サルコイドーシスとは
 体に傷(ぎず)や組織の損傷ができたとき,傷(いた)んだ部分をおぎない, この傷をなおすためにできる新しい組織を「肉芽(にくげ) 」と呼びます。 肉芽は次第に線維組織に変化して,組織の修復作業は完了します。 皮膚の切傷(きりきず)がふさがり,もとに近い状態になってなおるのは この肉芽の働きによります。

 サルコイドーシスでは,体の各所に炎症による肉芽ができるのが特徴です。 肉芽は眼だけでなく,リンパ節,肺,皮膚,骨,肝臓,心臓,脳などにも できます。

病気の原因
1.原因はまだ不明
 サルコイドーシスの原因はまだわかっていません。 しかし,これまでの研究から,以下のように考えられています。

2.発病のしくみ
 なんらかの炎症を起こす物質,または病原体(病気を起こす微生物,細菌など) が肺に吸入され,まず肺に炎症を起こして小さな肉芽腫をつくります。 つぎにこの侵入者は肺門(気管支が肺にが肺に入るところ)や肺の近くにある リンパ節に到達して,リンパ節でも同様の肉芽腫をつくります。

 この侵入者を処理するための反応として,我々の体が肉芽腫をつくるのですが, この方法では侵入者を確実に破壊できないことも多いようです。このため, この侵入者はリンパ節から血管に入り込み,血液の流れによつて体の各所 に運ばれ,その一部はその場所で,また肉芽腫をつくります。

 肉芽腫ができても,あまり実際には障害を起こさない組織もありますが, 眼では肉芽腫の形成によってぶどう膜炎を起こすので,ぶどう膜炎や眼球内 にできる肉芽腫を放置すると視機能に重大な影響を及ぼします。 また肉芽腫が心臓や脳にできると,心臓がうまく働かなくなったり, 脳や神経の障害が現れ,生命に危険が及ぶこともあります。

3.ある細菌が原因か?
この病気の原因になるものとして,プロピオニバクテリウム アクネス (Propionibacterium acnes)という毒力の弱い, どこにでもいる細菌 (常在菌)が注目されています。通常あまり体に害を与えないはずのこの菌 を体が排除しようとして不必要な反応を起こすのが, 病気の本態または 病気の発端かもしれないと現在では考えられています。もしこの細菌が 病気を起こすのなら,この細菌が体のなかで異常に増殖し, これが体の 炎症反応を誘発するようです。

 患者さんの体にも,免疫や炎症反応の起こり方に異常があると考えられており, 遺伝による「サルコイドーシスにかかりやすい体質」があるのかも知れません。

患者さんの年齢・性別
 わが国のぶどう膜炎の患者さんのなかでは, サルコイドーシスは もっとも頻度の高い病気です。10歳未満の発病者はまれですが, 10歳台から70歳台まで, 年齢にかかわらず発病します。

 男性では青年期に発病する人が多く, 女性では50歳以上で よく起こります。わが国では,以前は患者数の男女差はないと されていましたが,最近では,女性のほうが多くなっています。 眼の症状がある患者さんだけでみると,女性が男性の3倍以上となっていて, 眼の症状は女性に多いようです。


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