「撫順戦犯管理所開設 50周年記念 友好訪中団」に参加して

 

10年振りに訪れた2度目の中国。色んな旅をしてきましたが、今回は本当に有意義

な濃い旅でした。行ってみなければわからない、予定は未定的な流れで、「インディ

アンタイム」ならぬ「チャイニーズタイム」を体感しつつ、毎日毎日が深く、重く、

学びや驚きの連続で、あっという間の1週間ではありませんでした。

 

その中で最も印象に残っているのは、今回初めてお会いした中帰連の会員の皆さんの

人間的魅力です。「何かちがう、どこかちがう」気骨のあるキラリ☆と光る方ばかり

でした。体験談を話される際の誠実さ、旅を共にする中で私達にかけて下さる心遣い

に、幾度も感じるものがありました。訪中前に丁寧なお電話を下さった高橋様、さり

気なく声をかけて下さる大河原様、バスの中で心ゆくまで写真集を見せて下さった山

口様、帰国時の空港で、のどがかれて声が出なくなった私に間髪入れず、のど飴をく

ださった山中様、その他、文字数に制限があるので割愛させていただきますが、どの

場面にも「心」にふれる優しさがありました。会員の皆さんのそうした「心の温かみ

」の根っこにあるのが撫順戦犯管理所での貴重な体験なのだと感動しました。そして

、戦犯管理所の奇蹟をさらに知るにつれ、これ以上の人間と人間の魂のほんとうに深

いところのぶつかり合いがあるんだろうか、と思いました。「時々オレの人生って何

だったんだろうと考えますが、でも今が一番、幸せです。」とにっこりされた三木様

の穏やかで至福に満ちた笑顔に接して、怒られそうですが、「人間冥利」に尽きる類

いまれな撫順での素晴らしい体験をされた会員の方をうらやましく思いました。

 

戦犯管理所での交流、九・一八記念館の臨場感ある展示の見事さ、中国側の心からの

もてなし、友促会への表敬訪問での「これぞ国際交流!」と実感できたうれしい瞬間

等、すべて貴重な体験でしたが、特に「ここに来れて本当に良かった」と思ったのは

平頂山事件の現場です。「骨の川」と表現されている通り、累々たる骸骨のうねり。

最初は、すでにインターネットで知っていた父母が子をかばった形で残っている有名

な三体のまとまった骸骨に注目していましたが、やがて一体、一体を見ていくと、ど

の骸骨にも、それぞれにドラマがあり、死者がこちらに語りかけるという生易しいも

のでなく、全身で「これを見ろ!」と訴えてくる迫力で、どれも口を開き、今も苦し

そうな表情で、まだそこに生きていて、昇天していないのだと、涙が出てきて、ここ

での見学を終えてもしばらく、父と絶句していました。


 

「他国を侵略するのは当然悪いことだけれど、他国から侵略されたことは中国の「恥

」だと、それは自分たちがあまりに無知で弱かったからだと、「将来の中国は?」の

問いにきゃぴきゃぴした今どきの高校生でも、「私達は外国に侵略されない強い国を

作ります」と即答するあたり、中国は戦争の被害側、犠牲者という立場に留まるので

なく、戦争からしっかりと「学習」していると実感したし、中国の民衆のたくましさ

も感じました。

 

初めて訪れた10年前の中国で、お世話になった国際旅行社の人たちは気さくで親切

だったけれど、道中いろんな話題になるにつれ、何か「言いたいんだけど、言えない

」ような、どうもあちら側に見えない壁があるようで、風通しの悪さを感じましたが、

今回出逢った、友好協会の王さんや、黄さんなど若者との会話ではそういったバリア

がなくストレートに伝わってくるものがあって、2人とも自分の言葉で本音を語って

いる印象で、さわやかでした。政治的な質問にも、確信を持って、国の政策を支持す

る意見を述べられ、現在の中国の自由な雰囲気も感じました。

 

3日目の夕食のあたりから、参加者の皆さんもはじけた感じがあって、私もなるべく

違うテーブルに座って他の参加者の方々と歓談するうち、今回の訪中団に何となく参

加した人は1人もいなくて、それぞれにこの旅に対する期待や思い入れがあることに

気付きました。多数の方々が様々な活動(従軍慰安婦問題、731部隊から引きずっ

ている現在の医療の現状や問題、冤罪事件、ピースサイクル等など)に携わっておら

れ、あまり知らなかった分野のお話を聴かせていただき、新鮮な刺激を受けました。

「撫順の奇蹟を受け継ぐ」若者のネットワークも出来ましたし、これから、インター

ネットを利用して、中帰連の事業と精神は引き継がれ、平和活動も活発になると確信

します。同時にIT 時代だからこそ、「ライブ」ム 人と人が実際に会って話をしたり

、交流したり、現地に身を置いて自分の体で感じることがとても大事だと思います。

 

日中間の歴史、そして現在の日本について、ぎょっとするほど自己の無知を実感し、

同時に覚醒するような自分にとって大変意味のある1週間でした。

 

旅の直前、高橋様より、お電話いただいた際に「何でもお手伝いしますよ」と言いま

したが、帰った時は「手伝ってる場合じゃない、受け継いでいかないと、自分たちが

何かやらないと」と、又してもぎょっとなりました。でも、その時に高橋様の「ぼち

ぼちね、急がないでやって下さいよ。先は長いから」のお言葉も思い出し、先ずは学

習、そして自分なりに出来る事からぼちぼちやっていこうと決意しました。始める以

上、簡単には投げ出すことの出来ないこの地道に積み重ねてこられた平和活動を「続

ける」ために。