立花暉夫先生講演(5)
 次に、病気が良くなった場合、目の変化が良くなり、皮膚の変化が消え、胸の写真も良くなったような場合でも、ずっと経過を観察していると再び悪化する場合もあります。皮膚に全く変化が無かった方でも、5年10年たってから皮膚に発疹が出る場合があります。そのような場合には、ACEの値が非常に参考になります。

 サ症という病気には自然の流れみたいなものがありまして、まず、肺門リンパ節が腫れて、肺門リンパ節の腫れが若干減ったかと思うと、肺野に陰が出でくる。肺野の陰がだけになると5年から10年かかりますが、それが自然に消えていく。早い場合でしたら1・2年で、肺門リンパ節から肺門リンパ節プラス肺野の陰になり、1・2年で消えていく。こういう流れがあります。ですから、肺野に陰がなかったのに、途中で陰が出来たといわれても心配することはありません。それをじっと辛抱して様子をみていると自然に良くなっていく場合があります。目や皮膚、筋肉、心臓などの場合も同様です。

 次にサ症の原因についてですが、これは、世界中の学者が研究し、私も大阪大学の基礎の研究所で調べてもらっていますが、現在も原因は不明です。

 いろんなばい菌が疑われたのですが、肺門リンパ節が腫れるということは、我々の呼吸器は、鼻から喉・気管・気管支、そして枝分かれして肺へと空気が入っていくので、何か外部からばい菌が入ってくるのではないかと考えたわけです。それが結核菌だと考えた学者もいましたが、日本人の8割は、ツベルクリン反応が陽性ですので、ほとんどの人は体の中に結核菌を持っていますので、今新たに結核菌が見つけるのは難しいのです。ばい菌の場合もリンパ節が腫れた場合に、組織検査をしていますが、まだこれといった決め手になるものは見つかっていません。ウイルス説もありますが、これもまだ分かりません。

 ただ合併症として、帯状発疹と言いまして、例えば肋骨と肋骨の間に発疹がぽつぽつと出来て、肋間神経痛のように非常に痛むのですが、これはビールスが原因です。しかしこれは合併症ですので、サ症が直接起こすものではありませんので、やはり原因は不明と言わざるを得ません。

 家族発生ですが、大阪・京都十数家族にみられます。しかし偶然ということも考えられます。もしも遺伝的な病気でしたらもっと多く半数ぐらいの方に家族発生がみられてよいはずです。夫婦間発生は1、2例ありますが、これも偶然かも知れません。

 次に治療についてお話しします。昔は、胸の写真に異常がある場合にも副腎皮質ホルモン(ステロイド)のお薬を服んでもらっていましたが、最近は方針が変わり、全ての患者さんに薬を服んでもらうことはしていません。胸の写真で肺野が真っ白になり、多少息切れや階段の昇降時に空咳があるというような有症状の方に薬を服んでもらっています。肺が腫れているだけでは薬は服んでもらっていません。目の場合は、前眼部の変化である葡萄膜炎の場合は、点眼薬を使用してもらいます。網膜にまで病変が及んでいる場合は、ホルモン剤を服んでもらいます。点眼ですと網膜までは届きにくいらしいです。薬を服むと、胃を通り、腸で吸収されて血液中に入り全身をめぐってその一部が網膜にまてせ達するのです。皮膚の場合は、ホルモンの軟膏を使用してもらいます。昔は軟膏しかなかったのですが、今は場所によって顔などの場合はローションとかクリームを使用してもらっています。心臓の場合は、はっきりと症状がある場合は、ホルモン剤を服んでもらいます。薬以外でしたらペースメーカーがあります。これは、心臓の専門医が決めるのですが、V度の房室ブロックになり、めまい発作が起きるようになるとペースメーカーを入れます。私が調べた範囲では、全国で42人の方がペースメーカーを入れて元気に暮らしておられます。そのほとんどの方はホルモン剤を服んでおられます。脳・脊髄の場合でずが、心臓の場合と同様に、一生、服むつもりでホルモン剤を服んでもらった方が良いと思います。腎臓の機能が低下した場合は、透析を受けます。お腹の中のリンパ節が腫れて黄疸が出て、肝臓ガンや膵臓ガンを疑われた場合は、手術しなければなりません。胃腸の場合も手術を受ける場合もあります。

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