オーディオ日記 第49章 終わりの始まり(その21)2020年8月5日


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密林の極楽:音楽に溺れる

我が家にある音源はCDでも既に30年以上にわたり集めてきたものなので、それほど少ないものではないと思っている。アナログレコードは1割ほど(100枚強)を残して先日処分してしまったがこちらは半世紀にわたりという代物。量として考えれば、SSDに保存した僅か数テラバイトのものなのだが、自分にとってもかけがえのない財産だとも思ってきたし、長らく楽しんできた大切な音楽でもある。

だが、密林音楽の広大さを知れば知るほど、その僅かさを痛感する。感覚的には自分の持っている音源の50~60%以上はカバーされているようにも思う。割とメジャーなものは本当に豊富。少々ニッチなアーティスト、音源についてはやむを得ないと思うし、それはある種特殊な?自分の好みでもあるので、そのようなものはしっかりと自分で保持してれば良い訳だ。

ストリーミングによる新しい音楽との出会いは今更言うまでもなく、リスニングの極めて核心の部分である。これはこれでめちゃめちゃ楽しい。まだ本格的な利用を始めてからそれほど時間が経過していないのだが、既に多くの魅力的な楽曲、アーティストに出会えた。かってPCオーディオと云えるほどの環境になる以前にインターネットラジオを聴き流しながら新しい楽曲に触れられた経験を思い出す。この新鮮さと共に音楽自体も存外に心地良く聴ける。だが、時にふと思う。自分の持っている音源とストリーミングのものとどちらが良い音で、どちらを聴くことがベターと云えるのだろうか? 当然ながら、同じ曲なら「良い音」と思う方で聴けば良いのだから、、、

我が家のデジタル音源はごく少量のダウンロード購入したものを除き、ほとんどがCDをリッピングしたもの。アナログディスクからデジタル化したものもそこそこある。CDからのリッピングについては、一応音質的な面も考慮し、「uncompressed flac」としてはいるのだが、これはストリーミングされてきたものとの音の差異は実際どの程度なのだろうか、という疑問も当然出てくる。現実には、時にふと聴き慣れたものとは違うような違和感など感じることもあった。

自分でリッピングしたものは、CDドライブ、PCなどその時々の装置が異なっており、まだすべてが最良のリッピング環境とは云い切れない。特に初期の頃にはリッピング環境による音の差異をそれほど意識していなかったし、、、、

ストリーミングされている音源はどのように音楽会社、著作権者から提供されているのか、どのような編集・加工が行われているのか、など具体的なことは一切判らない。だが、かってアナログ音源として販売されたものが、16bit/44.1KHzのみならず、24bit/96KHzのデジタル音源(ロスレス圧縮ではあるが)でも提供されている。自分ではCDとしてしか持っていない音源であっても24bit/96KHzのデジタル音源として提供されているケースもある。

音楽会社がそのマスター音源(あるいはそれに近いもの)をCDという媒体に加工するステップを経ることなく、デジタルファイルとして「プロの機器と環境で製作」して提供しているだとすれば、自分でリッピングした音源など質的に敵うはずがない、、、そうではないだろうか、という予測自体は素朴なものかもしれないが。

ならば敢えてガチンコで比較してみたらどうなんだろうか、当然の帰結としてそう思うに至る。幸いにも冒頭に述べたように重複する音源は相当多いのでこれは問題なくできるだろう。

1.アナログディスクを自分でデジタル化したもの
2.CDをリッピングしたもの
3.ハイレゾ音源としてダウンロード購入したもの

大まかにはこの三つのカテゴリーで比較確認すれば良いだろうと考えた。予測としては、多分1は大敗、2は僅差で負けるかも、3は良い勝負、希望的には引き分け?狙い、、、などなど存外に高価なハイレゾダウンロード音源を購入したことをがっかりしない心積もり(予防線?)も大切。

ストリーミングが320Kbp位までの不可逆圧縮であれば、我が家の音源の優位性を疑うことなどなかったであろうとも思う。だが今や、ロスレスであり、ハイレゾであり、MQA対応(Amazon Music HDではこの対応はない)の時代である。実際にロスレス音源をストリーミングで再生させても聴感上の違和感は実のところそれほど無いのだ(つまり、大幅に不満である、などというようには感じていない)。

なお、今日時点ではAmazon Music HDを我が家の環境でハイレゾ無変換のままで聴くことはまだできない。(Air Play経由ではダウンコンバートが入ってしまうため。デスクトップPCをリスニング環境に移動して、USB DDC経由の再生なら出来なくは無いのだが、これは先の楽しみにしておこうと思う) したがって、今回は1、2のケースを中心に聴き込んでみた。1のアナログディスクを自分でデジタル化したものは、我が家のプアなアナログ環境(カートリッジ、アーム、ターンテーブル、フォノイコライザ)のインパクトをやはり受けているんだな~と実感する点がある。

自分の音源を先に聴けば、これはこれで悪くはないと思ってしまうのだが、やはり聴き較べると差があるのだ。「質感」が微妙に異なって聴こえるようなこともあり、これはヴィニールという媒体を経由していることやアナログ固有の再生ノイズの問題というよりも使用しているアナログ機器の性能と自分の使いこなしの限界による差なんだろうと思う。ストリーミングの方が安定感があり(逆に尖がったところはない)、ウェルバランスなのだ。カッティングというプロセスでの微妙な加工やRIAA変換、フォノイコでの復元の影響もあるのかもしれない。

2のCDリッピングしたものについてはそのような差異はほとんど感じらないのだが、逆に音圧の差が気になるものが案外とあった。傾向として、結構古い初期のCDは音圧レベルが低く抑えられているものがあり、この辺りが改善?されているのか、あるいは世にいう音圧競争の影響なのか、微妙に音圧が高めなのだ。デジタル録音のケースではそこまでの差異は感じられなかったが、元々がアナログ音源の場合、当然これは大元のマスターの差ではなく、デジタルファイル化する時の音圧設定の相違であろうと推測する。あるいはデジタル化の際にさらにコンプレッションをかけて音圧を上げているのかもしれないとも邪推する。

我が家のPCオーディオ環境も、それなりに工夫改善し、質的な向上を図ってきた。もちろんそこそこの効果もあったであろうと自分では高を括ってきた。だが、現状極めてシンプルな(かつ廉価)Air Play経由ラズパイからS/PDIF出力させる音であってもストリーミングはこのパフォーマンスである。ネットワーク経由でストリーミングされる過程において、大きな劣化が起こっているようには感じられない。当然、インターネットルータは特別にオーディオ用などと云うものは無い(ハブならある)し、我が家でも電源やらノイズ対策などルータには行っていないにも係わらず、である。

自分なりに努力し構築してきたデジタルトランスポートまわりの種々の環境に多少の自負はあるし、厳密に云えば自分の音源の再生の方が静けさや自然さでは勝っているように思える部分も皆無ではない。だが、音源の量と質を含めた総合点として考えれば、優劣は自ずと見えてきてしまう。

未来は白紙であって、単純な予想をすることは難しい。だが、この比較試聴してみた現実からこの先を推察すれば、自分の行動として最早高価なNASなど決して購入することはないだろうし、ハイレゾのダウンロード音源の購入もないと思う。もし多くの人がそう考えればオーディオビジネスの潮流も変化してしまう可能性だってある。自分自身としてはこれまで考えていたオーディオ的理想が変化しつつあることを少なからず意識している。

だが、物事には常に光と影ある。音源のほどんどをストリーミングに頼ることが本当に良いことなのかどうかは判然としない。手元の音源を不要と思うならストリーミングの「サ終」ということもビジネスとしては起こり得ることを意識しておかねばならないし、現状はそこそこリーズナブルと思えているるサブスク料金も一旦生殺与奪を握られてしまえば、結果として払い続けるしか術はなくなる。

多様な音楽を良い音で手軽に聴けることはオーディオとしても理想であるし、また極楽であることは間違いない。現実がそれに近づいてきてもいる。ならばこの極楽浄土での音楽三昧も本望と云えるのではないだろうか、、、

(追記)
ひとつだけ書き加えておかねばならぬことがある。デジタルトランスポート機能以降の構成(クッロク、デジチャン、アンプなど)や設定(特にスピーカ-の4way設定)がある程度は煮詰まってきたことの恩恵もこの「音楽を楽しむ」という観点からは欠かせないものと思う。今更ながら(苦節ん十年?)決して理想の実現とは云えないがここまで辿り着けたことをミューズの神に謝する次第である。


                 4way SUP-T11構成の設定備忘録(2020年6月17日更新)設定値
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
FPS
2030M3P1R
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+4) 90 (+0) 110 (+17) 93 (+0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +0.0 +1.2 -10.0* +4.0
*DF-65 Att ON
マスターボリューム
アッテネーション
dB -7.0 -6.0 -3.0 -5.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 90.0 85.2 85.0 80.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

224
180

800
800

3550
4000

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-24 24-24 24-24 24-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm 0.0 -30.0 +28.5 +32.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Rev Norm Norm  
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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