2003年4月17日
原爆症認定却下処分取り消しを求める
集団訴訟運動 第一次提訴にあたって
 
日本原水爆被害者団体協議会
 本日、長崎地方裁判所に3名、名古屋地方裁判所に1名、札幌地方裁判所に3名、合計7名の被爆者が、国・厚生労働大臣を相手に原爆症認定却下処分の取り消しを求めて提訴した。これは、原爆被害受忍政策のもとで、長年耐えに耐えて苦しんできた被爆者が立ち上がったのである。
 今回の提訴は、2001年10月に日本被団協が提起した、原爆症認定制度の抜本的な改善を求める「原爆症認定集団訴訟運動」の先陣を切るものであり、今後更に全国各地で提訴が相継いで行なわれることになっている。
 日本被団協は、昨年7月以来4回にわたって「全国いっせい認定申請」に取り組み、今年3月までに252人の被爆者が申請を行なった。さらに、このいっせい申請日以外の申請者を加えると496名が申請を行なっている。
 申請者は癌など原爆放射線によって発病するといわれている疾病にかかっており、被爆以来いくつもの病気や健康不安と闘ってきた被爆者である。しかし、国は申請者の多くを、認定の審査方針としている「原因確率」によって却下している。昨年度の認定率は、19%ときわめて低いものとなっている。
 2000年7月最高裁で松谷英子さん、同年11月には大阪高裁で高安九郎さん(ペンネーム)が勝訴して、認定却下処分が取り消された。しかし、国・厚生労働大臣は、この判決を逆手にとって、2001年5月以降以前より更に厳しい「認定審査方針」を採用している。
 国が原爆被害の事実からかけ離れた「原爆症認定」を行なうのは、原爆被害を過少に評価し、原爆の被害は大した事はない、核兵器がいつでも使用可能な兵器である、と考えるアメリカ政府と同じ立場に立つからである。
 現在の「認定審査方針」である原因確率は、アメリカが戦後直ちに広島と長崎に設立したABCC(原爆障害調査委員会)と、その後日米共同運営となった財団法人放射線影響研究所(放影研)が長年調査研究してきたデータ―を用いている。ABCC・放影研は、被爆者をモルモットとして、核兵器の効果を戦後から今日まで、軍事目的のために研究してきた機関であり、我々はそのデーターを信用できない
 本日からはじまる集団訴訟運動は、核兵器廃絶を求める被爆者の命をかけた闘いである。現に認定申請中、異議申立て中に死亡する被爆者が後を絶たない。国・厚生労働大臣は訴訟での争いをやめて、原爆症の認定制度を抜本的に改め、一日も早い解決に努力することを望むものである。そして、被爆国として核兵器なくせ、ふたたび被爆者をつくるな、と世界に向かって主張するべきである。
 そのために日本および世界中のみなさんのこの運動へのご支援、ご協力を心からお願いするものである。

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