オーディオ日記 第57章 道の向こうへ(その11)2024年 4月16日


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集大成の音:

少し長めの旅に出かける際はマスタークロックの電源を落としていくのだが、帰ってきた後の自分のオーディオの音には今ひとつ納得できないことが多かった。マスタークロックの通電状態による安定度の問題なのかな~とも思っていたのだが、しばらく聴いていて耳が慣れてくれば何となくこんなものか、と達観してしまうのであまり深くは考えていなかった。

桜三昧の旅、天気にも恵まれた
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今回、旅から帰ってきた晩に電源を入れ、翌日になって聴いてみると過去に感じていたような違和感、居心地の悪さが少なく、すんなりと音楽に浸れる。この理由は何かな~としばらく考えていたのだが、もしかしたら「音の自然さ」にあるのかも、との思いに至った。

オーディオの音はどうしても自然の音とは異なるところがある、というのが従来より自分の感じているイメージなのだが、その違いがどのようにして生じているものなのか、明確に理解や把握ができている訳ではない。それでも自然界にある音とはやはり同一ではなく、「再生音」である、ということを否応無く認識してしまう。

それを「オーディオの音」として頭である程度理解の上で、割り切って聴けば、それなりには音楽っぽくはなるのだが、自分の感覚では「オーディオの音=自然音」という等式を無意識にしても成り立たせなければならない。そこにはやはりオーディオの音に対する何らかの慣れが必要なようにも考えてきた(オーディオ耳に調教してしまう、ということなのかも?)。

今般、この点が少し改善されたかのように感じるのは、全くの独断と推測であるが「遮断特性」の見直しによるものが大きいんじゃないか、と考えてみている。過去にはずっと-24dB/OCTの遮断特性を使ってきた。この設定であれば4way構成における各ユニットの干渉を小さくして、それぞれのユニットの美味しいところを引き出せるのでは、との理由による。もちろん明確な根拠がこれにある訳ではない。

だが、少し前に達人のアドバイスを受けてこの遮断特性を-12dB/OCTの設定に変更してみて、自分的には以前より素直な音に感じられるようになった。その後、さらに高域ユニットについて-6dB/OCTの設定にチャレンジしてみてより好ましさを確認し、いろいろと試行錯誤してみた。高域のふわっとした広がりや透明感にアドバンテージがあるようにも感じられるのだが、中高域ユニットとの繋ぎ方に注意が必要で、一般的な設定ではともすれば透明感が落ちるというジレンマもあった。

そこで最終的にはリスニングポイントに於いて反射波を含めた周波数レスポンスがフラットに近づくような設定を模索し、中高域、高域をともに-6dB/OCTにてクロスさせるスタイルに落ち着いた。設定自体はちょっと変則的なようにも思えるかもしれないが、高域は6300Hz、中高域は2800Hzというクロスオーバー周波数である。この設定で非常にきれいなインパルスレスポンスと平坦な周波数が我が家のリスポジでは得られる。

自然界の音は「距離に対して-6dB/OCTにて減衰する」と、かって何処かで読んだか、聞いたことがあるのだが出典を確認できてはいない。けれど、この一次の遮断特性を使用した音は(自分にとっては、という前提付きなのだが)比すれば自然に感じるのだ。何らかの因果関係があるのかもしれないので、ここは少し情報を漁って研究してみたいポイント。

当然ながら高域、中高域のユニットのオーバーラップは大きくなるので、クロスオーバー周波数とタイムアライメント調整は必須なのだが、実は案外とこの調整が分かり易くそんなに悩まずに納得レベルのインパルスレスポンスも得られる。当方のデジチャンはIIRなので、-24dB/OCTの遮断特性を使用した場合はあまりきれいなインパルスレスポンスの波形にはならない。この辺りはかってかなりトライしたのだがFIRのようにはどうしてもうまくいかなかった経験がある。

もちろん、IIRでもFIRでも機能的に見ればそれほど音の差は生じない、とも思うのだが、デジチャンにおける演算処理の性能や精度とも関連して、高次の遮断特性になるほど「音の自然さは失われるのでないだろうか」というこれは自分なりの仮説である。

遮断特性の話からはいったん離れるのだが、ベリ三兄弟のうち比較的新しく導入した中高域、中低域のふたつのユニットもエージングが進んでやっと練れた音になってきた、ということも副次的な効果として影響しているかもしれない。中高域のユニット(Bliesma M74B)に関しては当初はアルミ振動板のSONY SUP-T11にあるようなある種の音の甘さが感じられなかったのだが、ここが少しづつ変化してきたのかもしれないと考えている。密度感高く、高解像度でありながら音色が優しくなってきたと云えば、少々云い過ぎなのかもしれないが、、、

同じような設定で、中高域にSONY SUP-T11、中低域にFPSという構成も試してみた。ユニットが違えば音の性格も少々変わるのだが、-6dB/OCT設定による音への何らかのアドバンテージはこの構成でも感じられる。こちらの方はFPSの振動板面積の大きさから、ふくよかさや厚みという点も加わってくるのだがベリ三兄弟の方がサウンドステージの広がりという点では優っているかなと思える(指向性の違いかもしれない)。

背景や弱音の表現、見通しの良さと透明感、空気感を伴う音がこのような一次の遮断特性でもってベリ三兄弟から聴ける、ということは俄かには自分でも信じがたいことでもあるのだが、冒頭に述べたように自然さに対する違和感が少ないことを再確認している次第。この感覚が間違っていないことを現状は祈るしかないのだが、自分的にはここでの音が今の機器構成における集大成となった感も出てきた。

ベリリウムユニット三兄弟、Bliesma M74Bの存在感は案外と大きい
Qrino BEW-16 Bliesma M74B

オーケストラが多少良く鳴るようになると更に、更にと求めたくなるのだが、音源と部屋という前提がベースでもあるし、迫真のスケール感は控えめな音量では出難い、ということもあるので、際限なき高望みは禁物なんだろうとも思う。けれど、空間に散りばめられた各楽器の音が明確にその位置を示し、それでいて包み込むように、尚且つ優しい音色を奏でてくれる、、、

これをもって我が家の音が少しは成長したと云えるだろうか。


                 Blisma M74B用4way構成の設定値(2024年4月16日)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- SONY
SUP-L11
(Experimental)
BeW-16
Bliesma
M74B
Scan Speak
D2908
-
能率
能率(90dB基準相対差)
dB 97.0 (+7.0) 87.5 (-2.5) 97.0 (+7.0) 92.0 (+2.0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +1.0 +1.2 +0.7 +3.7
マスターボリューム
アッテネーション
dB -9.0 -2.0 -3.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 89.0 86.7 82.7 83.7
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz
315
315

800
800

2800
6300

High Pass

Low Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-12 12-12 12-6 6-flat
DF-65 DELAY
設定
cm -19.0 +22.0 +20.0 +19.5 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Rev Norm Norm  
DF-65 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-65デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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