オーディオ日記 第53章 超えてきた壁越えられぬ壁(その13)2022年4月4日


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0.5dBの戦い:

一番頻繁に使用しているプレイリストは「Mozart ALL」である。我が家にあるほぼすべてのモーツアルトの楽曲で構成されているプレイリストで、トラック数は5,000以上ある。これをランダム再生でBGM的に聴くことも多い。夜小音量でこのような聴き方をしていると余りの心地良さにほぼ確実に寝落ちしてしまう。それは当方にとって追い求めてきたひとつの桃源郷でもある、、、

更にこの「Mozart All」というプレイリストにストリーミングでこれは案外良いな、と判断した楽曲がどんどん追加されていくことになる。最早トラック数など気にする対象でもないし、自分のライブラリ音源であるかストリーミングであるかを聴いていて区別することもあまり無い。

聴いても聴いてもモーツアルトの楽曲の素敵さは失われないし、作曲家としての稀有な天分にも想いが至る。だが、オーディオ的に考えればまだまだ理想には遠いのかも、と冷静になればなるほど改めて思い知らされることもある。度々述べてきたことであるが、これらの楽曲(特に自分のライブラリ音源)はすべてが凡庸とも云うべき録音であって極上と思えるものはそれほど多くない。

音源とオーディオシステムの相関関係にはいつも悩みが尽きないのであるが、ランダム再生では時にはやはり何とかしたくなってしまう音源も顔を出す。そしてうつらうつらとしていても、その瞬間に覚醒してしまう。そう、現実に引き戻されてしまうのだ。頭の中がその時、「オーディオモード」に切り替わる。ちょっと待て、これはここを、あそこをこう弄って、、、という心理状態になる。

なるべく汎用的な再生ができるような設定を心掛けて来ても、やはり未だ完璧じゃないという想いが心の底にいつもあって、それがこのような瞬間に前面に出てきて心の中で支配的になってしまう。一旦このモードに切り替わってしまうと、じっと聴いていることに我慢が出来なくなってしまって、あ~でもない、こ~でもない、と考えて果ては設定など微調整をしたくなる。

もう大分永く4wayマルチアンプシステムを続けてきているのだが、完全には「これで決まり!」という自分で納得できる設定に至ってはいないのだ。ほぼほぼ良いね、という状態にはなってきているものの、パーフェクト、究極では全然ない。だから、このようなちょっとしたきっかけでその想いが噴出してしまう。自分のマルチアンプシステムにおける設定の無限のパズルを未だ解けてはいない、と云ってもよいだろう。

ユニットの選択と構成、設置、位置決めというベーシックなところから、クロスオーバー周波数設定、タイムアライメント、位相、レベル調整、全体としての周波数レスポンスのバランス、、、そして質感、音楽表現と追い求めてきても、やはりまだどこかに至らないところがある。

測定とリスニングを含めて概ねの納得感が得られる状況になっても、音源によってこのいまひとつ感が顔を出す。この想いにとらわれる時、そこそこ納得した部分にも改めて手を入れたくなってしまうのだ。時には思い切って大きく設定変更をすることもあるのだが、これは不正解となる公算も高く、実際大きく弄るとそう簡単には音は纏まってくれないという厳しい現実もある。

一方で、微量な調整で「激変」などということは決してない。表現の良し悪しはともかくとして、オーディオにおいて激変するほど改善されるとすれば、それは多くの場合相対的にそれ以前の設定や環境が箸棒であるから、、、と当方は考えている(独断と偏見かも?)。音楽表現の微妙な差異を調整し、自分の好みに近づけていくという地道な行為の積み上げでしか、オーディオの熟成とはならないと思う。

駄録音の音源に拘泥し、それを何とかうまく鳴らそうそうする努力はもうとうに虚しいものと理解しているのだが、やはり設定、調整が完璧ではないという想いがあって、このような音源に接すると僅かであっても微調整が足りていない、という飢餓感を連れて来てしまう。そして設定を弄ることになる。気になる帯域の0.5dB程度のレベル調整も含めて。

4wayのスピーカーシステムの構成において、あるユニットの0.5dB(あるいはそれ以下)のレベル調整を本当にきちんと聴き分けているのか、という自分なりの疑問もあるのだが、、、それでもこのようなアプローチを繰り返すことによってしか、「設定」というものは熟成していかないものだと思う。この対応を続けることによって、結果としてそこそこ納得できる音源の範囲は徐々に拡大していく。

この辺りはオーディオシステムとしての「普遍性の獲得」なんだろうな、と考えている。つまりどんな音源であってもそれなりにきちんと再生できるというレベルへの到達。それが自分の目標のひとつでもある。だが、一方で二律背反の原則はここにもあって、この普遍性が高まるほどに、今まで(自分にとって)魅力的と思ってきた音源の煌きが僅かに薄れてもいく。

それは音源と自分のオーディオの「個性(欠点とも云う)」が相俟って、案外素晴らしいと思える再生をしてくれていたのかもしれない。この音源との相性みたいなものを引き摺っているシステムでは駄目なんだろうと頭では判っているのだが、このようなことが起こるとそれはそれで一抹の寂しさもあろうか。だが、普遍性が増して行けば今まであまり良い音源じゃないと思っていたものが、なるほどこのような録音だったのか、という新たな感銘も生まれてくる。

願いは居眠りをしながら聴くモーツアルトでオーディオモードに「覚醒」しないことである。ただただ揺蕩う音楽に身を任せていたい。もちろん、未だそこには到達できていないし、無限のパズルは解けていない、、、


                 4way MW16TX構成の設定値(2022年3月10日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
SB Acoustics
MW16TX
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
能率
能率(90dB基準相対差)
dB 97.0 (+7.0) 87.5 (-2.5) 110.0 (+20.0) 93.0 (+3.0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +1.0 +1.0 -9.0 +4.0
マスターボリューム
アッテネーション
dB -9.0 -2.0 -3.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 89.0 86.5 86.0 85.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz

140
140

560
560

3150
4000

High Pass

Low Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-18 48-48 48-24 24-flat
DF-55 DELAY
設定
cm -8.0 +19.5 -37.0 +25.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm  
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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