Last One Mileへの足掻き:
オーディオというものはさても奥が深く、人間の煩悩を象徴するような世界であると思うことが多い。満足と不満足の世界を行ったり来たりで、繰り返し繰り返し心が揺れ動くことに果てが無い、、、
おそらくは、であるが現状の音はそれなりに纏まった状態にはなってきていて、お気に入りの交響曲を聴いていれば旋律やリズムの律動に合わせて思わず身体が動きだすほどには音の伽藍に酔い痴れることができる。女性ボーカルも声の機微やリバーブの消え入るような余韻もある種納得の域には至ったかのように思える。だが、これで「ほぼ理想には近づいた」として現状に満足するということができないところがオーディオファイルの悲惨?とも云うべき性なんだろう。
現時点の音はそこそこになったのかも、と理性としては納得しているつもりでも、あと僅か一ミリであろうとも向上させたいと密かに願ってしまうのだ。つまりは際限の無い(=終わることの無い)音質向上策をあ~でもない、こうでもないと思わず知らず模索してしまうこととなる。
ストリーミングを実践するためのネットワーク環境としても、自分なりに工夫し吟味してそれなりの構成には至っていると思うのだが、まだこのネットワーク界隈にはやることが残っているのではないか、そういう想いにも駆られてしまう。当方のネットワークストリーマはAuralic Aries S1という国内ユーザーはほとんど居ないと思われるもの。ストリーミングプロセッサーと呼ぶに相応しい機能を持っているのだが、大変残念なことにSFPポートがない。このため、LINKUPのLANケーブル(CAT8、Solid Cable)を現状使って、終端のスイッチングハブ(LHY Audio SW6)と接続している。このAries S1もそうなのだが、一般的にはネットワークストリーマ側には回線の設定(速度やDuplex)を制御する仕組みを持っていないのでそのままでは基本1G/Full Duplex(全二重)の動作となる。また、終端ハブは所謂「馬鹿ハブ」なのでハブ側で制御することもできない。マネージドスイッチングハブであれば、ハブ側の設定で速度(1G、100M、10M)とFull Duplex/Half Duplex(半二重)を制御することが可能となる。
ネットワーク構成図を睨みながら、現状レベルで何かを弄ったり、接続構成を変えたりして、向上施策として試してみることできるものは何かあろうか、と思案した。できることはさして多くは無いのだが、世の趨勢としては100M速度がベターというのは一般論としてあると思うし、1G/100Mの仕組みの違いからもなるほどと思える点もある。この辺りを踏まえて、ネットワークストリーマへの「Last One Mile」の結線としてどのように構成し、どの速度を適用するのが最善か、それによる効果の差なども再度検証してみようかと。
一応こんなものか、と辿り着いたネットワーク構成:
ここに記載はしていないが当方のPCオーディオ環境(Symphonic MPD II AoE)という構成では、フロントエンドからバックエンド(Raspi4)を100M/Half Duplex(半二重)で接続しており、厳密な差を明確に認識した上での採用とは云えないが、まぁまぁ良いだろうと思ってきた。このAoE(Audio over Ethernet)という考え方はDirettaとほぼ同様の仕組みものでありその音への恩恵は結構ある。フロントエンドはArch Linux(x86機)とRaspiOS(Compute Module 5)の二系統あるのだが、いずれもLinuxベースのシステムなので、回線速度を含む制御はethtoolというコマンド簡単にできる。また、マネージドスイッチの場合はWEB UIを使って、ポート単位に回線速度とDuplexの設定もできる。
このようなネットワーク設定の自由度を「馬鹿ハブとネットワークストリーマを組み合わせた構成」に求めること自体が要求しすぎだとは思うのだが、やはり思い立つとやってみたくなるのは人情なのであろう。現状の構成におけるLAN速度の100M化や全二重/半二重への対応は以下のようなものが案として考えられる。
1.100M対応の馬鹿ハブを間に入れる。
2.100M設定が出来る機器(例えばTOP WINGのOPT ISO BOX)を間に入れる。
3.100M速度用のEMCフィルター(たとえばDMJ100BT)を入れる。
4.LANケーブルを8線から4線に変更する。
5.終端ハブをマネージドスイッチに変更する。
1.については、100M対応のハブは手持ちにあるのだが、今更これを挿入する気にはやはりなり難い。2.はアイデアとしてはあり(この方法の実現のために購入する気にはなれないが)。3.は手っ取り早くこの方法を採用して比較してきた経緯もある。4.は一番シンプルとも云える対応でケーブルの加工をしなければならないという手間はあるが既存の終端ハブにおけるisolated Portをそのまま使える(isolated Portは3の方法と併用してはならない)。5.は既存のFS.comのマネージドハブを使う方法と、新たなハブを導入する方法と二案がある。
1.から4.の方法では100M速度には落とせるが、Half Duplexに設定する方策は無い。5.であればハブにて設定すれば可能となる。先に
LHY Audio AS8 PRO+
という新登場のスイッチングハブに多大な物欲を感じていたのだが、惜しまれることにこのハブはやはり馬鹿ハブなので何も制御することができないため、物欲に煽られての衝動買いを何とか抑えてきた経緯がある。さて、ここに
TOPWING OPT REF SWITCH
の登場である。現時点ではこれはマネージドハブという触れ込みではあるが、Half Duplexの設定が可能なのかどうかは判明していない(ネットワークチップに対する基本的な制御なので本来は可能と思うので改めて確認したい)。
100M速度のみで良いのか、Half Duplexに拘るのか多少の思案のしどころではあるのだが、現状テストできるのは、FS.com製の中継ハブにAries S1を接続して、このハブにて設定を変えて比較試聴してみること。FS.comのハブは全くの業務用?であって、オーディオ的な配慮はなされていないと思う(金属筐体、スイッチング電源内蔵)。かって、LHY Audioを導入した時点でのアドバンテージを想い起こせば、ここで比較する意義は薄い面もあるのだが、環境が整わないのでやむを得ずやってみた。
マネージドスイッチのWEB UIによって各ポートのLAN速度と全二重/半二重の設定が可能:
さて、1G Full/Half Duplex、100M Full/Half Duplexと設定を変更しながら比較してみる。むむむ、、、予想に反してほとんど有意な差を認識できない。これは困った、、、年齢による聴力の衰えなのか、そもそも元から大して差など無いのか。あるいは、オーディオ的な対応がなされていないスイッチングハブ(上流、中継ハブとも)を使っているせいなのか。もうひとつの課題は、速度を下げればiPADからの操作レスポンスが落ちること。これは速度ダウンの結果として予想されたことではあるが、ちょっと気になる。
(注記)Symphonic MPD II AoEのケースではフロントエンドは1Gのまま、フロントとバックエンドの接続のみ100M Half Duplexという扱いなのでこの操作レスポンスに係わるインパクトは発生しない。
終端ハブのLHY Audio SW6に戻してisolated Portに接続してみれば、1G速度のままでも僅かな意義は感じられる(様な気もする)が極めて微細でもある。突き詰めれば、速度の選択よりもスイッチングハブ自体の構成(ノイズ対策や電源など)が影響力としては大きいとも推測できるか。であれば、終端ハブをTOPWING OPT REF SWITCHのような「オーディオ的な対策+マネージドハブ」へと変更する方策は現実路線としても大いに浮上してくる。一方で、LHY Audio SW6はかなりお気に入りのハブでもあるので、ここは悩みどころでもあろうか。
LHY Audio SW-6 SFP:(裏側、左からSFPポート、Isolated Port)
この他に実験できることとして、上流ハブ~中継ハブ、中継ハブ~終端ハブの速度(いずれも光ファイバー接続である)を100M Full Duplex(ハブ間のトランクラインの場合はHalf Duplexの設定はできない)とすることも行ってみた。ここは全く差を検知できない、と断言しても良いと思えるレベルなので単純にこれは除外。
速度の設定よりもハブ自体の構成、仕様の支配力が大きいんだとしても、その両方を実現できるのだとすれば導入に向けての選択肢にはなり得るだろう。だがここで、さらに実験しなければいけないのは、LANケーブルの4線化によって100Mへの速度ダウンをしたケースとの比較。これが、まぁまぁ効果的とすれば、Half Duplexに必要以上に拘る事も無い訳だ。そのためには現状と同じLINKUPのケーブルを購入して、4線化する細工を施し、二本のケーブルを差し替えての比較をしなければならない。
この実験を経た上で、終端ハブをマネージドスイッチにすべきなのかの決着をつけることとしよう。また、TOPWINGの機器は自宅試聴が出来そうなので、それを依頼するという手はずもまずは行っておかねばならないだろう、、、
(参考1)LINKUP CAT8 Solid Cable(黄色):(フィールドターミネーションプラグのためコネクタの開閉ができ4線化は容易)
(参考2)EMCフィルターによる100M速度への対応:(DMJ100BTにはアルミテープをグル巻き)
|