平成21年9月13日掲載

  「特別投稿作品」

    越 前 賛 歌 

         木津かずのり (鯖江市)

    泰 山 木 の 花     

若葉山息吸ってみて吐いてみて

雨あとの土の匂いや新樹光

サングラスまだ衰えぬ好奇心

炎帝に越前若狭跪く

牛撫づる一会ありけり牧五月

草笛の吾のみ遂に鳴らざりし

草いきれまた草いきれ関ヶ原

水打って盛り塩を置く古風かな

漢とはかくや泰山木の花

蛍火や初恋という美しきもの

神鶏の気だるき声や送り梅雨

瀧音のひねもす濡れていたりけり

定番のお子様ランチ水中花

大夕焼ビルの谷間の中にかな

青蜥蜴ジュラ紀のままの貌をして

一語もて一語に応う古茶新茶

油照り満車を告ぐる駐車場

鍵の数また一つ増え戻り梅雨

涼風を纏い給うや技藝天

三伏や玻璃一枚の内と外

襁褓替う嬰は土用の風を蹴り

挨拶は簡にして妙夏料理

素裸で御免と言える間柄

風鈴や言い出せなくて言いたくて

遺影なる母に言問う夜の秋

 

 

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