オーディオ日記 第60章 音楽に抱かれて眠りたい(その8)2025年11月12日


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Focalの系譜:(Focal Utopia Main 112の研究)

このところ日々音楽三昧なのだが、 Focal Utopia Main 112 というラージモニターSPが何となく、という以上に気になって仕方ない。この機種は完全にプロのスタジオ用であり、それも所謂ラージモニターという範疇なのである程度以上の規模と広さを持つスタジオにて導入するもの。従って、一般のオーディオファイルが自宅のリスニングルームに導入することはほとんど想定されていないとも思う。それでも、このスピーカーを(狭い我が家であっても)導入して見たい、と思わせる何かがあるのだ。未だ音は聴く機会はないが、是非とも聴いてみたいと強く思っている。

Focal UTOPIA Main 112/121:(シングルウーファ仕様が112、ダブルウーファーが212という型番)

Focal Utopia Main 112/121

技術的な観点でトピックを拾えば、3wayマルチアンプ構成のスピーカーシステムであり、筐体外の外部の専用アンプで駆動する。高域、中域の両ユニットは「電流増幅」によって駆動される。各スピーカーユニットは本機にあわせて低歪と高音圧を目指して新たに開発されたもの。専用アンプの内部にはアナログ回路(DSPではない!)のイコライザ回路を持ち任意に補正ができる。ラージモニターと云ってもダブルウーファー構成の212に比せば、シングルウーファの112はリーズナブルなサイズ、重量なので、規模的に導入不可というほどではない。

このモニタースピーカーが専用アンプとの組み合わせでペアーで29,999ドル(国内では約500万円程度とのこと)。これは高いのか、安いのか、まぁ惚れ込んだら価格ではないのかもしれないが、チャンデバとイコライザ機能を有する2台のパワーアンプ付きなので追加コストが無いと考えるとかなりリーズナブル。


FocalがまだJM Labという名前であった時にUtopiaというネーミングのスピーカーシステムを初めて世に送り出し、これが同社の出世作となったのだが、そのヒットを受けて少しコンパクトにした Vega というやはり3wayのスピーカーシステムが登場した。正確には覚えていないが1990年頃(オーディオの足跡によれば1992年)だったと思う。当時のオーディオショーでデモを聴きかなり気に入って(その時点では高くて買えなかったが)後日セカンドハンド品を手に入れることができた。サブスピーカーとして愛用していたが、転居に伴う断捨離のために手放すこととなってしまった。

旧宅でのJM Lab Vega:(音のみならずそのスタイリングにも惚れていた)
Hsitory of My System

その後の同社の発展、飛躍には目を見張るものがあり、Focalという社名になった以後、一般向けのスピーカーのみならずカーオーディオ用、更にはプロ用スピーカーに於いても揺るぎない地位を確立するに至っていることは周知。特にベリリウムツィータについては、日本勢がこの振動板素材から撤退してしまった時期に供給を開始し今では高い音質評価を得ていると思う。その後に海外メーカーや国内メーカーがベリリウム振動板について追随、あるいは再開するひとつの要因ともなった。現在では同様にベリリウム振動板を持つヘッドフォンも高級機として認知されている。

当方もベリリウム振動板の音に興味を持ちこれを評価をしてきた結果、ベリリウム三兄弟などという酔狂なスピーカーシステムを構築するに至っているが、Focalの存在がその背景にあって自らの原動力ともなっているものであると自覚している。現在はFocal製品はコンパクトなSolo 6 BEという2wayモニターをPC作業部屋に導入しているのだが、その音のみならずデザイン、ルックスもかってのVega同様に満足していると云って良いだろう。

総じて、Focalのスピーカーは物理特性よりも音楽性という観点から評価されていることが多いようにも思えるが、プロ用モニターSPを導入している音楽クリエーター達の評価も概ね無味乾燥のモニターSPではなく音楽を聴くのが楽しいという点を挙げている。その系譜の延長に今回のUTOPIA Main 112があって、更に徹底的に低歪に拘った機種とすれば、、、と想像力を掻き立てられる。素人が四苦八苦して構成した4wayスピーカ―など遥かに凌駕するパワーレスポンスや精緻な音楽表現がここにはあるかもしれない、と期待してしまうことになる。

その想像力というか、妄想が膨らんで、じゃ今のSolo 6 BEにウーファーを足してみたら? 何となくではあるが、UTOPIA Main 112を髣髴させるような音になるかも、、、と思えてきた。従来、メインの4wayのバランス確認用とすることはあってもこのような使い方はしていなかったので、トライしてみようと考えた。ただ、PC作業部屋でのスピーカースタンドは70㎝高なので、リスニングルームにて真面目に聴くためには少々高すぎる。そこで、60㎝高のTAOCの中古スタンドを急遽仕入れて環境を整えた。

Main 112に対抗できるか:(ニアーフィールドの良さが出る?)
Focal Solo 6 BE

ウーファーとして使用するのはSONY SUP-L11であるので不足は無いはず。もちろん設置位置などの調整が必要となるのだが、そこはデジチャンの出番。簡単にタイムアライメントなどは制御できるしクロスオーバー周波数もトライアンドエラーで調整できる。低域用はマルチチャネルアッテネータからの出力をアンプへ、といういつもと同じスタイルであるが、Solo 6にはマルチチャネルアッテネータからのバランス出力を直接入れるという変則的な接続となる。

ざっと音量がバランスを取れるようにして(低域チャネルに対して-6dBのGAIN調整でOKだった)、クロスオーバー周波数を140Hz(-24dB/OCT)で聴き始める。ひよえ~、悪くない! リスニングポジションからの距離が近くなるのでニアーフィールド的な鮮度感や抜けの良さがアドバンテージにもなっている。

2wayのSolo 6は低域が16.5cmなので、100Hz以下ではユニットレスポンスはどうしても落ちるし、バスレフポートのチューニングが50Hz付近なので、まぁまぁ低域の量感は出せるけれどそのままではどうしても緩く感じられるところもあって、低域の質感もベストにはならない、というもどかしさはあった。その辺りの不足感が一気に解消される。これはお遊びとして何とも楽しい。

もちろん音楽クリエーター達が最高の音楽を創り上げるために使用している究極的なラージモニターの音に今回のお遊びレベルのものが匹敵するとはとても思えない。だが、このUTOPIA Main 112を導入したとすれば、彼らが現場で聴いているはずの音と同等のものを享受できることになる、という構図も見えてくる。逆に云えば、それ以上の音は本来「無いはず?」とも思えて、今の自分は理想という名の下に幻影を追っているにすぎないのではないか、と自問してしまうのだ。




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