「被団協」251号 1999.12月

主な記事
1面 国連で核兵器廃絶決議  原爆裁判
2面 在外被爆者はいまA  相談所研修会 「核かくしかじか」
3面  原潜を破壊しても無罪  東京都、「被爆者の子」助成に攻撃
4面 相談の窓「老人保健施設への入所」

核兵器廃絶の国連決議に賛成を−小渕首相に文書で要請

 国連第1委員会は11月10日、「新アジェンダ連合」など57カ国が提案した「迅速で全面的な核兵器廃絶」の実現を求める決議を賛成90、反対13、棄権37の圧倒的多数で可決しました。
 これをうけて日本被団協は11月17日、小渕恵三総理大臣にたいし、国連第1委員会の決議が国連総会で採択されるように、努力を求める要請書を送りました。
 また、在日大使館を通じて131カ国の元首に、英文で「核兵器廃絶への努力を求める要請」書を22日、いっせいに送りました。
 日本政府は第1委員会で、「新アジェンダ連合」の決議には棄権。独自に「核兵器の究極的廃絶のための核軍縮」案を提出。賛成は128カ国でしたが、昨年より32カ国も賛成が減りました。

新アジェンダ連合とは

 「核兵器廃絶に向けて新しい課題(アジェンダ)が必要」と考えて共同行動をつづけている7カ国のことで、参加国はブラジル、エジプト、アイルランド、メキシコ、ニュージランド、南アフリカ、スウエーデン。
 昨年の国連総会では核保有国の核兵器廃絶に向けた責任を明確にした決議案を33カ国で共同提案し、114カ国の賛成で可決をえました。
 今年の決議案は、核兵器廃絶のための明確な約束を求めたうえで、@完全廃絶を展望した戦術核兵器の削減、A配備されている核兵器を警戒態勢から解除し、発射装置から切り離すことの検証、B核兵器政策のさらなる検証、C核兵器および核分裂物資貯蔵の情報公開を、核保有国に迫る決議案を出していました。



松谷裁判の署名46万に

 原爆松谷裁判で弁護団が最高裁に提出した「上告理由反論書」の学習会が11月25日、東京・四谷の主婦会館会議室で行なわれ、原爆松谷裁判ネットワーク参加の諸団体から50人が参加しました。
 反論書執筆の中心メンバーとなった内藤雅義弁護士が、原爆被害を小さく見ようとする国側の上告理由と、原爆被害の実態を総合的に見ようとしている弁護側の反論書の特徴を分かりやすく説明しました。会場から質問、署名運動の実践発言などがあり、勝利への決意を固め合いました。
 この日はまた、午前8時から最高裁前でのビラ配布、書記官要請があり、早期判決要請署名が26,581人分提出され、累計で46万人超となりました。



裁判で追いつめられる厚生省−東京地裁、大阪地裁で原爆症認定求め公判 
 
 C型肝炎での原爆症認定を求めて裁判を起こした、東京の東数男さんの初公判が11月9日、東京地裁611号法廷で行なわれました。
 東京と首都圏の被爆者と、長崎原爆松谷訴訟を支援する会の代表ら35人が傍聴しました。
 冒頭陳述で東さんは、被爆で生死の境をさまよった経過を語り、被爆線量を測りもしないで、肝炎が放射線と関係ないときめつける厚生省に強い怒りをぶつけました。
 裁判長は次回までに、国側が原爆症と認定しない理由を提出するよう命じました。次回は1月26日午前10時。
 
 大阪高裁で審理中の京都原爆裁判は、11月19日に第4回公判がありました。これまでの公判で国側は、原告の治療資料を出せ、白血球減少症は大したことない、医師の意見書は信用ならないと主張してきました。
 弁護団はこの日、今になってデータ不足とか、主治医が信用ならないというのは裁判引き延ばしの主張にすぎないと反論しました。次回は2000年2月1日。


原潜を破壊しても無罪−イギリスの裁判所が3女性に判決

 イギリス海軍の基地に侵入し、核兵器積載原子力潜水艦の装置を壊した3人の女性に、スコットランドの裁判所が10月21日、無罪の判決をいい渡したことが、世界の話題になっています。
 この女性は、反核団体「トライデント・プラウシェア2000」のメンバーで、45〜63歳の英国人とデンマーク人。
 今年6月8日、グラスゴー近くのゴイル湖にある核ミサイル・トライデントを積載する原子力潜水艦の付属施設の「はしけ」に乗り込み、研究設備とソナー設備を、約3時間にわたってハンマーで壊したり、水に棄てるなどして「非武装化」したのです。
 この設備がないと原潜は海中にあっても丸見えになり、武器としての能力が低下します。
 裁判で弁護側は、@1996年の国際司法裁判所の勧告的意見で、核兵器は国際法違反とされている。A女性たちは罪を犯したが、それはこれを上回る犯罪を防ぐためだったから、免罪されるべきだと主張しました。
 これについてギムブレト裁判官(60歳)は、「英国のトライデントが他国に脅威を与えていて国際法を犯すと解釈することもできる」、「こうした行動をくり返していいというわけではない」が、女性たちの行動は「正当化される」と判断、陪審も支持して、無罪放免を決定したものです。
 これにたいし法務長官は、「問題を解明するために最高法院に判断を求める」と決定しました。
  女性側の「プラウシェア」広報担当者も、「トライデントの合法性が正式に議論されることを待っている。イギリスの核兵器システムが、国際人道法の諸原則とまったく相いれないものであることを立証する用意はできている」とのべました。
 3人のうちのアンジー・ゼルダーさん(49歳)は1996年にも、ランカシアーの兵器工場に侵入し、インドネシアに輸出予定の戦闘機を破壊したことがあります。このときも裁判所で、「輸出先(東チモール)での虐殺行為を防止した」と主張し、無罪の評決を受けています。
 このニュースの詳細は佐賀大学理工学部・豊島耕一教授のホームページに紹介されています。
http://www03.u-page.so-net.ne.jp/ta2/toyosima/goilsupt.html トップへ


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