平成21年1月25日掲載

  「特別投稿作品」

    越 の 言 霊

         木津かずのり (鯖江市)

    初 日     

初日浴ぶとき少年の志

緞帳の上りきったる淑気かな

喰積や箸は柾目の秋田杉

佳き人を演じ疲れし四日かな

振袖の翼めく日や成人す

   

    水 仙 花     

風花の米原駅で別れけり

花八手忽然と友老いしかな

言いて悔い言わずを悔いし古暦

懐手解きてその気になっていし

虎落笛生るるあたりを闇という

冬ざれや吊るもの多き深庇

木枯や調べ激しき津軽三味

鷹柱男の空とふと思う

轍より始まる雪の通学路

夕凍みや灯して暗き村はずれ

雪吊の縄百条の一途かな

偽りのなき荒き息白き息

祈るとき人は虚心や冬北斗

謹厳の父ある如き冬座敷

大寒波能登半島をへし曲げて

笹鳴や軒を寄せ合う宿場町

北陸の怒涛明りに鰤の糶 

海鳴は越の言霊波の花

清晨の親鸞像は雪を被て

水鳥の沼もろともに寂びにけり

ささめ雪密かに出会う川と川 

幸せを吐き出す如く咳き込める

海風に乗り来る雪の殺気かな

荒磯路や冬日分け合う空と海

日脚伸ぶ隣の犬に名がついて

 

 

戻る