大森文夫先生講演「心サルコイドーシス」
 サルコイドーシスは、多臓器疾患ですが、本日は心サルコイドーシス を中心にお話しします。心サルコイドーシスは、40歳代後半の方の発症が 比較的多くみられます。また、肺病変の進行と心病変の進行は同じでは ありません。X線で診断のつく肺病変と違い、心サルコイドーシスと診断を つけるのは、実のところ難しいのです。

 症状としまして、代表的なのは、完全房室ブロックという除脈で、 脈拍が非常に少なくなり、ペーカメーカーを入れていただかなくては、 ふつうの生活が出来なくなります。
 反対に頻脈で重篤になる人もいます。この病状の人には抗不整脈剤を 使いますが、それでも治まらない人には、ペースメーカーに似た植え込み 型除細動器という機械を使います。

 心サルコイドーシスの活動期には、炎症を抑えるために、ステロイド 薬を服用していただきます。心臓に関しては、早期発見、早期治療が望まれる のですが、以前は気づかれずに亡くなられた方も多く、また、診断される前に 致命的な心不全を起こし、心機能のきわめて悪い方もおられます。

 しかし、今では発見も早く、治療法も向上していますし、患者さんの協力 を得て、いくつかの検査で心サルコイドーシスと早期診断できるようになって います。
 検査はまず心電図。異常があれば、24時間携帯するホルター心電図を とります。心エコーで心臓の壁の厚みや薄い部分がないかを調べます。 あと、心臓カテーテル検査、ラジオアイソトープ(RI)、ガリウムシンチ、 タリウムシンチ、ポジトロンCTなども使います。

 必要ならば、心臓生検を行うこともあります。これらの検査が全て 行える病院は限られるのですが、何よりも患者さんの協力が大切です。

また、めまい、倦怠感、息切れ、不整脈なとがあれば、循環器を診る ドクターを受診し、必ずサルコイドーシスという病名を告げてください。 これはとても大切なことです。

 次に治療についてお話しします。ステロイドは心サルコイドーシスに対して 非常に良く効きます。ただし、炎症は抑えてくれるのですが、副作用の心配も あります。心筋の繊維化といって、みずみずしい心筋が収縮力のない繊維に おきかわり、その結果、心室瘤というふくらみができたりすることがあります。

 これらのことを考えて、ここ5年くらい前から、心サルコイドーシスと 診断された方でも、必ず全員がステロイドの早期大量投与の対象と しなくなってきています。これらは経験に基づくもので、不整脈だけの人、 心機能の悪くない人は、医師の管理下でステロイド服用を見合わせる ことも行われるようになってきています。

 次にステロイドの終了基準ですが、これはとても難しく、1日量5mg〜10mg に減らしたあたりで、再燃することがあります。この時には2ステップ前の 量に戻します。ステロイドの終了基準は今後も検討課題であり、完全に中止 するのは、医者も患者さんも勇気のいるところだと思っています。

 また、とても大切なことは、勝手に服用量を減らしたり、中止したり してはいけないということです。心サルコイドーシスは、早期に発見されれば、 予後は比較的良好です。今は心臓に異常がない人でも、今後心サルコイドーシス になる可能性がないとは言えません。

 今日の話を参考にしていただいて、自覚症状があれば、必ず受診時に サルコイドーシスと他科で診断されていることを伝え、検査と経過観察を 怠らないことが重要です。



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