「被団協」新聞 2000.5月号

主な内容
1面 第7回被爆者問題研究会開かれる
2面  11回目の臨界前核実験に抗議   核かくしかじか  被団協総会は6月5、6日
3面  高校生が折り鶴壁画  長崎市が山口仙二代表委員を表彰
4面 相談のまど「介護保険」 


科学者と被爆者が共同研究−第7回被爆者問題研究会

 日本科学者会議と日本被団協の共催で、第7回被爆者問題研究会が2年半ぶりに4月22日、東京・駿河台の明治大学リバティタワーの教室で開かれました。
 札幌、金沢、和歌山、愛知、甲府、広島、千葉、東京の被爆者や、大学の研究者、法律家など50人が参加、午前10時から午後5時まで、6つのテーマで報告、討論し、熱心に研究を深めました。

 国際情勢と核廃絶の課題
 第1セッションの冒頭報告は、明治学院大学の浅井基文教授で、テーマは「2000年の国際情勢と核兵器廃絶の課題」。
 「核兵器をめぐる情勢は楽観を許す状況ではない」と前置きして、「アメリカの核戦略は、新たな核軍拡の引き金になりかねない」、「中台関係は対岸の火事ではない」、「湾岸戦争、ユーゴ空爆で戦争がやりやすくなっている」「アメリカは国連に代わってアメリカ中心の共同体をつくろうとしている」など最新の国際情勢を報告しました。
 浅井氏はまた、「新ガイドラインは核安保」であり「日本への核攻撃を想定している」とのべ、周辺事態法を発動させない運動と核兵器廃絶運動を結びつけて行くことの大事さを強調しました。
 この報告に、「核兵器廃絶を妨害している日本政府を変えなくては」、「被爆の実態を知らせることが周辺事態法の発動を許さない道」などの意見が出されました。

 「基本要求」の改定作業から
 浅井報告をめぐる討論の冒頭、指名討論として「『原爆被害者の基本要求』の検討作業から」と題して、日本被団協基本要求改定委員会の吉田一人委員が、「21世紀 被爆者宣言」(案)について報告しました。
 吉田委員は、この「宣言」を、21世紀に残す被爆者の遺産と考えて作成しているとのべ、多くの人に討論への参加を要望しました。
 「宣言」案は、一部30円(送料別)で希望者にお届けしています。

 被爆者に関する法律の問題点
 第1セッションの第二報告は、小川政亮・元日本福祉大学教授の「原爆被爆者に対する援護に関する法律の問題点」。
 小川氏は、現行法の特色として、@国家責任を前文でうたっている A所得制限の撤廃 B原爆投下時にさかのぼっての特別葬祭給付金の給付をあげ、これらは国家補償になるからといって政府が拒否してきたものばかりだとのべました。
 問題点として、「国の責任」とはいっても国家補償と明示しない、核兵器の廃絶が「究極的」となっている、医療費で社会保険を優先させているなどを指摘。そんな法でも、旧原爆二法がもっていた国家補償法的性格を援護法的に解釈・運用させ「真の援護法に値するものに変えさせる」「まともな法にさせることが大事」と報告しました。

 放射線の線量評価と影響判定
 第2セッションは、放射線をめぐる最新の研究成果の報告です。
 まず「広島、長崎の放射線の線量評価と影響判定の現状」と題して、名古屋大学の沢田昭二名誉教授が報告しました。
 原爆投下時の広島、長崎市民が浴びた中性子線量やガンマ線量が、国が主張しているDS86の線量と、研究者が測定した線量とで遠距離でかなり違うことを説明。機械的尺度でなく被爆実態に即して被害を見ることの大事さを強調しました。

 JCO事故と急性放射線症
 最後の報告は、日本大学の野口邦和講師の「JCO臨界事故と急性放射線症」。439人の被曝者、内1人死亡、1人重体の犠牲者を出した茨城県東海村のウラン加工工場での事故を、スライドを使って分かりやすく説明。営利優先・安全軽視の会社ぐるみの違法行為と乱暴な作業が事故を起こしたと指摘。政府と県が出した10km圏内退避要請は過大で、風評被害も拡大したときびしく批判。原子力施設の安全確保を強く訴えました。



 アメリカの11回目の臨界前核実験に抗議

 アメリカ政府は4月7日未明(日本時間)、オーボエWと名付けた11回目の臨界前核兵器実験を、ネバダ核実験場で強行しました。実験のねらいについては米政府は、「核兵器の信頼性確保」のためと説明しました。
 日本被団協と首都圏の被団協は、2月、3月につづく連続実験に怒り、クリントン米大統領あての抗議文をもって、アメリカ大使館前で抗議行動を行ないました。
 行動には東京と千葉の被爆者18人が参加。日本被団協と東友会の抗議文を読み上げて、「核実験やめろ」「世界のどこにも被爆者をつくるな」などと唱和。参加者1人ひとりがマイクを握って「核兵器をなくせ」「核兵器廃絶の国際条約を結べ」と訴えました。

 3月23日と4月7日にアメリカ政府が立て続けに行なった臨界前核実験(10回目と11回目)に対し、各地の被団協が怒りを込めて抗議を行ないました。
 熊本県被団協は、米大統領に抗議文を送るとともに、熊本市の辛島公園に座り込み、ビラを配布し、ハンドマイクで市民に核廃絶を訴えました。
 神奈川県原爆被災者の会は、県生協連や県原水協などとともに、米軍基地のある横須賀で抗議行動。代表者が基地司令官を訪ね、抗議文を提出しました。
 長崎被災協は、米大統領あての抗議と合わせ、アメリカの核実験に抗議し、核兵器廃絶への責任を果すよう、日本政府に要請書を送りました。
 ほかにも、広島、秋田、岩手、静岡、三重、山口など各県の被団協が、座り込みや抗議文送付の行動にとりくみました。



折り鶴壁画に願い込め−千葉・不二女子高校の生徒たち

 千葉県の女子高生が作った折り鶴が、平和への願いを託して海を渡ることになりました。
 折り鶴を作ったのは、不二女子高校(市川市)の3年生、170人。広島への修学旅行で被爆者の話を聞いたのをきっかけに、この思いを「世界に広げ、未来につなげたい」と、文化祭で1人が170羽ずつ計2万8900羽の折り鶴で絵柄を表わした「折り鶴壁画」を製作。卒業式のときにも展示しました。
 その後、壁画に使った折り鶴の有効な活用方法を探して日本被団協に相談し、カナダなどへ贈る話が決まったものです。
 同校の飯岡正光先生は「生徒たちの思いが活かされてうれしい」と語っています。

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