「被団協」273号 - 2001.10月

主な内容
1面 相談所講習会 米臨界前核実験に抗議
2面  声明   認定のあり方を問う?下   在外被爆者検討会   長崎の被爆者が提訴   安井原爆訴訟  
3面 各都道府県の活動状況  「核かくしかじか」
4面 相談のまど「介護保険料について」 


相談所講習会 中国、近畿ブロックで開催

 今年度の中央相談所の相談事業講習会が始まりました。被爆者の高齢化がすすんでいますが、講習会に参加する被爆者はみなさん元気です。
 肥田舜太郎相談所理事長の講演テーマは「身体は老いても、被爆者魂老いさせず」。伊藤直子相談員の「相談事業の課題」、日本被団協役員の「被爆者運動の課題」と合わせ、参加者は熱心に耳を傾けています。各地の活動や相談事業についての報告も活発。高齢化に負けない意気込みです。
【中国ブロック・島根】 中国ブロックの講習会は9月20、21日、島根県玉造温泉で開かれ、各県から218人が参加。肥田理事長、伊藤相談員、小西悟日本被団協事務局次長が講演しました。
【近畿ブロック・兵庫】 近畿ブロックの講習会は9月25日、神戸市で開かれ、各県から65人が参加しました。肥田、伊藤、小西の三人が講演を行ないました。
 どちらの講習会も、参加者は「自分自身の健康管理が大切であることを初めて確認し、感謝している」などと話していました。



アメリカの14回目の臨界前核実験に抗議

 日本被団協は9月28日、アメリカが9月27日(日本時間)にネバダの実験施設で行なった通算14回目の臨界前核実験への抗議と、同時多発テロにたいする武力報復反対の要請を行ないました。
 最初に、テロ事件の犠牲者を悼んで黙祷を捧げたあと、日本被団協や東友会の 抗議・要請文 を読み上げ、一般市民を大量無差別に殺傷したテロに武力報復を準備しながら、それ以上の被害を生み出す核兵器の実験を実施することに怒りを込めて抗議。藤平典代表委員が、大使館に文書を手渡しました。
 行動には、東京、埼玉など首都圏の被爆者団体のほか熊本から25人が参加。支援者15人もかけつけました。また秋田、東京、埼玉、長野、石川、愛知、三重、兵庫、大分、長崎、熊本の各県が、それぞれ抗議文送付、座り込みなどを行ないました(9月28日までに報告のあった分)。



在外被爆者検討会

 厚生労働省の「在外被爆者に関する検討会」の第2回会合が9月4日、同省内で開かれ、秋葉忠利広島市長、伊藤一長長崎市長、袖井林二郎法政大学名誉教授の3人が参考人として意見陳述を行ないました。
 秋葉市長は、外国では原爆後遺症への理解が不十分で、治療の専門家も少ない、在外被爆者は国内被爆者より劣った状況にあり、海外居住だけで援護が受けられないのは不平等だとして、国内の被爆者と同様な支援が必要と強調しました。
 伊藤市長は、在外被爆者の厳しい実態と同市が実施している対策を紹介し、現行の保健手当て相当の「在外被爆者手当」(仮称)の新設や、渡日治療事業、被爆者医療の交流、研修事業など、国の本格的な援護施策充実の必要性を訴えました。
 袖井教授は、在外被爆者は人類の犯した原爆投下という犯罪の生き証人であり、核兵器廃絶を世界に訴えるスポークスマンたりうるのであり、その救援は国の品位を高める述べました。
 第3回目は10月4日。在外被爆者から意見を聴取する予定です。
 
提訴−離日中の健康管理手当支給停止は違法

 長崎の被爆者で、日本語を教えるために中国の大学へ渡っていた広瀬方人さん(71)は、日本を離れていた期間に長崎市が健康管理手当の支給を停止したのは違法と、その支給などを求めて9月11日、長崎地裁に提訴しました。
 元高校教師の広瀬さんは、1973年から健康管理手当てを受給していましたが、定年退職後の1994年8月、日本語教師としてハルピンの大学に赴任するため日本をを離れました。その後95年に帰国するまでの間、手当の支給が打ち切られたもの。
 広瀬さんは、「どこに住んでいても被爆者は被爆者。法律上は特に規定がないのに、厚生省の局長通達で在外被爆者を排除するのは許せない」と話しています。

安井原爆訴訟第10回口頭弁論

 安井原爆訴訟の第10回口頭弁論が9月3日、札幌地裁で開かれ、厚生労働省の新しい認定審査方針の内容について国側が提出した準備書面にたいし、弁護団が、DS86の延長線上にすぎず、かえって厳しい基準になっていると反論。今後、肥田舜太郎医師を証人として申請する予定であることが表明されました。
 この日、被爆者15人を含む52人が傍聴。支援署名も2万672筆分を裁判所に提出し、累計で6万6,728筆となりました。
 裁判後の報告会では、高崎弁護団長が、新しい認定審査方針が相変わらず被爆者の実態を軽視した機械的な数値の当てはめになっていることを指摘。とくに前立腺ガンは被爆後相当の期間をおいて発症する例が多く、こうしたことも考慮した審査が必要ではないかと訴えました。
 また、東京の東裁判で国側が肥田医師の証人採用を拒否したことにたいし、3万の署名を提出して証人採用を実現した経験に学び、さらに署名を広げようとの声がありました。
 傍聴者の中からは、「裁判の進行の遅さが歯がゆい。被爆者の年齢を考えた審理の進行を強く望む」という声も。次回は11月12日午前10時30分から。

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