもあるジョゼフ・ガーソンさんに現地レポートを寄せていただきました。
*  *  *
 私が住むボストンではテロ事件の翌日、亡くなった人びとを悼み、テロを非難し、「戦争は答えではない」と訴える祈りの会を緊急によびかけ、学生を中心に700人以上が参加。米国内で反感の対象にされているアラブ系住民、イスラム教徒らの人権を守り、テロの根本にある要因に目を向けようと訴えました。
 ニューヨークでは、世界貿易センター近くのユニオン・スクエアが人びとの平和祈念の場になりました。攻撃の2週間後には、多くの平和団体が集まり「私たちの名で戦争をするな」と連合体を組織。数百人がデモ行進をしました。
 アメリカフレンズ奉仕委員会は、数千人の署名―日本からの数百人分を含む―をえて、ニューヨーク・タイムス、ワシントン・ポストなどの有力紙に「これ以上犠牲者を出すな」と全面広告を掲載しました。
 米・英のアフガン攻撃が始まって数日後には、抗議集会とデモ行進のために2,500人が集いました。米国各地の何百ものキャンパスで学生たちは討論集会を開き、多くの街で様々な会が持たれています。
 報復戦争は、核武装したパキスタンや中東の国々で紛争を引き起こす可能性があります。ブッシュ政権がいち早くかかげた「新しい戦争」の考えは非常に危険です。9月11日のテロとその後の炭疽菌事件はテロリストの犯罪ととらえるべきで、戦争ではありません。
 米国がかつて多くのイスラム原理主義者に軍事訓練を施した事実、中東における米国の覇権、独裁政権の支援、米軍基地の存在など、このような条件、圧力、不公平が続く限り、抑圧された人びとはテロのような犯罪や正当化できない行為に走る可能性があります。
 正義を求める活動が平和をつくり出すのです。一般市民を殺す行為では、誰にも安全をもたらすことはできません。    全文    

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