オーディオ日記 第59章 ただ音楽のために(その10)2025年5月20日


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デジタル接続の経路に悩む(その2):

Auralic Aries S1のデジタル出力をどのような経路にてデジチャンへインプットするのが良いのか、という試行の続きである。いくつかの接続スタイルを試してみて、Aries S1からのAES/EBU出力が何となくベターかな、というところには行き着いていたのだが、ここで達人よりアドバイスをいただいた。

「インピーダンスの整合性を取れ」である。確かに、、、前回までの実験ではここを無視しているので片手落ち。AES/EBUは110Ω、S/PDIFは75Ωのケーブルインピーダンスが規格である。変換ケーブル、あるいは変換プラグを使用しただけではこの対応はできないが、厳密さを追求するならばデジタル信号も高周波の範囲であるのでこのインピーダンス整合は必須である。

アドバイスとともにAES/EBUとS/PDIFのインピーダンス整合器(CANARE製)を貸していただいたので、取り急ぎインピーダンスマッチングのチェックと出音の確認を行う。

むむむっ、、、今までの試行を恥じるような結果である。セオリーに従うことの重要性を再認識することとなったのだが、この素直で(特に高域の)伸びの良い出音であれば、MUTEC MC-3+USB(+マスタークロック)を敢えて経由させる必然性は無い、と思えてくる。

だが、AES/EBUとS/PDIFによる出音の差異について自分の中で論理的に決着がついている訳ではない。インピーダンス整合を取ることによって、前回この要因かも?と推察していた信号電圧振幅は20%程低下するとCANAREの カタログスペック には明記されているし、このテストでは少し余分なXLRコネクタやBNC/RCA変換プラグなどが介在しているので、追加のロスはあると思われる。

この辺り更に突き詰めて確認したいために考えてみたこと、
1.Aries S1のAES/EBU出力端子に直接インピーダンス整合器を取り付ける(XLR端子メスが必要)。
2.インピーダンス整合器から75ΩのBNC/RCAケーブルで接続する(変換プラグを排除)。

お借りしたインピーダンス整合器はXLR端子がオスであるため、若干余分なところがあるので、急遽上記の端子に該当するもの(CANARE BCJ-XJ-TRC)を注文してみた。これであれば、ケーブルは手持ちの OYAIDE DB-510 (BNC/RCA端子の特注品、70cm)が使えることになる。

(中)黄色の整合器は借用のもの (外)手配した赤の整合器とケーブル:(端子のオスメスで型番、色が異なる)
AES/EBU to SPDIF

気分的な安心感という意味もあるので、こちらの構成にて改めて試聴を続ける。やはり不可思議と思ってしまう面は否めないところもあるが、ここでの出音であればAries S1からデジチャンへの直結においてビハインド感のようなものは最早一切無く、従って今後はこのシンプルな構成で運用することが出来るだろうな~とここはもうほぼ確信に至る。

音の評価ポイントとしては、
1.音楽としての雰囲気、まとまり(メリハリ感は不要)
2.低域の自然さと厚みがあり、かつタイトであること
3.高域の素直さやしっとり感(鮮度感の押し売りやあざとさは望ましくない)

当初プランとして想定していた断捨離に繋がることを思えば、ちょっと足掻いてみて良かったとも思うし、アドバイスをいただけたことも大変ありがたいことであった。ただし、ここでの評価はAES/EBUとS/PDIFという規格やインピーダンス整合という観点だけに留まらず、機器間の固有のもの(相性?)である可能性は残る。その意味では、MUTECからのAES/EBU出力を今回の仕掛けを使って再度厳密に試さねばならない(が、せっかくここまで来たのでちょっと怖い気もする)。

ふと思うこと。Accuphase製品の多くはバランス入出力を備えており、DP-90という古典的なCDトランスポートもAES/EBU出力を持つ。かって所有していたDC-91(DAC)にもAES/EBU入力はあった。だが、DF-75には「無い」。おそらく、使用されるケースも少ない(ニーズも?)と思うし、コストカットにはなるのだろう。だが、、、デジチャン(DF-75)にAES/EBU入力があれば、とどうしても思ってしまう。

改めて考えてみれば、プロ用機器では当たり前のようにAES/EBUの入出力を持っているし、光、BNCによるS/PDIFも持っている。何故「民生器」と呼ばれる機器は同軸RCAによるS/PDIFが主流なのか、、、改めて疑問がふつふつと沸いても来る。まぁ、基本はパーツのコストなんだろうと推測するが、今時このようなことを敢えて考える輩もいないか。

なお、このような結果を踏まえれば、マスタークロックのアップグレードやMUTECの更新に今後掛ける費用は、むしろAuralicの上級機に移行するために使った方が良いんだろうな、と思えてくる。ただ、海外から個人調達するには支払いプロセスなどのハードルがある価格なので、代理店があれば、、、と切に願ってしまう。