日本被団協はテロにたいする軍事「報復」の開始にあたり次のような声明を出しました。

2001年10月15日
日本原水爆被害者団体協議会
声 明
テロに対する報復戦争の勃発にあたって

 私たちは、56年前の8月のあの日、広島・長崎で無残に焼き殺された幾十万の死者たちの思いを自らの体験に重ねて、「ふたたび被爆者をつくるな」「核戦争起こすな、核兵器なくせ」と、国の内外で被爆の体験と原爆被害の実相を休むことなく語り広げてきました。
 いまアフガニスタンとその周辺で生じている重大事態を前にして、私たちは切実な危機感、恐怖感にとらわれています。
 9月11日の米国での無差別大量殺傷テロ事件をきっかけに、大規模な「報復」戦争がはじまり、核兵器がふたたび実戦で使用される危険が高まっています。しかも、日本政府がこの戦争に全面的に加担しています。
 「核兵器も戦争もない21世紀を」という私たちの悲願、命がけの叫びも、「政府の行為によってふたたび戦争の惨禍が起ることのないやうに決意し」て制定された日本国憲法もろとも、無残に踏みにじられてしまいました。悲しみ、憤り、といった言葉では言い表せない痛恨と不安で居ても立ってもいられません。
 私たち被爆者は、人類がかつて味わったことのない「地獄」を体験しました。原爆がもたらした「核戦争地獄」の恐ろしさ、惨たらしさは、人間の言葉ではとても言い表すことのできないすさまじいものでした。
 からだ、こころ、くらしに大きな傷を負った被爆者にとって、毎日を生きることはそれ自体が困難なたたかいでした。言語に絶する苦痛の体験から、被爆者は「この苦しみを他の人たちにけっして2度と味わわせてはならない」「核兵器は人間と共存できない絶対悪の兵器であり、一日も早く廃絶しなければならない」という思想をつくりあげました。それは恩讐をこえた「祈り」であり、「悲願」であります。「報復」などという言葉は被爆者には無縁のものです。
 近年この思想は、人類にとって共通の財産になりました。ごく少数の核保有国の権力者と同盟者らをのぞいて、核兵器の廃絶は疑いもなく世界中のすべての人にとっての最も重く切実な願いです。核兵器の廃絶とともに戦争そのものの廃絶が、体験にもとづく被爆者の悲願です。
 無辜の市民をいわれもなく大量無差別に殺傷するテロ行為は人間として許すことのできない重大な犯罪です。テロを行なうものは人道と国際法によって厳しい裁きを受けねばなりません。けれども戦争によっては何ひとつ解決しません。暴力に対する報復は際限のない暴力の連鎖を生むだけです。
 日本被団協は、日米両国政府と全世界の人々に訴えます。
 1. どんな理由があってもテロ行為は許せません。テロリストに対しては法にもとづく厳正な裁きを求めます。
 2.戦争はやめてください。武力行使はすぐやめてください。
 3.核兵器は絶対に使わないでください。
 4.日本政府は「報復」戦争に協力しないでください。自衛隊を出動させないでください。
   政府は、アメリカに、戦争をやめるよう、また核兵器を絶対に使わないように忠告してください。


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